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だから愛は嫌だ~虐げられた令嬢が訳あり英雄王子と偽装婚約して幸せになるまで~  作者: 来須みかん


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22 母と娘

(それって、ロバート様が、私に好意を抱いていたってこと?)


 しかし、愛し合っているカーラとグレッグが降らせる花びらは赤色だった。


(黒い花びらの意味は……?)


 ロバートが降らせた黒い花びらを見たとき、ディアナは「いい意味ではなさそう」と感じた。


 逆にライオネルが降らせたピンクやオレンジの花びらには、少しも嫌な気持ちにはならなかった。


(花びらの色によって意味が違うということかしら?)


 心配そうなカーラに「ディアナ様?」と声をかけられて、ディアナはハッと我に返る。


「ごめんなさい。考え事をしていたわ」

「もしかして、私の話でご不快になられたのでは?」


 そういうカーラの顔は青ざめている。


「違うの。その、花びらの、いえ、お部屋に飾る花の色をどうしようかと考えてしまって……」


 苦しい言い訳だったが、カーラは信じてくれたようだ。


「そういうことでしたら、ディアナ様のお母様にご相談するのはどうでしょうか?」

「そうね」


 どちらにしろ、ロバートとの婚約解消を母に話さないといけない。


(お母様に、ライオネル殿下との婚約を喜んでもらうのは難しいわよね。でも、私は殿下と契約婚約したことを、絶対に後悔しないわ)


 ライオネルのおかげで、ディアナは望み通りロバートと婚約解消できたのだ。今度は、ライオネルの望みを叶えるために、敗戦国の姫との婚約をなくさなければならない。


 ディアナが母の部屋を訪ねると、ちょうど事務担当者のメイが母を訪ねていた。


(最近は、お母様が中心になって、メイさんにも協力してもらいながら家を取り仕切っているのよね)


 これならば、母が『伯爵夫人の仕事をしていなかった』とは誰も言えないだろう。


 メイはディアナの姿に気がつき、母に会釈した。


「では、私はこれで失礼します」

「あとは、よろしくね」


 母はディアナに微笑みかけた。


「ちょうど休憩しようと思っていたの。ディアナ、一緒にお茶でもどう?」

「いただきます」


 ディアナがソファーに座ると、すぐに母の専属メイドがお茶を運んでくる。


 母はお茶の香りを楽しみながら「どうだった?」とディアナに尋ねた。


 小首をかしげるディアナに母は「ほら、ついさっきあの人が帰ってきたでしょう? 当主代理の件はうまくいったの?」と声をひそめる。


「もちろんです。お父様は内容も確認せず、当主代理の書類にサインをしていました。今頃、グレッグが書類を王宮に提出しているでしょう」


 フフッと母は冷たく笑った。


「そのことに気がついたときの、あの人の顔を見るのが今から楽しみだわ」


 母から出てきた灰色の蝶は『いい気味だわ』と囁いている。


(これでお母様の不安は、ひとまず取り除けたわ。次は……)


 ディアナは、深呼吸してから母を見つめた。


「お母様。実は、私はロバート様とうまくいっていませんでした」


 ロバートを素敵な人だと思っている母が、ディアナの話を信じてくれるかは分からない。それでも、ディアナはこれまでのロバートの言動を母に話した。


 母は口を差し挟まずに、静かにディアナの言葉に耳を傾けてくれている。そして、ディアナが話し終わった後、「はぁ」と大きなため息をついた。


(お母様を失望させてしまったわ……)


 うつむいたディアナに、母の苦笑が聞こえてくる。


「私ったら、本当に男を見る目がないのね」


 驚き、顔を上げたディアナの目に、予想外に母の優しい笑みが映った。


「大変だったのね、ディアナ。ロバート様にまんまと騙されていたわ。気がついてあげられなくてごめんなさい」


 悲痛な表情を浮かべる母の蝶は、『ごめんなさい』を繰り返している。


「謝らないでください。私はお母様が信じてくださっただけで、嬉しくて……」


 こらえきれず涙を浮かべると、母はディアナのそばにきて抱きしめてくれた。


「あなたを信じるのは当たり前でしょう? それよりも、こんな婚約今すぐ破棄よ!」


 ディアナのために怒ってくれるその気持ちが嬉しくて、ディアナは泣きながら微笑んだ。


「その件ですが、実は破棄することが難しかったので、とある方に助けていただいてロバート様と婚約解消することができました」

「それは良かったけど……。とある方って?」


 ディアナはたっぷりと間を置いたあとで、「……ライオネル殿下です」と呟く。


 母の目と口が大きく開いた。


「ライオネル殿下って、あの残虐王子の?」

「違います! その噂は偽りだったのです。殿下は、とても優しくて頼りになる素敵な方です。だから……」


 母に「好きなの?」と尋ねられて、ディアナの頬は赤く染まった。


「わ、分かりません。でも、信頼しています」


 正直に言うと、ライオネルに対する気持ちは、感謝が大きすぎてディアナ自身もよく分かっていない。


 母はフフッと笑った。


「信頼、ね。私もそういう理由で男性を選べば良かったのかしら?」

「そういえば、お母様はどうしてお父様と?」

「私の実家はお金がなくてね。両親からは『誰でもいいから、お金がある人と結婚してくれ』と言われていたの」


 母は昔を懐かしむような目で、どこか遠くを見ている。


「いろんな男性が私に愛を囁いてくれたけど、あの人が一番豪華な贈り物をしてくれたわ。それも、会う度にたくさん」


 美しい母を口説くために、当時の父は金に糸目をつけなかったのだろう。


「それをね、私は愛だと勘違いしてしまったの。こんなに素敵な贈り物をしてくれる人なら、きっと一生私を大切にしてくれるわって思ってしまった」


 目尻に滲んだ涙を、母は指で拭う。


「だから、ディアナは私と違う考えで安心したわ。ライオネル殿下が本当はどういう方なのかは分からないけど、ディアナの判断なら信じられるわ。でも、何か問題が起こったら、今度はすぐに相談してね?」

「はい」


 母の周りを飛んでいた蝶が金色に輝き『愛しているわ』と囁いた。そして、『あなたは幸せになって』と言葉を続ける。


「お母様……。愛しています。一緒に幸せになりましょう」


 ボロボロと涙を流すディアナを、母も「急にどうしたの?」と笑いながら涙を流した。


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