第11話 異世界より現代のほうが有効な能力の話
話に適当なタイトルを付けるようにしました、つける必要になったのは、以前の客の話題を出そうとしたときに何話だったか忘れたためです
この世界に存在しない国の金貨、魔法が込められた指輪、想像上の生物の角や鱗、伝説の武具等々の「宝具」を持ち込む異世界転移・転生・帰還者がよく来る古物商リサイクルショップ「ほうぐや」の話
異世界に転移・転生した勇者のチート能力は基本的にいい加減なものが多い
このいい加減というのは "程よい、適切" という意味のいい加減であれば良いのだが"投げやり、無責任"的な意味でのいい加減であることがある。というのも大体が転移・転生者の得意とする分野をベースにチート能力を与えることが多く、そういった意味では適切なチートが割り振られるように思える、だがしかし分野は正しいのだが能力の制限がなかったり、応用が効きすぎたりとスキルの解釈により無責任とも言えるレベルのものが多く、結果駄目な意味でのいい加減なチート能力を与えられることが多い。
ひどい例だと本人に聞いたのだがケーキ作りのチート持ちの異世界転移者が魔王にケーキを腹を破裂するまで食わせ続け撃破したという話もあるらしい。その場合は美味しいケーキを作り相手が満足するまでケーキを食べさせるという能力を拡大解釈し"満足するまで"という制限を取っ払い死ぬまでたとえ腹が避けようと窒息しようと食べ続けさせる能力となった。あまりにも強力すぎるのと絵面が悪すぎるので本人もスキルを封印し料理とは無縁の生活を送っている
そんな訳でチート能力というものは基本的に良い意味でも悪い意味でもいい加減であり、使用者の解釈次第で神にも悪魔にもなれてしまう
今回はそんないい加減なチートの中でも異世界よりも現代社会に多大なる影響を与えることができてしまう客のお話。
一応、我が店は"異世界転移・転生・帰還者がよく来る"とは言うものの、普通の客が来ることもある。そしてリサイクルショップという業種柄結構いろんなものを引き取ってくるのだが中には完全にゴミにしかならないものもあったりする
その中には金属が含まれているので分解して金属ごとに分けることで高価買取してくれるものがある。
だが、ものによっては頑丈すぎて分解できないものや、構造的に破壊するより中からねじ等を外したほうが楽なのだが鍵がない、といったものが存在する。普段は無理やり破壊することもあるが今回はちょうど来店されていた客に助けてもらうことにした
「…そんなわけでして、山本さんのチートでいくつ解錠、分解してほしいものがありまして」
と、仕入れたもので微妙に面倒なものが溜まって来ており、目の前位に居る異世界からの帰還者である山本さんにお願いした。山本さんは50代の男性で先代の頃からの客で20代の頃に帰還されこっちでまともな職業につきつつ勇者時代に貰った報酬の貴金属をたまに換金に来ている。
「いいよぉ、バイト代はでるんだよね?」
と言ってはいるが正直持ち帰った貴金属だけで悠々自適に生活できるぐらいあるらしい、それで一生過ごすには20代というのは若すぎたとのことで、帰還後普通に就職しチートも使わず生きている。
「もちろんです、いつもの焼肉屋でどうです?」
「承った~、それじゃやりますか、いつもの裏の倉庫?」
そう言ってくれて助かった。元勇者とは言え20年以上経過して最近はまともに運動もしてないようでかなり腹の出た眼鏡のおじさんという感じではあるが、うちに来るのも換金もあるが定期的にチートを利用するためでもあったりする。
「ありがとうございます、裏の倉庫です、では一旦こっち閉めて裏で作業するの伝えてきます」
そう言うと、リサイクルショップの方に居るバイトにそのことを伝えた
「わかった、じゃあ先にゆっくり向かってるよ~」
と手をヒラヒラして一旦店を出て裏に回るため移動し始めた
こちらも、離席中で一時休業の看板を下げ小走りで裏の倉庫に向かうとちょうど追いついた
「それじゃあ、開けますね、ロッカーとか金庫とかあと歪んでしまって分解できない家具類とかありまして…」
そう言うと裏の倉庫のドアを開けて照明をつけた。
「おー結構あるねぇ、まぁコッチはチートで片付けるのであんま問題ないけど」
