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【書籍発売中!】ライブラリアン〜本が読めるだけのスキルは無能ですか!?  作者: 南の月
第二章 逃げる冒険者

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[閑話]女神の奇跡(前編)

俺の名前はギルバート・ベントゥラ。

ベントゥラ辺境伯嫡男であり、学園を卒業した3年前から辺境伯騎士団に入り、今は副騎士団長をしている。

辺境伯というのは、どうしても国防の要だ。

だからこそ、どうしても力…戦う力がないといけない。

そういう理由もあって、領主の息子は皆辺境伯騎士団に入れられる。

基本的には嫡男が領主を務めるが、この騎士団での実績次第では嫡男以外が領主になることもある。

嫡男だからと胡座をかいてはいられない。


全力で騎士団の仕事に取り組んできた俺には今一つ気がかりがある。

毎年要請のあるウォービーズ討伐の依頼が、今年はまだないのだ。

毎年カラヴィン山脈奥地にある砦に住んでいる住人がウォービーズを5匹見た時点で討伐依頼をかけてくる。

依頼が出たらすぐに騎士を引き連れ、討伐に行く。

去年も、一昨年もそうしてきた。

しかし…今年はまだない。


今年は…ちょっと遅すぎないか?

……はっ!!!

あの村の者たちは魔法が使えない。

まさか…討伐依頼を出す前にやられた…?

だから討伐依頼が出てないのか?


考えれば考える程悪い想像が広がっていく。

「ジャック。ウォービーズの討伐依頼まだ出てないか?」


「えぇ。まだ依頼ありません。

今年は遅い…ですねぇ」

ジャックも悪い想像をしてしまったのか顔色が悪くなる。


「流石に遅すぎる。

何かあったのかもしれない。

討伐のために編成していた騎士を連れ明日朝一番に砦に向かう。

皆に準備をするよう言っておいてくれ」


その日は突発的な事件もなかったので、明日から砦に行く分書類仕事を片付ける。

「ギルバート!」


「なんだ。ノックくらいしろジャック。」


「悪い。だが聞いてくれ。

さっきギルドから連絡があった。

ウォービーズは通りすがりの冒険者が退治したそうだ。」


「なんだ。そうだったのか。」

あんな山の中を歩く冒険者がいることに驚いたが、まぁ腕のある冒険者パーティならウォービーズを倒せても不思議ではない。


「だが、ここからがおかしい。

本当かどうかわからないが討伐数は100近いそうだ。」


「なんだと!?例年の比じゃないぞ!

そんな数を討伐できるなんてよほど有名なパーティだろう。

詳しく話を聞きたい。誰だ?」


「それが…」


「どうした?」


「…イヴリンです。

それと…アイリーン、テルーの3人です。」


イヴリンというのは、Aランク冒険者のイヴリンか?

ならば納得だ。

だが、たとえランクAだとしても3人で100匹の討伐なんて無謀だ。

しかも誰だ。アイリーンとテルーとは?

困惑が顔に出ていたのか、ジャックがすかさず資料を渡してくる。


アイリーン(15)…ランクD

資料には過去に受けた依頼一覧が載っている。

活動拠点は王都周辺とメンティア侯爵領か。

ん?15歳で王都とメンティア侯爵領で、アイリーン…

これはもしかしなくても、アイリーン・メンティア侯爵令嬢か!?

卒業パーティーで婚約破棄され、国外追放中に魔物に襲われ死亡なんて噂を聞いたが…生きていたのか。

よかった。

彼女とは1年在学期間が被っていたが、誰かに嫌がらせをするようなタイプには見えなかった。

それに嫌がらせだけで国外追放っていうのもひどすぎると思っていた。

だからもし生きていたのなら本当に良かった。

だとしたらランクはDだが、実力はCまたはBランクレベルか…

きっと王子妃教育などで依頼はあまりこなせなかっただろうからな。


そしてテルー(8)。

依頼達成なし。

ランク判定を受けてドレイト領でEランクに昇格…か。

8歳!?


という事は、実質イヴリンとアイリーンの2人じゃないか。

2人で100匹の討伐なんて無理だろう?

まぁ、いい。結局話を聞きに行かねばわからないんだ。


「明日冒険者3人に話を聞いといてくれるか?

俺は明日朝一番に一部の騎士を連れて、予定通り砦まで行ってくる。

疑う訳ではないが、やはりたった3人100匹を討伐なんて考えられないし、たとえそれが本当だとしても被害は甚大だろう。

現場を一度見てくるよ。

日の出とともに馬を飛ばせば昼にはあちらに着くはずだ。

騎士にもそのように伝えておけ」


翌日日の出とともに馬を走らせ到着した砦は、いつも通りだった。

とりあえず、村は無事のようだな。


困惑しつつも村長の家に行く。

「村長。久しぶりだな。

ウォービーズの時期なのに今年は依頼がないが、問題ないか?」


「ご無沙汰しております。ギルバート副騎士団長。

実は今年は通りすがりの女神様たちがウォービーズを撃退してくれたんですわい。

それで依頼を出していないとです。」


冒険者が女神になっている…


「女神さま…ですか?」


「おぉ!倅がちょうど討伐の時に居合わせましてね。

おーおい!ボビー!ギルバート様にウォービーズの時の話してくれねぇか。」


彼から聞いた話は驚きの連続だった。

後ろで騎士たちもどよめいている。


討伐依頼を出しに行く途中で女神こと3人の冒険者に出会った事。

ウォービーズの危険性を知らせ逃げるよう諭したところで3、40匹のウォービーズに襲われた事。

彼女たちを逃すため前に立ち戦ったが、アイリーンとイヴリンが加勢してくれた事。

一度後退するとテルーが回復をかけてくれ、そのタイミングで横から60匹ほどの大群が押し寄せてきた事。

アイリーンが毒を受けたためテルーの結界まで引き連れて行く間に、テルーが戦いに参加した事。

そのままイヴリンとアルコールに火をつけ全て燃やし尽くして討伐した事。

テルーはなぜか刺されても毒が効かなかった事。

致死性の毒を受けたアイリーンがこの村で療養し、回復した事…


信じられない事ばかりだった。

100匹を実質3人で退治したことも、攻撃が効かなかったことも、聖女しか張れないと言われる結界も、致死性の毒を受けたにもかかわらず回復したことも…


どうなってるんだ?

ボビーはいつも街まで依頼を出しに来てくれる青年でギルバートとも顔見知りだ。

口は悪いが性格は実直で面倒見がいい。

嘘をついているとは思えないが…


その時遠くから何かゴォォと聞きなれない音が聞こえた。

「なんだ…?」

音はどんどん近づいて来る。

騎士にも村の人にも不安と緊張が走る。

なんなんだ…この音は…


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