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もう一度妻をおとすレシピ 第5冊  作者: 奄美剣星(旧・狼皮のスイーツマン)
散文
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随筆/拳銃講習は年一度 ノート20141006

   拳銃講習は年一度

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 先日参加した「村」祭り。過疎地区なので、人ではいまいちというか、さっぱりだったのだが、アットホームな感じで内輪では盛り上がった。

 そこの氏子さんのなかで退職したばかりの元警察官だった方がおり、警察業務内容をきくことができた。

 各県警警察は、公安委員会・警察庁・各自治体警察の序列がある。

 各自治体警察は、千葉県警というような呼び方だが、東京は警視庁という呼び方になる。

 捜査手順は、被害届を受け付けるところから始まる。

 窓口は各所轄署あるいは県警で、総務課に一度「手口」が報告され、さらに上位の警察庁に送られる。警察庁でデータの統計をとり、容疑者を特定、県警に解析した結果を戻す。それで容疑者を絞り込んで、初めて捜査をすることになる。

 チームは事件の規模によって大小できる。

 大規模なものになれば数百人体制となる。そういう場合、ドラマ『踊る大捜査線』みたいに、県警本部からエリートが派遣され、その指揮のもとで捜査がおこなわれるとのことだ。

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 仕事にしている考古学業務について、学生のときに史学科学科長から、「推理小説を読め」といわれたことがある。

 探偵小説の場合、容疑者は四人前後用意し、冒頭に近い段階で真犯人を登場させる。囮容疑者にミスリードさせ、結末で意外な犯人という形で名探偵に暴かせる。……というのが定石であるから、実際にはこんなうまい具合に事件が解決するということはないはずだ。

 私は、公官庁に提出する『遺跡調査報告書』の「まとめ」につける小論文を書くとき、世界や日本全体の動向は偉い学者に任せておいて、ターゲットの遺跡からなるべく近い範囲にある地域での遺跡データを統計処理をする。

 たとえば縄文時代中期集落はドーナッツ型に住居跡を配置させている。中央広場には墓所、集落外縁にはゴミ捨て場、集落内部を縦断して、小川が流れていてそこが水場となっている場合がある。

 大規模な遺跡になると、集落全部が調査できるわけではなく、パワーショベルで細長い堀・トレンチを複数掘削して、そこだけを調査するなんてことも珍しくはない。

 そういう場合、全容が明らかな遺跡を提示しておいて、どこのエリアで石鏃が多く、どこのエリアだと打製石斧が多くでるかをまとめる。

 過去の調査事例をマークすると、石鏃は住居跡内部とその周辺で多くみつかり、打製石斧は「水場」周辺で多くみつかる。つくりかけや失敗したものもあるので、そういったところで作っているということだ。

 それでトレンチからみつかった石器の種類から、集落機能を割りだし、そこが集落のドーナッツ部分なのか、水場なのかを想定していったというわけだ。

 学校では教えてくれなかったのだが、統計処理をしてターゲットを絞り込むと、実に意外なものを発見することができる。

 そういう意味での警察がやる捜査の方法論と考古学発掘調査の方法論というのが相似関係にあると思った。

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 本題に入ろう。

 昨今、警察用拳銃が、国産のニュー・ナンブから米国製スミス・アンド・ウエストン(S&W)に変更された。もちろん国産のそれの時代だ。

「拳銃講習は一年でどのくらいやりますか?」

 と質問したところ。

 驚くことなかれ、

「年一度ですよ。『はい、リボルバーはこのように回転させ、安全装置はこのように外し、トリッガーはこのように引きます』という講義がなされます」

「えっ、一年一度で大丈夫なんですか」

「ええ、十分です」

 あとは各自が射撃場で練習しているということなのだろうか。酒席であったので、個人的な練習風景をお聞きすることを忘れた。しかし、練習なんぞろくにしなくとも、射撃はなんとかなるみたいな回答だった。

「昔、引退間近い警官に、お兄さん二人が絡んでもみあいとなり、拳銃を奪おうとしたところ、正当防衛で射殺された事件がありました。そんなに咄嗟に撃てるものなのですか?」

「ええ、簡単です。拳銃の柄を握るとゴムでできた安全装置があります。そいつをぐいと前に押してセフティー解除をするのです。あとはトリッガーを引くだけです」

 拳銃を手にした犯人を相手にするような凶悪事件では、銃撃戦にも対応できる強行突撃チームであるSATが出動するから、実際のところ一般警官がそれをつかうということはまずない。警告射撃のあとそれでも、という場合に射撃がなされる。パトロール中の警官を襲って、正当防衛により射殺されるというケースがほとんどだ。

 警察官は事情聴取が主で、「脚で稼げ」といわれたのだそうだ。

 捕獲のときは、先に述べたような統計解析と、各自治体をまたいで移動する犯人をデータ上で追跡し、ある段階で一斉に捜査員を網のように広く配置して行動に移す。

 さて、この元警察官の方が若かりしころ、コンビを組んだ方に自称「拳銃名人」という方がいらしたのだそうだ。

 拳銃リボルバーには六発の弾丸が装填できるのだが、安全のため一発は抜いて、常時五発撃てる状態にしておく。

 この相棒さんがいないとき、同僚たちは、彼にこういった。

「相棒さんは大の犬嫌いで、野良犬が近寄ってきて足元まできた。そのとき奴さん五発全弾をそいつにむけてぶっ放したんだが、一発も当たらなかったんだ」

     END


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