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ねこのあかちゃん

きみちゃんとお母さんはお散歩が好きでした。


今日もいつもの散歩コースを、

二人で話しながら歩いていました。


坂の上の公園まで歩いて行くと、

道の脇の草むらから、

かさかさっと音がしました。


覗き込んで見ると、

ねこがいました。

おなかの辺りには産まれたばかりの

3びきの赤ちゃんねこがいました。


お母さんののお腹の周りで、

ふにふにないています。


そっとなでようとすると、

お母さんねこがふーっと毛を逆立てて、

睨んできました。


ごめんごめん、びっくりさせちゃった。

きみちゃんはあわてて手を引っ込めました。


ねこのお母さんは、赤ちゃんねこをおいて逃げていってしまいました。

警戒心が強くなっているようです。


残された3びきの赤ちゃんねこは、

お母さんがいなくなったことには気が付かないのか、

ふにふにないています。

きみちゃんは赤ちゃんねこにそっとふれました。


「ほわー。」


やわらかくて、あったかい。


きみちゃんの頬がぽっと赤くなりました。



あかちゃんねこは、

時々お母さんをさがしているように、

自分の手をなめながら、

お互いにからだをくっつけあっていました。


さっとお母さんねこがきて、

赤ちゃんねこをを咥えて新幹線が通りすぎるくらい速く連れていきました。


「あっ!」

きみちゃんはびっくりして声をあげました。


「わたし、なにもいじわるしないのに。」

きみちゃんは悲しい気持ちになりました。


「お母さんねこは赤ちゃんを守るために一生懸命なのよ。きみこのせいじゃないわ。」


お母さんがきみちゃんに言いました。


「ねこのお母さんは、

どんなに安全な場所が他にあっても、

自分の力でで守りたいのよ。」


きみちゃんはきょとんとしました。


「そっかー危なくないところに行ったんだね。ここ、人がいっぱい通るもんね。誰かがかわいいって連れて帰ったら大変だものね。」


きみちゃんはお母さんの手を握って歩き始めました。


「お母さん、ねえ、あの雲、シュークリームみたいだよ。」


「ほんとだ。そうだ!シュークリーム買って帰ろうか。」


「わーい!シュークリームだ。」


しばらくしてケーキ屋さんから帰ってくるきみちゃんの姿がありました。

シュークリームの入った袋をウキウキ持って歩きながら、

ねこのいなくなった場所をみつめていました。


おかあさんは、そんなきみちゃんの姿をじっと見つめて、微笑んでいました。




ー20数年後。



こねこを見つけて嬉しそうに駆け寄るよちよち歩きの女の子とお母さんがいました。

「ねぇ、お母さんねことこねこちゃんだよ。」


「ほんとだ。こねこちゃん、まだ小さいね。」


「うん、あいとお母さんみたい。」


「そうだね。いつもくっついているもんね。」


「ねえ、お母さんのお母さんは、今どこにいるの?」


お母さんは少し考えるようにして、言いました。


「お母さんのお母さんはすぐ側にいるよ。」


と夕焼け空を指差しながらいいました。


「お母さんのおかーさーん!」


女の子は夕焼けに向かって、叫びました、


「ねこちゃんの赤ちゃんがいるよー!」


ちょうど夕日が沈みかけてキラキラする様子が、あいちゃんに返事をしたようでした。


「さ、今日は久しぶりにシュークリーム作ったから、帰って食べよう。」


「わーい!シュークリーム、だーいすき!!」


あいちゃんはぴょんぴょん跳ねながら家に向かいました。


お母さんの手をぎゆっと握って。




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