第4話 駄エルフな客?の話
今回は女っ気のないこの店にも可愛い娘が来るところもお伝えしたいと思います
この世界に存在しない国の金貨、魔法が込められた指輪、想像上の生物の角や鱗、伝説の武具等々の「宝具」を持ち込む異世界転移・転生・帰還者がよく来る古物商リサイクルショップ「ほうぐや」の話
皆はエルフという種族を知っているだろうか?
異世界物の定番である、作品によって多少異なるものの大抵長命で美しく自然を愛し弓や魔法を得意とする耳の長い種族、それがエルフである。
そして、今回お話するエルフはどう見ても10代の美小女にしか見えないが一体何百歳なのかなんて怖くて聞けたものではない
まぁ、4~5桁は普通に生きるエルフにとって2~300歳はまだまだ子供らしくそれはそれで年齢を尋ねられるのはNGらしいので、日本の常識にも則り女性に年齢を聞くような真似はしない
大体、私の眼の前に居るエルフは長命で美しいのは事実だが自然を愛するどころか物質文明に染まりきった駄エルフである。いやエル腐といったほうが正しいか?
スマホ片手にコラボ物のヘッドホン、推し活バッグ(痛デコバッグ)にアニメ作品とコラボで作られたキャリーケース、それらに推しキャラと思われる人形等のグッズという装備だった
そう、日本に転移してきたエルフはどうしょうもないオタクになってしまったのだった
別に私は他人の趣味にどうこう言うつもりはない、私もアニメや漫画、特撮、なろう、同人なども好むオタクである。というか異世界帰還者と話をするためにいくつもの事例を知るためにもそういったコンテンツのチェックは必須業務ですらあるとも言える(早口での強弁)
なので、オタク女子の装備をしているエルフについて何も思うことはないのだが、直後にされたコイツの要求については異世界関係の古物商ヲしている者として流石にツッコミをせざるを得なかった。
その駄エルフはヘッドホンを首にずらし、スマホの操作をやめポケットに仕舞い早口でまくし立ててきた
「新しく増えた異世界帰還者がマジックバックを自作できるとのことで、ぜひ紹介してほしい、私の同人誌を整理するための新しいマジックバッグを発注したい、少なくとも10万冊は収められて劣化を防ぐための時間停止・遅延、整理機能とか他の人には見られないようにするセキュリティ機能もほしい、それから…」
おいおい、まだ要求があるのか、それよりどこでその情報を知ったんだと思いつつも、基本的な注意を行う
「おばあちゃん、マジックバッグはいろんな犯罪に流用できてしまうから販売はダメだって教えたでしょ」
そう言うと、ババァ扱いが気に食わなかったようだがそれ以上に事情があるのかやや怒りつつも必死に
「誰が年寄りだ、そして犯罪に流用なんかしないし本しか入らないように作るから問題な・・・いやフィギュアとかタペストリーは入れられるようにしたいかも…でも、それらをマジックバッグに入れてしまうとフィギュアを眺められなくなるから時間停止したバッグに入れた状態でそれを飾って置けるようにするのもありなのでは・・・!?」
と、駄目な方向で更に追加の要求を出し始めた。正直個人的にも時間停止機能を持ったフィギュア用ガラスケースとかすごく気になるし欲しくなりそうだが、そこで話に乗ってしまったらこの駄エルフと同じレベルまで落ちてしまうので、乗っかりたい衝動を抑えて、駄エルフを諌める
「とりあえず要求は解ったが常識で考えてくれ、まかり間違ってその魔法鞄が他人の手に渡ったりしたらどうなる?時間停止機能なんてついていたらさらに最悪だ、冗談抜きでこの世に地獄絵図が現出しかねんぞ」
といったものの、そんな凶悪なスペックのアイテムではあるが中身は腐女子が数十年にも及び集めたBL同人誌の山、ある意味とんだ地獄である。そしてそれを解析するハメになる研究者とか可愛そうだよなぁ、もう色々成約化してOK出しちゃっても良いんじゃないかなーとか考えてしまうが
「うむ、なので入れられるものは私の宝物だけに限定し、私と制作者以外に物の出し入れは出来ないようにするし、私の手元から離れないようにするか、自動帰還する、それもダメなら相手を抹消する機能を積んでも良い」
とふんすっ!と鼻息荒く、腕組みしながら自信満々に答えた
