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第5話 ゲーム世界に転移した客の話

伏せ字への言及はお断りいたします

 この世界に存在しない国の金貨、魔法が込められた指輪、想像上の生物の角や鱗、伝説の武具等々の「宝具」を持ち込む異世界転移・転生・帰還者がよく来る古物商リサイクルショップ「ほうぐや」の話


今のところ意識をフルダイブさせるVRゲーム機や、脳とコンピューターを直接つなぐ義体化技術なんてものは実現していないが


「◯ー◯ー◯ー◯とは言わないが、せめて◯ー◯◯ー◯○○○○○の技術ぐらいは実現してれないかねえ」


などとぼやく、これまでに来客されたお客の話を総合するとゲーム世界にトリップ・転移したという事例は結構あったりするらしい、残念ながら私が呼ばれることはないようだ※


※メタ視点:店長は自身が異世界転生・転移に巻き込まれた、巻き込まれそうになったことはないと思っているし、表向きは事実その通りなのだが実は日常的に巻き込まれそうになっている。しかし、ネットスーパーの中継機にされている神様の部下(第2話)などに常時監視されているような状態のため、未然に防がれているだけだったりする


「まぁ、ゲームは普通に遊ぶのが一番で、世界に大きな影響が出るのは良くない」


と結論づける。転移するゲームのジャンルにもよるが基本的にあまり荷物を持ち得ることが出来ないようで比較的いろいろな荷物を持ち歩くRPGでも装備と回復アイテム、イベントアイテムぐらいで大型の飛空艇とか戦艦みたいなのを持ち帰ってくることはあまりないそうだ


ちなみにゾンビ系ゲームからの帰還者は某団体により安全性を確認されてから開放されるらしい、安全でない場合どうなるかは怖くて聞けないがうちの見せに来ることもないから関係ないと信じよう


ゾンビ系のゲームだと最後ミイラ取りがミイラ(獣の狩猟者が獣)になるなんてザラだしな


だが、例外的にMMORPGの中に転移し帰還した人にはトンデモない能力・アイテムを持っている人間が居る。特に集団転移となると更に危険度の倍率が上がる。今日はその最たる例のお話


リサイクルショップとは別にある買い取り窓口側のドアが開かれて開口一番


「てんちょー、明日の〇〇賞は絶対に勝てそうなんや、だから軍資金が必要なんでいつもの買い取ってくれ!」


とエセ関西弁の大声で喚き散らしながら店に入ってきた。髪を短く刈り上げやたら顎の細く脂ぎった顔、漫画で描かれるとしたら間違いなく某有名ギャンブル漫画に出てくるのざわついているモブみたいな風貌の30代後半のおっさんなのだが、これでもれっきとした異世界(ゲーム)帰還した(クリア)勇者(プレイヤー)だった


「よう、そのセリフは2週間ぶり、今期何…何十回目か忘れたぐらい同じことを言ってるな」


とツッコミを入れてやると


「そんな事あらへん、先週()来なっかたですやん」


と言い訳を始めた。ちなみにエセ関西弁で話しているがコイツは私と同じ関東の○○○県出身なのだが異世界(ゲーム)にいた頃の癖でこのキャラを維持している。


()()()()()、それ以外の2,3,4,5週間前は毎週来てるだろ…というか先週は旅行行ってくると話してたんだからこれないだけだろ、というかお土産の1つもないのか?」


嫌味を言ってやったが、怯みもせず


「はい、そうおっしゃられると思いまして、お代官様、こちらが山吹色のお菓子でございます」


といって持っていた袋から「銘菓」と書かれた紙が挟まれた箱を差し出してきた。


「お主も悪よのぅ、ハッハッハ」


と冗談に乗って受け取ったが、明らかにお菓子の重さではなく()()()()()()()()()()()()()()()()重量で、落としかけた、というかなんとかテーブルの上に着地させたが、ゴトンッと言う鈍い音が響いた、明らかにお菓子の重さではなかった。


「ちゅぅわけで、そのお菓子の下に入っとる例の山吹色のお菓子を買い取ってもらえへんかな?お菓子の方は普通の土産品なんでご家族で食べてください」


と悪びれずに言ってきた


「あ、の、なー、こんな重さの量の金を買い取れるわけ無いだろ!明らかに数キロ単位あるぞ、金の相場いくらだと思ってるんだそんな現金うちにはない、ここに着ている時点でわかっているとは思うが他店への持ち込みも少量なら最悪問題ないがこの量はNGだ」


