第7話
「そっか。お前も少しは大人になったのな」
「そりゃあね。それに別にいいの。アキラが私たちより彼女を選ぼうと!
心配してたほど関係壊れてないし」
強がってるのいるのはわかったけど、わざわざ言うことでもないな。
それに、たとえ強がりでも、アヤカが強がれるだけの元気を取り戻していることがうれしかった。
そんなことがあってから、だいだい1か月。
俺たちは特に問題もなく危うさが保たれたまま冬休みを迎えた。
高校3年生の冬といえばもちろんそれぞれの進路に向かって驀進中。
…と思いきやそうでもない。俺は安全圏内の私立。あの二人は冬休みに気が狂うほど追い込む必要はないくらいには頭がいいからだ。まぁ、一応センターの勉強はしているが。
ときには勉強も休んで息抜きしようということで、俺たちは年末に3人で遊びに行く約束をしていた。
映画を見に行くだけだが、アキラに彼女ができてからは3人で遊びに行くこともめっきり減ったから、アヤカは本当に楽しみにしていた。
そしてその当日。待ち合わせ場所には、アヤカしかいなかった。
おかしいな。俺が5分遅刻するのを2人が小言で迎えるっていうのが定石なんだけど。
「アキラまだなの?」
そう聞いてから気づいた。
アヤカの様子がおかしい。
泣いてる?
「アキラ…こないって」アヤカはそれだけ言うと、こらえられなくなった嗚咽を漏らし始めた。
「…なんで」俺は慰めるのも忘れて問いかけた。
「彼女が、とめたって」
俺は次の瞬間には携帯を手にし、アキラに電話をかけていた。
何回目かのコールでアキラは電話に出た。
俺はもしもしも聞かずに一方的にどなった。
「おまえ!何考えてんだよ!ずっと前から計画たててたじゃねぇか!
…アヤカがどんだけ」
「ごめん」
その一言でわかった。アキラもまた泣いていた。
「なんだよ。何がそんな風にさせるんだよ」
「行くつもりだったさ!俺だって楽しみにしてた。…でも」
「でもじゃねぇよ!お前それでも男かよ。約束のひとつも守れねぇで」
「サク!もういいの」
アヤカが俺の服の袖を力いっぱいひっぱった。
アヤカに止められなければきっと俺はもっとアキラを傷つける言葉をいったに違いない。
俺は吐き出しきれなかった怒りを必死に抑えながら、電話をきった。
「アキラのやつ、最低だ」
「きっとなんか理由があったんだよ。ありがとね。
代わりに怒ってくれて」
アヤカが無理して笑顔を作る。眼はまだ真っ赤に染まっている。
「映画。行くか」
正直俺はとてもそんな気になれなかった。でも、映画を見に行くことで、アヤカが少しでも元気になるのなら、そう思った。
「うん」
その日はアヤカと映画を見て、2人で食事をしてアヤカを家まで送って行った。
夜の9時だった。
俺はアキラに電話して、アキラに家の近くの公園にくるようにいった。
どうしても納得できなかった。