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もう一度妻をおとすレシピ 第5冊  作者: 奄美剣星(旧・狼皮のスイーツマン)
チャーチル・ノート
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チャーチル・ノート/025 ノルマンディー上陸作戦

 一九四四年六月。

 総司令官アメリカのアイゼンハワー将軍指揮下の、連合軍各部隊が、英国本土の南岸各地からフランス北海岸を続々と渡ろうとしていた。

 当日、英国宰相チャーチルは、同国陸将モントゴメリー麾下の上陸部隊を見舞った。

 チャーチルが葉巻を将軍に手渡した。

「上陸作戦をド・ゴールに教えたのが二日前? ルーズベルトは何を考えているんだ。イタリア戦線を膠着させたばかりではなく、フランス戦線までも膠着させる気か!」

「大統領には病があって、それが悪化してきた」

「それで宰相閣下は大統領にかけあったのですね?」

「もちろんだとも。……ド・ゴールの気性が激しいのは確かだが准将を排除なぞしてみろ、上陸しても、フランス国民の支持を受けず、連合軍は敵中に孤立することになる。大統領の個人的な好き嫌いで大局が左右されることなぞあってはならない」

 逆上したド・ゴールがアイゼンハワーの司令部に怒鳴り込んで、

「フランスでの戦いはフランスのものだ。自分に指揮権をよこせ」

 と主張したが、これは拒否された。

 アイゼンハワーは考えた。

 確かに、フランス軍を参加させなければ今後の作戦に支障をきたすだろうと。とはいえ、上陸用艦艇に乗り込む部隊はすでに決まっており、いまさらド・ゴール麾下のフランス部隊が乗り込むには限界があり、ド・ゴールの顔をたてる程度の少数部隊が乗り込むにとどまった。

 さて事の起りだ。

 英国のチャーチル、アメリカのルーズベルト、ソビエトのスターリンといった連合国三巨頭がそろったテヘラン会談で、ソビエトのスターリンが、

「東部だけでドイツを引き受けるのはきつい、ここはぜひとも英米両国は、西部戦線を構築し、東西からドイツ本国を挟撃するというのはいかがだろうか」

 という要請があった。

 これを受けたルーズベルトは、アイゼンハワー将軍に大軍を与えて、北アフリカ戦線を「トーチ作戦」で一気に消滅させた。これでイタリアはムッソリーニを失脚させ降伏するはずだった。……しかしそこでルーズベルトは、例の「枢軸国無条件降伏論」を振りかざし、降伏に傾いていたイタリアを動揺させもたつかせた。その間に、ドイツのヒトラーは、ムッソリーニを奪還して傀儡政権を樹立、ロンメル将軍に電撃作戦を行わせた。

別方面から、西部戦線を構築しなくてはならない。

――どこから斬りこむか?

 十世紀の昔、北フランスの海岸線にヴァイキングが上陸して公国を打ち立てた地がある。そこがノルマンディーだった。千年を隔てた第二次世界大戦での、連合国軍の巻き返しも、同地点での上陸がもっとも、効果的だった。

 連合軍側は、陽動作戦で、地中海側である南フランスにあるドイツ拠点やノルウェーを攻撃。たまにノルマンディーにも空爆した。犠牲者は、フランスの一般市民の死傷者のほうがドイツ兵士よりもはるかに多かったくらいだ。

 ノルマンジー上陸作戦。

 正式名をオーバー・ロード作戦といい、米国二十一個師団を主力として、英国・カナダ・自由ヨーロッパの二十六個師団の合計二百万人の上陸部隊。これらを支援する艦艇六千隻、航空機一万二千機が参加した。計画では初動の四十日間で、北フランス・ノルマンジー地方の海岸線にある町・カーン、ノルマンジー海岸の西側に突き出たコタンタン半島のシェルブール港を占領軍ドイツから奪還。その後、大西洋岸にあるフランス各都市を順次開放。以降三か月以内にパリを開放するというものだった。


 他方。

 北アフリカ戦線消滅後、ロンメル元帥は麾下B軍集団とともに、ギリシャ、イタリアの戦線を巡り、 西方総軍ルントシュテット元帥が管掌するフランス北海岸の防衛に回されていた。そこで、ロンメルは、ナチスが難攻不落「大西洋の壁」というところの防衛線を視察して、実は未完成であり、特にノルマンジー地方の海岸線は未着手も同然だということを知り工事を急がせていた。「連合軍が圧倒的な航空優勢のもとで攻撃を仕掛けてくる、それに対抗してわが軍の陸上部隊が、大規模な部隊展開によって迎撃することは不可能だ。唯一の処方箋は、上陸時に水際で迎撃する方法だけだ」と主張し、「連合軍を上陸させた後に装甲師団で叩く」戦術を主張するルントシュテットと対立した。

 そして六月は雨季だ。

 三日。ロンメルは、雨季でノルマンディーの空と海が荒れるため、敵が襲ってくる可能性はッ低いとして、妻の誕生日を祝うためベルリンで休暇をとっていたところを、六日の連合軍の奇襲的な上陸作戦を喰らうことになった。――この人はエルアラメイン同様に、肝心なところで、こういうポカをする。こうしてロンメル元帥の水際作戦も失敗した。その後、現地入りしたロンメルだが、趨勢を挽回できず、独断で麾下の軍団を後退させた。 いわんや上司のルントシュテット元帥の迎撃作戦は連合軍側の空爆で壊滅。ものの見事に失敗した。


 六日。

 作戦は落下傘部隊降下。

 空襲及び艦砲射撃。

 翌朝からの上陸用舟艇による敵前上陸。

 ノルマンディー地方の制圧にはドイツ側の抵抗により二か月を要した。

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