死神先生
子ども向けの童話賞に応募しましたが、落選のため供養の投稿です。
病院はとても退屈でつまらない。
私は生まれてすぐ不治の病にかかり、それから今まで、ほとんどの時間をこの病院で過ごしてきた。
たまにお母さんとお父さんが来てくれるけど、そうじゃない日はちっとも楽しくない。
私も外に出て、友だちを作って、遊んで、いろんなところに行ってみたい。
「神様、どうか私の病気を治してください。」
そんなことをつぶやきながら、退屈な毎日を過ごしていた、ある日の夜。私の部屋にふと声が響いた。
「こんばんは。」
聞き慣れない声、誰だろう。
私はうとうとしながら声の方へ顔を向けた。
するとそこには、真っ黒なマントを着た、ガイコツ姿の怪物が立っていた。
「きゃあ!」
私はベッドから飛び上がり、ベッドの横に置いてあった物を片っ端から投げつけた。
「痛い! 痛いよ! 別に襲ったりしないから!」
嘘に決まってる。
あんな怖い姿をした怪物が、人を襲わないわけがない。
私は怪物の声を無視して、必死で物を投げた。しかし、投げられる物はすぐになくなってしまった。
「痛いなー、話くらい聞いてくれよ。」
私は目を閉じ、ガタガタと体を震わせた。
「そんなに怖がることないだろう。別に君を襲ったりしないさ。」
私はうっすらと目を開け、怪物の方へ目をやった。
「本当に?」
「だから何度も言ってるじゃないか。」
「じゃあなんで私の部屋に来たの?」
私が恐る恐る聞くと、怪物はマントを整え、落ち着いた声で言った。
「僕は死神。君の願いを叶えに来たんだ。」
私はそれを聞いて、再び体を震わせた。
『死神様は命を司る神様。人間の命を奪う、怖い神様。』
昔読んだ本に書かれていたことを思い出し、私はとても怖い気持ちになった。
そんな私を見て、死神様は思い出すように言った。
「ちなみに、この世界では僕が人の命を奪う怖い神って言われてるみたいだけど、それ、勘違いだからね。僕はここ数千年、人を助けた事しかないよ。」
そういうと、死神様は私が投げたものを拾いはじめた。
本当に、怖い神様じゃないのかも。
私はそう思い、死神様に話しかけた。
「先生が言ってた。私の病気は治せないって。」
死神様は拾い上げたものをベッドの横に置きなおすと、くすりと笑い自慢げに言った。
「確かに人間には治せないね。でも僕は人間じゃない、死神だ。死神に治せない病気なんて一つもないのさ。」
「私の病気も?」
「ああ、もちろん。あっという間さ。」
「どうやって治すの?」
「おまじないをするんだ。病気が治りますようにってね。」
そういうと、死神様は私のおでこに手をあてた。
ゴツゴツしていて、とてもつめたい。けれど、不思議と嫌な感じはしなかった。
「私、本当に治るの?」
「もちろん。僕に任せれば一瞬さ。」
次の瞬間、雲みたいにふわふわな空気が、私を優しく包み込んだ。
「なんか、少し眠くなってきた……。」
「ゆっくり休むといい。起きた時には病気なんて綺麗サッパリなくなっているさ。」
私は死神様の声に吸い込まれるように、深い眠りに落ちた。
——目が覚めると、私はベッドの上で横になっていた。あたりはすっかり明るくなっている。
「……死神様?」
ふわりと体を起こし、周りを見渡す。死神様の姿はどこにもない。
「もしかして、夢だったのかな。」
そんなことを考えていると、お母さんが泣きながら部屋に飛び込んできた。
「病気がね、治ったって。もう……大丈夫だって……。」
死神様は本当に病気を治してくれていた。
「やっぱり、やっぱり夢じゃなかった!」
私が喜びの声をあげていると、ふと、何かが私の横を通り過ぎた気がした。
目には見えない。けれど、きっとそれは、真っ黒なマントを着た、ガイコツ姿の優しい神様。
私は心の中でつぶやいた。
「死神様、病気を治してくれてありがとう。」
「死神」と聞くと黒服に身を包み、鎌を持った悪魔のような怖い神を想像するかと思います。
けれども僕は、死を司るなら死を与えるだけでなく、死を奪う(生かす)ことも出来ると考えました。
この物語を通して、既存の考え方にとらわれない、自由な発想の重要性を子どもたちに知ってもらいたく執筆しました。