掌編小説/三十分私小説 ノート20141111
出勤時間まで二十分だ。この時間で修練としての作文をどうするか。この際、校正は無視する。ジャンルとすれば私小説としてみる。
いまいるとある地方都市での単身赴任での生活は自炊が多い。野菜を多く取りたかったわけだ。毎日、季節の野菜・きのこをふんだんに使って、味噌汁やらうどんやらを多くとった。京風卵焼きに鯖缶、それから煮豆なんかをとった。
――なんて健康的!
これだけ健康にいいことをすれば、多少のアルコールは平気だろう。
ウィスキー・ストレート、炭酸割毎晩。
ウィスキーにはスナックもあうぞ。
締めはプリンでなくてはならない。
ときとしてアイスクリーム。
……そして体重を五キロ増やす。
――やばい。
自炊して健康をやや損ねた私は、以前のように、カロリー表示がされた、ファースト・フード店にゆき、朝食セットを食べにゆくことにした。以前いっていたときは自家用車だったのだが、あえて自転車にした。
フリー契約している会社社宅のガレージに何年も前から放置されていたポンコツで持ち主不明。燕がふんだらけにして壊れていたのを自転車屋にだして、乗れるようにしておいた。
このガレージというのも、歴代住人たちが、掃除もしないでいるから、燕の糞は厚さ五センチくらい堆積していて、雪かき用のスコップを会社から借りてきて、清掃したときは、悪臭が漂って、咳き込んだのを憶えている。
プラスチック製金魚鉢には、日本ザリガニの死骸、枯れた植木鉢、工事用コーンがなぜここにある? そういうのをゴミ処理しておいた。
弾むスピード心も軽く。……もないけれど、朝、自転車道を走らせれば、街路樹は色づいて、はらはらと落ちてくる。
真新しい市役所支庁舎。
そして中学校だ。
会社の先輩というのは旧知で、昔いた会社のときの先輩でもあった。会社が潰れると、どっと、そこにスカウトされたのだ。私は他の会社にいたわけだが、親の健康の関係が合って、いつでも辞められる環境でいたいため、現在のスタイルをとっている。
その先輩がいう。
「××君は昼休みに散歩する。彼の散歩コースに中学校がある。そのうち不審者扱いされるぜ」
まだ朝早い。六時台後半というものだ。生徒どもがくることはあるまい。
しかし美少女かどうかは人の価値観というものだが、ともかく、年頃の娘さんが自転車で通学してきた。部活か。意表を突かれた。目が合わないように、フェンスに面した通りを横切って、例のファストフード店に入る。
朝早くだと、トラック運転手や職人さんたちが食べていることが多い。
椅子に座る。
すると、その場には不似合いな、背の高い正真正銘の美女がいた。冬仕様のスカート、フェルトジャケット、ブーツ。キンドルのような機器で小説を読んでいた。
食事を終えたとき店員さんが珈琲を持ってきたそのとき、彼女が振り返り、目が合った。
続きはウエブで。
出勤あと四分。
いってきまーす。
ノート20141111