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【書籍発売中!】ライブラリアン〜本が読めるだけのスキルは無能ですか!?  作者: 南の月
第二章 逃げる冒険者

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[閑話]女神の奇跡(後編)

皆が様子を確かめようと家を出ると、今度は地震かと思うような揺れが起きた。

揺れていたのは時間にして30秒ほどだろうか。


「草だ!」

誰かが叫んだ。

彼が指差す方に視線をやると、草がぐんぐんぐんぐん伸びている。

ありえない速さで成長し、隣り合う草に絡み合い、どんどん空を埋め尽くす。


「おい!出口を確保しろ!」と命令した時にはすでに遅く、砦の門は草が蔓延って出られやしない。

騎士たちが草を切り分け外に出ようとするが、草の成長スピードが早く出られない。


30秒ですっかり空を覆い尽くしてからは、無駄に体力を使う事をやめ、皆を砦の中心に集めた。

いなくなった人はいないか確認し、騎士たちは出口がないか見回りに、村の者は2人1組で村の備蓄を確認させた。

いつ外に出られるかわからないからだ。


騎士の捜索の結果、出口はどこにもなかった。

揺れは収まったが、正体不明な音はどんどん近づき大きくなる。

もう耳を塞ぎたいほどだ。

近くにいた女がぽつりと呟いた。


「もしかして…女神様の…」


「どういう事だ?

女神とやらが今俺たちを閉じ込めているのか?

君は何か知ってるのか!」


「い、いえ!

あの…ただの推測なのですが…

テルー様が村を出る前砦の周りを回っておられたのです。

何をしておられるのかお聞きしても「ただの自己満足だから」と教えてもらえなかったのですが、その時「1回なら守れるかな?」とつぶやかれて…

だから…あの…テルー様が守ってくださったのかと…」


それを聞きつけた村の人たちは「女神様の守護だ!きっと何かから守って下さってるのだ!」と大騒ぎ。

ずいぶん…好かれているな…


だがおかしい。

さっきの話に出てきた結界だって、聖女しか作り出せないもののはずだ。

現在聖女はおらず、聖女候補と言われる娘が5人いるだけだ。

8歳の候補者なんて…いなかったと思うんだよなぁ。


半日ほど経つと、耳をつんざくような音もだんだん消えてきた。

そして全く聞こえなくなった頃、あれだけ絡み合ってびくともしなかった草が枯れ始め、1分もしないうちに砂塵となって消えていった。


なんだったのか…

恐る恐る砦の外に出ると唖然とした。

そこには木も草も全て薙ぎ倒されていたのだ。

まっさらになった山の中、虫も動物も空を飛ぶ鳥も…命あるもの1つ見えない。

何があったのだ…

後ろから出てきた村の人もびっくりしている。


パカッパカッ。

「ギルバート!よかった!無事か!?」


「ジャックじゃないか!一体何があった?」


「何がって…スタンピードだよ!

すごい魔物の大群が押し寄せただろうが!

ここはばっちり通り道だったから心配してきたんだろうが!

それよりさっきまであった草のドームはなんだ?」


スタン…ピードだぁ?

本当にそうなのか?

とにかく砦の中で身動き取れなかった事を話し、ジャックから外の状況を報告させる。


ジャックが言うには、ちょうど草が砦を覆った頃魔物たちが山を駆け下り、国境の街を襲ったらしい。

幸い強固な城壁が街を守り、多くの魔物は街に入れずそのまま素通りしたようだが、空を飛ぶ魔物や諦めず城壁にぶつかって来る魔物には対処せねばならず、騎士の被害は甚大。

その上城壁の一部も崩れているという。

街を素通りした多くの魔物は国境を超えて帝国へ行っただろうという事だった。


はぁ…帝国側に被害を出したとなれば…帝国は必ず原因究明と損害賠償を求めるだろう。

そうなれば…我が辺境伯領も何か言いがかりつけられるんだろうな。

しばらくは休みなしか。


いや、そんな愚痴が言えるだけ幸せか。

スタンピードと呼ぶほどの魔物の大群がこの砦を通ったとなると…あの草のドームがなければ俺も、村の人々もひとたまりもなかったはずだ。

確かに…女神だな…


俺は街の被害も確認しなければならないし、女神と謳われる冒険者の3人も気になり、急ぎ街に舞い戻った。


そこでスタンピードの第二報を聞くのだが、それがまた驚くべき事だった。

怪我をした騎士たちの介抱や城壁の修繕を街の人が有志で手伝ってくれている事。

帝国に向かった魔物は帝国領に入ってすぐに全て討伐された事。

その際煙のような壁が見え、魔物が壁の中には入れなかったようだ。

そして…女神改め3人の冒険者は、ちょうどスタンピードがあった頃出国していた事…


もしかして…いや絶対そうだろう。

帝国領で魔物を討伐したのはあの3人だ。

そして、きっと煙のような壁は…テルーの結界だろう。


テルー…これだけの事ができるというのに、何度考えても全く名を聞いたことがない。

村で聞いた話によると、テルーはあのウォービーズの致死性の毒を受けたアイリーン嬢も治癒したらしい。

イヴリンは名実ともに優秀な冒険者だし、アイリーンは村やギルドで尋ねた外見からほぼ100%メンティア侯爵令嬢だろう。

メンティア侯爵令嬢は頭もよく、強い女性だ。

そんな3人が国を出て行った。

冒険者という自由な身分で。


そういえば最近冒険者の出国人数が増えている。

我が国はいつのまにか重大な損失を出しているのではないだろうか。


とりあえず、メンティア侯爵に連絡しよう。

侯爵は娘を政治の道具などではなく、本当に愛していた。

今も秘密裏に探していると聞く。

きっと無事を知れば安心されるだろう。

理不尽な婚約破棄に、理不尽な国外追放だ。

あまりにひどすぎる。

無事を知らせるくらいしかできないが、それが少しでも不安解消になればいい。

ウォービーズに、スタンピード…

我が辺境伯領が受けた恩には、到底及ばないがな。

これにて第二章完結です。

ここまで読んでくださりありがとうございました!


しばらくお休みをいただきまして、その間に現在書き溜めてる第三章を書き終わりたいなと思っております。

お楽しみに♪

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― 新着の感想 ―
[一言] 一気に読めました。面白かったです。 完結になってるの確認して読みはじめて、途中からここで終わってしまうのかと思いながら読んでたんですが続きがあるようなので安心しました。 楽しみに待ってます…
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