そう言うと指を鳴らしながら家具や什器に近づた。まずは歪んで開かなくなってしまったロッカーで最近引き取ったは良いものの再利用も難しく運ぶのも一苦労で入口を占拠していたのでそれに触れた
次の瞬間ロッカーはバラバラになり虚空へと消えた。邪魔だったので収納魔法で別空間に移動したらしい
次にかなり古い金庫で、開け方すら不明で滅茶苦茶重たかった。とは言え金庫の重量の大半はコンクリートだったりするので分解するとそこまで金属はなかったりする。それにも触れるとカチャッと言う音がなった
「金庫は鍵あけたので一応中身は確認する?」
と一瞬のうちに解錠したらしい、流石だ
「ありがとうございます、持ち主からはもう何十年も開けておらず鍵屋に頼んだらかなり費用が掛かりそうで、家・土地の権利書とかはあるので開けられて個人的なものだったら教えてほしい、程度ですが…」
そう言って中を見ると金銀が詰まっているなどもなく、持ち主の親か祖父、紙の状態を見るに祖父のものと思われる手紙が残っていた、これは後で元の持ち主に届けよう…
「知り合いの家を解体したときに出てきたやつで、そちらのおじいさんの手紙っぽいですね、これは持ち主に返しておきます。金庫は分解でお願いします」
そう伝えると軽く返して奥の金属製の家具を分解していた手を止め戻って来て
「あいよーっと」
軽い反応とともに金庫も分解してくれた…
~30分後
倉庫で結構な量を占めていた家具や什器の分解が完了した。そうしたら次は木製のパレットの上に大きくて頑丈な麻袋を複数設置する。
「そうしたら、いつも通り袋ごとに金属と木、プラとかを分けてけばいいね?」
と聞いてきたので、準備している袋を指差し
「はい、いつも通りお願いします、いれるものは袋に書いてあります」
そう伝えると、山本さんは袋を見て書かれている通りに従って収納魔法で格納した物を袋に戻し始めた
「これが鉄で、こっちが銅、アルミに木、プラ、コンクリ…と」
これをしてもらえるので、本当に助かる。すぐに終わりそうだ
ついでに、そろそろ山本さんのチートについて触れていこうと思う
とは言え、ロッカーや金庫を分解しているので「分解」だと思われているが、実は違う
山本さんの持っているチートは「解錠」なのだ、現役時代チートを鍛えた結果「鍵の構造を把握し」「守っているものを公開させる」という方向で解釈し、魔王軍の幹部クラスが利用する防御魔法を「解錠」によって分解することで勝利していたらしい、他にも相手の武器・時には魔法そのものに干渉し「解錠」にて安全装置的に働いている機構部分を中途半端に解錠し自爆させるなども出来るそうだ
山本さんは「鍵を開ける」というものを拡大解釈して対象を「鍵」だけではなくしたり「開ける」という行為を、構造を分析・把握して無効化するというように応用できるようになったのだった
帰還後、このチートを悪用したら解錠だけでも十分にマズイのだが、この能力は概念的なもの電子機器・ネット上にまで及ぶことが判明し自分の意志で封印した。
本当は帰還後のゴタゴタのほうが面白い…失礼、大変な事態に発展したのだがこれによりプライバシーもなくなりかけた人間が何名か出たので、彼らの名誉のために今回はその話はやめておこう
と、そんな事を考えていると分別も完了したようで、最後に貴金属は小さい袋に入れてくれた。
「おわったよー、それじゃぁ焼き肉いくぞー」
おーっと軽く手を振り上げながら楽しそうに倉庫から出ていった。結構良い歳したおじさんではあるがこういうところは元気いっぱいである
「ありがとうございます~これからなら平日で夕飯時より少し早いんで焼肉屋も空いてるでしょうし良い時間ですねー倉庫閉じたら出かけましょう」
そう伝えると、倉庫の照明を落とし、鍵を締めて財布を持ち店に声をかけて少し早めに切り上げるのだった…
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ちなみに呑んでいる最中に聞いた話として衝撃的だったのは基本的に他人やものに対しては使わないようにしているが、自身に対して血管の詰まりや通風、結石に対しても能力が有効で治したことがあるとのことだった。
さすがチート何でもできるもんだなぁ…と思いながら楽しく呑むのだった
本当はもっと極悪な使い方があるんですが、汚い表現になったり黒い表現になりそうだったので…




