真相
部屋に帰り、私は横にあるベッドを他所に、地べたに寝転がっていた。地面が近くにあると何故か安心するのだ。毛布をぎゅっと掴む。天井を見つめながら考えているのはレミさんのこと。私は彼女の気持ちも考えずに余計なことをしてしまった。彼女の傷を抉るような真似をしてしまった。大事な人を失う人を失う辛さは私だって理解しているつもりだったのに。私はその気持ちを心の奥底に仕舞い込んでしまっていた。向き合うことができていなかったんだ。でもレミさんは違う。芹那さんと向き合ったからこそ、ああなったのだ。私には何も言う権利はなかった。しゃしゃり出て、レミさんを傷つけてしまった。その事実は私の心に重くのしかかった。もう、どうすればいいかわからない。芹那さんのことを思い浮かべる。芹那さんは、どう思っているのだろうか。レミさんに、立ち直って欲しいと思っているのか。それとも、そのままでいいと思っているのか。考えたってわかることではないけど。レミさんのことも、芹那さんのことも、私はまだまだ知らないことばかりだ。出会ったばかりなのだから当たり前だけど、知りたいと、そう思ってしまった。知る権利なんてないのに。人の気持ちも十分に考えることができない私には。
「...あれ、おかしいな。」
気づけば、涙が溢れ出していた。私に2人の気持ちがわからないように、私の理解者もまた、いないのだ。そんなことを考えていたら。
「すみれちゃん?いる?」
ノックの後に聞こえてきたのは、ルナちゃんの声だ。
「うん。どうしたの?」
なるべく明るい声でといかえす。
「すみれちゃんに、話があるの。」
「わかった。ちょっと待っててね。」
涙を強引に拭う。赤い目は眠かったとでも言って誤魔化そう。私は部屋の扉を開けた。
「......急にごめんね。」
「大丈夫だよ。なんかあったの?」
「私、すみれちゃんに言わなきゃ行けないことがあったの。」
1拍置いて、ルナちゃんは告げた。
「ジェネの体に、芹那さんの人格を送り込んだのは、私なの。」
ルナちゃんは、それだけ言って目を伏せた。私はというと、状況を理解できないまま固まっていた。
「どう言うこと?」
やっと絞り出した言葉に、ルナちゃんは少し考え込んで、言った。
「私はね、お姉ちゃんのことを、すみれちゃんがどうにかしてくれるんじゃないかって思ったの。初めて会った時、そう、直感的に思ったの。すみれちゃんの事情を知ってからは、なおさらね。だから、ジェネを芹那さんにして、すみれちゃんがお姉ちゃんに接触するように仕組んだの。」
息を呑む。まさか、そんな。
「でもね。」
ルナちゃんは続けた。
「お姉ちゃんから聞いたの。『せっかく話しかけてくれたのに、冷たくしてしまった』ってね。ごめんなさい。本当にごめんなさい。すみれちゃんを巻き込んでしまって。これは、私がどうにかしないといけない問題だった。それなのに、勝手に巻き込んで、傷つけて、本当に、ごめんなさい。」
深々と頭を下げるルナちゃん。対して、私は。
「気に、しないで。」
笑みを浮かべて、そういった。レミさんも気にしていたんだ。そう思うと、なんだか可笑しくて。決心がついた。もう亡き家族とも、レミさんとも、ちゃんと向き合おう。レミさんに謝りに行こう。
「直接言ってくれれば良かったのに。私自身、レミさんと仲良くなりたいって思ってたの。」
「ほ、本当?ありがとう。あとね、お姉ちゃんから伝言があるの。『私のために言ってくれた言葉のはわかってる。ごめんなさい。』って。」
そっか。良かった。
「それとね。もう一個。いい?これで最後だから。」
「うん。」
「見て欲しいものがあるの。」
そういってルナちゃんが差し出したのは、黄色の花が描かれた封筒だった。