と、何度目かわからない注意をした、コイツは解ってやっているのでタチが悪い


「わかっとります、いつもの冗談やないですか」


と言いながら、そっと箱に触れた、いまので馬鹿みたいな量の金塊を減らし常識的な量に置き換えたようだ。


「わかってるならやらんでくれ、というかもうちょい重かったら手首怪我しそうになる」


と手をプラプラとしてみせると


「ホントすんません、ついノリでてんちょーさんなら上手くツッコんでくれるかなーと」


と宣ってきた、自分も山吹色のお菓子云々に乗っかってるので強くは言えない


「わかった、とりあえずいつも通りで良いんだな?」


と言いながら箱の中から自分の分のお饅頭と金貨2枚を取り出す


「あんじょうしたってや」


とのこと、とりあえず相手がわざわざこちらを騙することはないんだが商売をしているものの礼儀としてちゃんと鑑定は行う。


こいつの場合はその稀有な能力によって騙す必要どころか本来ならうちに来る必要すらないのだが、社会性というか人間性を捨て去らないためにも定期的にうちに来るようにしている。にしても頻度は高すぎるが…


こいつがこの店に来るようになってからもう4~5年が経過しているが、本当に初期は酷かった某団体の紹介によりうちに来た頃はもっと荒んでいたが取引をしていくうちにある程度の過去の話を聞くことが出来た


召喚されたのはとあるMMORPGをベースにしていると思われる異世界だった、自分を始めとする高校の同級生1クラスがまとめて召喚されたらしいのだが戦闘系のスキルを持っていなかったために所謂追放物みたいな目にあったそうだ


そして不幸なことにそのMMORPGの知識を持っていないかったため知識チートも出来ず召喚時に付与されていたチートで生きていくこととなった


こいつの持っていたチートスキルは「鑑定」と「商人」で戦闘にはほぼ役に立たないスキルのように見えた。どうやら鑑定はたしかに珍しいスキルではあったが全くいないスキルでもないらしく戦闘では役に立たないスキル構成だったため召喚した側は見落としてしまったのだ。


実際にはそんな生易しいスキルではなかったのに


「鑑定」と「商人」スキルの本質は「対象の性能・性質・本来の価値を知ることができる」「鑑定」と「どんなものにでも適正な値段であれば値段をつけて取引ができる」「商人」というものであった


これにより追い出された後

・商会を設立、鑑定による適切な仕入れと商人のスキルですぐに拡大

  ↓

・迅速に金を集め、鑑定スキルで燻っている/能力の偏っているが一流の人材も集める

  ↓

・世界最強の軍団をつくり、それを使いさらに膨大な金を手に入れる

  ↓

・膨大な金で追い出した「国」を商人スキルで購入

  ↓

・周辺国家もすべて購入し人類の統一国家を樹立

  ↓

・魔王軍へ経済戦争を仕掛け徹底的に経済破綻に追い込んで魔王および幹部は糾弾され吊るされた

  ↓

・世界は平和になり、することもなくなったので商人のスキルのアイテムボックスに限界ギリギリまで金銀財宝、マジックアイテム等々を詰め込んで帰還


と、こんな流れで、こちらに戻ってきており更にスキルはそのままだったらしく遊んで暮らすのも問題ないらしい、というか現にほとんど遊んで暮らしているようなものである


ただ、本人も世界でやったことをそれなりに恥じており、更にスキルの万能さから商会の部下から神のように崇められていて、それも嫌でこちらに戻ってきてからは適当に持ち込んだ金を換金してギャンブルで溶かすダメ人間となっている。


鑑定については画面越しではさすがに利用できず、本人も勝つ気がないと言うより運良く当たりを引けるほうが楽しいらしい、ちなみに他のギャンブルは対面でも機会であってもイカサマをされていることも例えイカサマされていたとしても勝つ方法が鑑定でで見えてしまい面白くないのでもっぱらモニタ越しに観戦可能な公共ギャンブルが良いらしい


そんなわけで、本当であればうちに換金に来る必要なんてほとんど無いのだがそれでも来るのは私が異世界帰還者であっても普通に接することが出来て恐れたり嫌ったりするような人間ではない、とのこと


一緒に召喚された同級生たちはほとんど召喚された国に使い潰されていたらしくまともに話ができる人間はほとんどいないらしい


と、長々とこいつの事情を回想してみたが、たしかに同情はできるところもあるし、常識的な取引額でこちらも稼がせてもらっているのであまり言えたことではないが


「ホンっと、ギャンブル弱くて運がないことだけはどうにかならんもんか」


とは伝えておく


「いやー、ホンマスキルを通さんで純粋に楽しめるギャンブルの中毒性が~」


といつもの言い訳になってない言い訳を始めたので


「それも何度も聞いてはいるが、まぁお前さんの場合破産の心配はないから大丈夫だとは思うが、ほどほどにな」


「あいー、楽しいからってやりすぎて全部台無しにしてしまうのはアカンというのはちゃーんとわかっとるので、それはやらかさないよう気をつけます」


と返してきたので、解ってるならもうちょい節度と頻度をと思いつつ、換金用のお金を金庫から取り出すのだった…

MMORPGのやらかしの説明がこの100倍ぐらいあるんですが


それを書き始める始めると別のシリーズが始まってしまうのでざっくりした説明で切りました


元ネタは実際に自分が過去にやっていたMMOであった話で、身内の団体(10PT数十人ぐらい)でサーバー全体のプレイヤーに圧政を敷いたことがあるという事件を元にしています

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