第14話 帰還者が異世界に出戻りする話
この世界に存在しない国の金貨、魔法が込められた指輪、想像上の生物の角や鱗、伝説の武具等々の「宝具」を持ち込む異世界転移・転生・帰還者がよく来る古物商リサイクルショップ「ほうぐや」の話
客商売をやっている以上色々なお客と出会うとは言え何度か取引のあった人の顔は忘れないようにしているが、久々にやってきたその客は思い出せなかった、というより名前と顔が一致しないレベルでやつれていた
「店主、久しいな村崎だ、突然で申し訳ないんだがこっちを引き払って、異世界に戻ることにしてな。こっちの持ち出せないものを引き取って欲しいのと出来れば死蔵している便利な道具があったら譲って欲しいのだが可能だろうか?」
と、言ってきた老人は今村崎と言ったか?、以前は老人ではあったが矍鑠としていてまさに年老いてなお現役といった感じの爺さんだったのだが、眼の前の老人は酷い言い方だが萎びている、という表現が正しい感じだった
「本当に村崎さんです…?こちら引き払うと言っても明らかに体調悪そうですが、行くにしてももう少し時間を置いてからのほうが良いのでは?」
と一応気遣いつつ、こういうふうに老人扱いすると牢人扱いするなとキレる様な人だったのだが
「ふっ、そうかもしれんな、だが今いかないと本当に動けなくなりそうでな…今日明日とは言わないが来月には戸籍とかの処理も団体に頼みつつ異世界の方にいくつもりだ」
…軽く笑って返された
「お、ぉぅ、わかりました、とりあえず冗談抜きでなにかあったんですが?本気で体調おかしいならうちのアルバイトにちょっと怪しい薬機法上適応外なお薬なら出しますよ?」
というと、寂しそうな顔をして
「いや、そういった気遣いは無用だ。別に体調は悪くない。先日ツレが亡くなってな、老衰で大往生だ。ただ、ツレは異世界の出身でな諸々の処理は団体が対応してくれて葬式も昨日終わったんだが自分が何をしたら良いのかわからずオロオロしてしまい、出身の件もあり家族での密葬という形ですべて終わって今更店主や知り合いに知らせるのも忘れてしまっていた事に気が付いてこちらに来た」
とのことだった、確かにあの元気な老人には異世界から一緒に移住したかなり勝ち気で昔は美人だろうとわかる女性がいたが…
「それは…お悔やみ申し上げます…ただ、そんな状況じゃぁ無理ないですよ」
何とかそう伝えると、老人は続けて
「葬式の後でな自分があまりにも情けなくなった、そしてツレの最後の言葉を思い出したのだが異世界の出会いの事と冒険者になる際に置いてきた家族の話でな、無駄かもしれんが子孫でも残っていれば伝えるなり家族の墓かその近くにでも埋葬しようかと思ってな」
とのことで、人生最後の旅に出るとのことだった。それは止める権利は誰にもない
「わかりました。とりあえずうちの魔法鞄作れる帰還者が居るんでそいつに旅に必要な道具一揃えを準備しておきます」
そう言うと相手は頭を下げて
「ありがとう助かる、こっちの家の処分とかもあるのでそのへんの処理もあるので2-3週間後にまた来るのでお代はその時に教えてくれ、と言ってもこちらのお金はあっても使い道はないので最低限の思い出の品以外を処分した残りの金額を全部渡そうと思うが…」
とのことだったが、正直うちの帰還者もそんな客から高額もらおうとは思わないだろう、ただ相手も残しても仕方ない金額だろうし、ここは快く受け取って異世界の親族が居た場合のおみやげになるようなアイテムを多めに入れてもらうことにしよう
「受け取り過ぎになりすぎるかもしれませんが、まぁこちらも余り表に出せないものなんですが異世界で使うには問題ないでしょうし効果が強すぎない程度のものを多めに詰めて渡すのでお土産にでもしてください」
そう言うと、たしかにあちらに行って渡すものとか考えていなかったらしく
「助かる、そういったものも考えていなかった、もう50年以上前の話で今もそうだとは限らないが、寂れた農村だったらしくそこでの生活が嫌で冒険者になったときに私と出会った、とのことだったので農業関係とか生活に使える簡単なものがあると助かる。私の居た頃は所謂中世ヨーロッパよりもどっちかというと古代寄りの文明レベルだったが魔法のお陰で一般人はそこそこ便利な生活は送れていたが農民はお察しレベルだったからな…」
とのことで、うん、そのへんは参考にしよう
「わかりました、じゃあやり過ぎて領主とか国王に目をつけられるようなことはない程度に調整します」
というと、相手もようやく笑ってくれた
「くっくっく、たしかに昔はモンスター退治して荒れ地を開拓しただけで領主やらに目をつけられて大変だったのぅ」
…多分この人が対峙したモンスターって相当やばいのだったんだろうなぁ、と思いつつ
「まぁ、そのへんは異世界でも色々経験のある帰還者が詳しいので調整しておきましょう」
そういうとリサイクルショップの方に声を掛けに行くのだった…
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3週間後、結構な額を渡されたがどうやら某団体が土地やら持ち出せないものを引き取ってくれた金額らしいが。別途家財で流用できないものの処分費も含めるとのことで渡すアイテムと相殺することでちょうど釣り合いが取れるかなー?ぐらいになった。
まぁこちらとしては帰還者にとっては微々たる魔力(現地の人でも普通に維持するぐらいなら問題ない)で動作する無限にきれいな水/お湯の沸く蛇口、締め切った空間を一定温度湿度に保てるエアコン、防虫・ウィルス・カビなんかも防いでしまう無菌室的なものを作れる等々のマジックアイテムとか、こっちでは売ることのできない物をマジックバッグに詰め込んで渡しておいた
基本的に魔法式が違っていてもだいたい動くらしいが力の流れとかが異なって威力が変わることがあるらしいのでそれ用の変圧器のようなアイテムと術式もセットらしい、海外で日本の家電使うためのコンセントの変換器みたいなものです、とのこと
ますます、海外旅行じみてきたな…
村崎さんは荷物の引き渡しが完了した後そのまま異世界に行くとのこと、某団体に元いた世界に帰す手段を持っている人がいるらしい。流石だ
「それじゃあお元気で!」
そう挨拶すると、この数週間でなんとか元気を取り戻したのか
「おう、まかり間違ってあちらで領主とか国王に目をつけられてこっちに逃げることになったらまた世話になる」
とのことだった
「まぁその時はよろしくお願いします」
と二人で笑いながらお別れしたのだった




