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第1話 ファーストまなか

「寝みぃなぁ.....」

目覚ましの音。カラスの鳴き声。何回繰り返すんだろう。

私は勉強に追われる普通の中学生、佐々木愛香(ささきまなか)15歳。この私、佐々木愛香は同じことを繰り返すこの日常にとてもうんざりしている。だって変化や進化を求めるのが人間なのに、この3年間一度も進化を求めた感覚がないんだもの。いつもの朝のパンを急いで食べ、鞄を背負い、早足で学校に向かう。ヒラヒラと舞い落ちる綺麗な桜。木々がおいしげる桜並木を走って通り過ぎる。(植物は変化を感じられていいな。)そう頭の中で考えながら学校へと向かう。

校門付近に着くと、近くで待っている青年がいた。「おっ!まなか!またギリギリだなー」「ごめん丹治くん、アラームが聞こえなかったのかなあ...」そう、この青年は私の何も変哲もない人生を彩る彼氏という存在。丹治璃音である!丹治くんがいるから今日も私は生きている!この人は私にとっていちばん大切な存在。私たちは他愛もない話をしながら教室に向かった。

3年1組と書かれている教室に入る。「お、イチャイチャしてんねえ、まなりおカップルーー♡」この煽ってくるうざすぎる生命体は國井悠斗。サッカーをしている。陽気な性格で私たちをすぐ煽る。「おいやめろよ。まなかすわろっか。」「うん!」この煽りも丹治くんがいれば大丈夫なのさ!こうしていつもの学校が始まった。

1時間目 社会

朝の眠気をまた取り戻し、爆睡!

2時間目 英語

全然足りなかったので、爆睡ぃ!

3時間目 数学

またまた爆すi...「せんせーまなかさんが寝てまーす」

「こら佐々木さん。寝ないでくださーい」「はい、ごめんなさい。」ちっ...このチクリ魔はギャルの三島詩織だ。耳のピアスが特徴で私を嫌っているため、すぐ先生にチクる。さらにとてつもなく怖い先生、上村先生の授業の時に限ってチクるのだ。ほんっと最低やろー!とりあえず3時間目は授業を起きて聞いていた。

4時間目 理科

これよこれ!理科は実験があって、班で実験を行うの!そして私の班には丹治くんがいるの!移動教室のため、私は丹治くんと二人で理科室に向かう。「俺、実験好きなんだよな」「私も実験大好きだよ!だって丹治くんともっと仲良くなれる気がするの!」「それって実験が好きな訳じゃないじゃん笑」話しながら歩いていると、理科室に着いた。

「今日の実験はミドリムシの複製生殖についての実験だ。」「なあなあまなか知ってるか?ミドリムシは自分の複製を作って繁殖するんだ。何も変化しないってすごいよな。」「へえそうなんだ!って実験のねたばれじゃーん笑」(何も変化しない...私みたいだな...)そんなことを考えながら実験を行う。途中で國井が実験道具を割って怒られているのが視界に写ったが、無視した。

給食を食べ、昼休みに入る。私の昼休みの日課は、日課は...本を読むこと。丹治くんはと言うと、ほかの友達と遊んでる。丹治くんは私にばっか構っていられないからね。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ってから2分後くらいに体育館で遊んでいた汗だくの男子たちが教室にずらりと入ってくる。教室内は勉強のだるさで空気が重かった。もちろん私も空気を重くしてる一員だ。

5時間目 国語

おやすみっ!

6時間目 家庭科

流石に眠気はもうなかったので、授業を聞いていた。授業中にはずっと先生に質問している國井や友達と先生に聞こえない大きさで話す三島の姿などが目に入った。ほんとにうんざり。でも後ろを振り返ると、丹治くんが微笑んでくれた。ほんとに幸せ。

6時間目の終了を告げるチャイムとともにクラスのみんなが一斉に帰りの支度を始める。この時のみんなのやる気に満ち溢れた空気は少し好きだ。

帰りの会が終わり、椅子を机にしまう音が響き渡る。「さようなら。」この声とともに各々が動き出す。私は丹治くんのところに行き一緒に帰る。「今日の学校も疲れたー」「そうだね笑でも理科は楽しかった?」「うん!楽しかった!」会話の途中でいつも放課後のデートについての話に切替える。「今日はどこ行く?」そして、丹治くんが行きたい場所、私が行きたい場所に行き、楽しい時間を過ごす。ここまでが私の日常。そう、日常...だったのにこの一言で全てが変わった。

「あのさ、めちゃ急なんだけど、」

「うん!どした?」

「別れよ」

「え」

私の唯一の人生の支え。人生で家族よりも愛した最高の彼氏。そんな存在が予想もしない結果で消えた。そう、息をするように、風が吹くように、自然と消えた。背を向けてどんどん離れていく丹治くんを目に留めて色々な思考が頭を飛び交った。(私が居眠りしていたから?遅刻したから?國井に煽られるのが嫌だった?)

