丘の上の少年
八月某日早朝、少年は家を飛び出し丘の上の公園にやってきた。夏特有のムンムンとした熱気が少年の肌を撫でる。寝起きの枯渇を潤すために、道中、缶コーラを買った。中身はすでに空になっている。
少年は核兵器に憧れていた。ありふれた日常も、張りぼてのような都市も、自分の生命さえも、全て打ち壊してくれるような核兵器に憧れていた。核兵器を求めて少年は公園にやってきた。
少年は見晴台へやってきた。見晴台からは街全体を見渡すことができる。街は朝霧に包まれ、ぼんやりとしている。丘の上の少年、丘の下の都市、どこまでも続く青と白のコントラストの下に両者は対峙していた。見晴台には大きな樹木が一本生えている。この丘を象徴づける樹木である。
少年は思った、この一面に広がる都市を破壊したい。ありふれた日常も自身の生命も絶やしてしまいたい。
少年は見晴台から空になった缶コーラを蹴り飛ばした。缶コーラは宙を舞い、回り続ける。
そして、缶コーラはみるみるうちにミサイルへ変貌した。ミサイルは街へと飛んでいき、地面に墜落し爆発した。波紋のように熱風が広がっていく。熱風は建造物も木々も灰に変貌させた。
少年は荒廃した都市を眺め、丘の上に立っていた。