「良くねえよ、紛失したらバッグの中身ごと消滅するようにして証拠を残すな」
完全にアホの子である、段々突っ込みいれるのも馬鹿らしくなってきているが、ほっといたらマジで実装しかねないので再度常識を解いてやる
「ふざけるな、そんなことをしたら私のコレクションが消失してしまうではないか、そんなことは絶対に許容できんぞ、どうしたら作る許可を下ろしてくれるんじゃ、この頑固者」
と、本気で怒り出した。だがこれに気圧されるわけにもいかない
「いや、解析されるのが一番まずいからなくした時点で消滅は必須だ、こればっかりは譲れんぞ」
とこちらが言ったところで一転、駄エルフはニヤニヤと笑いつつ
「つまり消滅機能を積めばバッグの作成することは譲ってくれるんじゃな?言質を取ったぞ」
と最初に仕舞ったスマホを取り出し録音状態であることを見せてきた。あーコイツめんどくせえ
というか現代文明に慣れすぎてるエルフってのはホント厄介だな、と思いつつ
「そんな隠し撮りみたいなことしても証拠能力として不十分じゃないか?というかそれ以前にこんな事他者に口外できない以上録音してたってどこに提出できるわけでもないんだから意味がないだろ」
と言ったが相手はいやらしい笑顔を崩さず
「うむ、当然警察などが介入することは無理だし、裁判なんかもできん、だがな、貴様から言質取ったと魔法鞄を作れるお人好しなチート所持者に伝えれば断れることはなかろう?」
と言い出した、マジックアイテムを作れることを知っていた事も不思議だったがどうやら性格まで把握されているらしい。彼にはしっかりと釘を差しておけば安易に作るようなことはしないと思うがこの老獪な魔女に口八丁手八丁にやり込まれたらあっさり騙されてしまうだろう
「解った解った、これだから老獪な婆さんは嫌いなんだ、これ以上下手な言い合いをして変な言質を取られても困る、わかったからこちらの制御できる範疇でのバッグの作成は許可する、ただ過度な反撃機能とか過剰な機能についてはオミットするからな」
そう伝えると、ニヤニヤ笑いから満面の笑みに変わった、ホントこういうときのコイツは最高に可愛いんだが中身がなぁ…と
「あぁ、それで構わんよ、で、いつから作成に取り描かれる?今日、なんなら今からでも構わんぞ、ハリーハリー!」
と、全力で急かしてきた
「長命種のエルフなら別に5年10年、なんなら100年後だって別に問題ないだろ?」
と思ったことを伝えたのだが、相手はすごく真剣な顔つきになり
「実はな、非常に差し迫った状況にあってな。家の床が抜けそうなんじゃ、いやもうなんなら少し抜けてるのかもしれん。今必死に各部屋に分散しつつ床を防御魔法で補強しているのだが数日に一度掛け直さないといけないんじゃよ…」
と言い出した。うん、年単位で放置したくなってきた
「よし、彼にはゆっくりいつでも良いと伝えておくので、婆さんは家の掃除に励んでくれ」
とにこやかに伝える
「そんなー流石に今日明日に限界を迎えるということはないがたまに家全体が軋むような音がなるので大きな地震なんかがあると怖いんじゃよ~」
とのことなので、こちらはベストエフォートで努力しますとどこぞのネットワーク会社のような回答をしつつ
「がんばれ♥がんばれ♥」
と返しておいた。
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後日、彼と駄エルフの共同で新たに魔法鞄改め無限書庫ならぬオタク趣味特化の収納棚が完成した。名前は駄エルフが決めようとしたところ無限の趣味収納棚と書いてアンリミテッド(以下略)とつけようとしたので却下しておいた
また、今回の技術を応用して時間経過しないことで経年劣化や日焼けを起こさないガラスケースを作成してもらい彼の独立に大いに役立った(建前) そして自分の趣味が捗るのだった(本音)
…最初はヒロインになるエルフ娘を出そうと思ったんです、信じてください
装備品考えているうちに腐女子ファッションしてるエルフって良いんじゃね?って思ったんだけど
ファッション腐女子はなんか違うなーって思ってガッツリオタクにしてみようとしたところ
ヒロインではなくなってしまった。
…どうして
(オタクアイテム装備ではなくオタク女子ファッションの方にしておけばよかったかもしれないが後の祭り