こんなにあっさりと消えてしまうのは本当に嫌だった。嫌だったから、涙を腕で拭い、声が自然とあふれでた。

「なんで、!なんで急に、、そんなこというの!」

「俺は、忙しいんだ。ごめんね、今は言えない。でもきっといつか君を救えるから。」

疑問が沢山残ったが、声はもう出なかった。ただただ受け止めきれなくて、涙が溢れてきた。声を出しながら泣いた。私は立ち上がり、帰路へとついた。

「ただいま。」「おかえりーってその顔!どうしたんだ!」「なんでもない。」「なんでもないって、何かあるから泣いてるんだろ!」「うるさい!あっちに行ってて!」私は大好きなお父さんにも反抗して、二階にある自分の部屋へと走っていった。「もうなにもかも嫌だ...今日はもう寝よう.....」夕方の5時12分。私は涙を流しながらベッドで眠りについた。

バァァン!!!

突如として家中に響き渡った銃声で目が覚めた。

「え、、何今の音?銃の音...?」

外はもう暗くなっていた。階段を恐る恐る降りていく。1段ずつゆっくりと。キシキシと階段から音が鳴る。1階の床に足を踏み入れた時、足が濡れた感覚になった。「なに、これ.....?」階段を降りたところにある廊下の電気のスイッチをつけた。

「ぎゃああああああああ!!!!」

電気に照らされたのはお父さんの死体だった。足が濡れたのはお父さんの血が流れていたからだ。私は何もかも分からなくなり、リビングへと走った。そこにはお母さんの姿は無く、時計がカチカチと針が動く音だけが聞こえた。時間を見ると夜の7時半。この約2時間の間に何があったのか。そんなこと考える余裕もなく、人が恋しくなり、とりあえず外に出た。よくデートで行っていた街中にある駅前に向かった。家を出て、いつもの曲がり角を曲がると、人とぶつかった。暗くてはっきりと顔は分からないはずだったが、見慣れた顔だったので、すぐに分かった。そう、本当に理解できない。そこには私の顔をした人間がいたからだ。「あ、、夢なのか。全部全部、別れたのも、お父さんが死んでしまったのも、全部夢なんだよね、そうか、そうなのか!!!」私の顔をした人は鋭い歯で私の顎を噛んできた。「痛いっ!けど、夢ならどうでもいい、!」気を失いそうになったその時、素早い蹴りを喰らわせて私の顔をした人を蹴飛ばした。「あー、、やっぱりお前か。俺には分かるよ」「く、く、國井...!!」そう、あの素早い蹴りは國井がやったのだ。「なんで國井がここに?私の顔をした人はなんなの?これって、夢だよね?私、お父さんが死んじゃって.....それでっ!」「まてまて。焦るのもわかるんだがそんないっぺんに言われても困るわ!ちゃんとせつめいすっけどこれだけは覚えておけ。」

「夢だと思っててもいいが、絶対に諦めるな。」

「無理だよ...私にはもう何も無いの...こんなの嫌だ」

「俺が...いるじゃねえか...」

國井の言葉に私は少し救われた。

「っぷ!笑なにそれー!笑でも、ありがとう。元気出た」

「おん、良かった。まず、俺に起きたことについて話す。7時に部活が終わって友達とコンビニで寄り道してたわけ、それで街中の駅前を通って家に帰ろうとしてたら、街の女性が急に、次々とバタンバタンって倒れてよ。」

「女性?」

「ああそうだ。そして次の瞬間、倒れた人達は手で顔を抑えて起き上がったんだ。手も使わずに起き上がったんだぜ?」

「怖すぎるでしょ」

「だよな。それで起き上がったヤツらは手を離したんだ。すると、そいつらの顔は、まなか。お前だったんだよ」

「え...?」

「さらにまなか化したヤツらは男性を喰うんだ。鋭い牙で噛み付いてな。お前は女性だかまなか化してないから噛みつかれてたな。お前は一番最初のまなか、ファーストまなかだ。なにか特別なのかもな。」「人を喰うって、ほぼゾンビじゃん.....そして、私は何者なんだろう。」

「そういう事だ。この世界は理性のある人間が失われつつある。さらに不可解なことも沢山あると思う。お前の父さんがなぜ殺されたのか。とかな」私はこの時思い出した。丹治くんの存在に。(忙しい...?後で君を救う?丹治くんはこのまなか化について知っていたのかな?)ますます気になってくる。「実は丹治くんと私別れたの。」

「えっ!?そうなのか?」

「うん。その時に丹治くんが少し変なことを言っててね、それとこの事象もなにか関係してるかも」

「丹治なら何か知っていそうだな。」

「だよね。あとお母さんは死体もなかった。どこかに消えてしまったのかな」

「それも気になるな。よし!俺たちの目標は決まったぞ!」

「この女性まなか化現象を突き止めるべく、消えたお母さんと丹治に会う!」

「そうだね!」

「ほんとに辛いことばかりだったと思うが、俺たちだけでも頑張っていこうな。」

「うん!絶対に諦めない!」私たちはグータッチをして、目標へと向かった。

大事なもの沢山失って気づいたんだ。変化も大切なんだけど、日常にはどれだけの幸せが詰まっていたかに。あの日常をもう一度取り戻すんだ!

こうして、女性まなか化現象の真実を追い求める私たちの物語が始まったのだ.....


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