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まずは『はじめまして』から

 目が覚めると、真っ白な世界にいた。

 周りには何もない、地面すらもない白い空間に俺は浮いていた。


「ここ、どこだ…?」


 頭がボーッとして、何も思い出せない。

 なぜ、俺はここにいるんだろう?


 駄目だ、わからない。

 だが、そんな中でもはっきりとわかることがあった。

 俺の名前は小泉遥。ーーさっき死んだ。

 ああ、それだけは確かだ。


「はいはーい、こんにちは〜」


 突然、場違いに明るい声が響く。

 声のする方を見ると、少女が立っている。年は16くらいだろうか? 低めの身長に長い黒髪、長すぎて若干幽霊みたいになってる。


「あんた、誰だ? ていうか、ここどこ!? なんで俺こんなとこにいるの!? だって、さっき……」


「はいはいはい、説明しますから、落ち着きなさいな。いいですか?

古今東西、初対面の男女が交わす言葉は決まっているんですよ? あんた誰?でも、ここどこ?でもなく……

まずは、『はじめまして』からです!」


 少女は明るく笑った。人懐っこい、まるで夏の太陽を浴びて輝くひまわりのような笑顔だった。

 ……詩人か。自分で考えててすげー恥ずかしい表現をしてしまった。多分そのうち夜とかに思い出して「うわああああ!」ってなる。


「……で、あんた誰だよ?」

「え〜〜ノリわるーい。そんなんじゃ女の子にモテないゾ☆」


 え、やば、こいつウザ!すげーウザ!

 本能でわかる、こいつウザウザの実を食べた全身ウザウザ人間だ。


「コホン……、自己紹介しましょうか!」


 俺の冷めた視線に気づいたのか、仕切り直すように少女が咳払いをした。その後にウインクして舌を出した。馬鹿にしてんのか。


「実は私、天使なんです!!」

「……はあ?」

 いきなりの天使宣言に言葉を失ってしまう。

 これは、あれか?悪夢か何かか? 何が悲しくてこんな真っ白なところで浮きながら電波女のうざい妄言を聞かなければならんのだ。


「すごい失礼なこと考えてますね〜〜、でも無視します、ええ。私は大人なのでね。

さっき私に聞きましたよね? 私は誰か、その質問には回答しました。では次の質問に答えます。ここは天国……ではなく、なんか、あれです。天国の門の前みたいなとこ。USJでいうでっかい地球儀があるとこです」

「いや、その例えいらんだろ。わかりそうでわからないわ」


 バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド復活してくれ…


「最後の質問にも答えますね? なんであなたがこんなところにいるのか? さっき死んだはずなのに? それはですね……」


 ああ、またこの顔だ。ひまわりのような、例えるのがこっぱずかしくなる、でもそうとしか表現できないこの顔だ。


「あなたの死に方が、余りにも不憫だったからでーす!!わ〜、どんどんぱふぱふ〜!」


 笑顔でなんかひどいこと言われた。

 え、なに、死に方が、不憫? どういうこと?


「えー、つまりですね、さっきあなたは死んだんですけど。その原因がですね、なんか、もう、めっちゃウケるんですけど…プッ…、あの、駅のホームに落ちてたバナナの皮を踏んで滑って線路に転落して轢かれました」

「めっちゃ不憫!!」


 予想の何倍も不憫だった。

 死因バナナの皮とは……


「しかも電車の運転を見合わせたとかで、誰一人あなたの死を悲しみませんでした。むしろ恨まれてました」

「嘘だろ…人が死んでるんだぞ…」

「あ、でもあなたのお母さんは泣いてましたよ。なんか、賠償金?みたいなので」

「親に迷惑はかけたくなかったー!」


 母親を産まれて初めて泣かせてしまった。でも、母さん俺が死んだことにも泣いてくれ……


「まあ、そんなわけで。あまりに不憫な死に方をした人には、神様から救いを授けてやれ、と言われてるんです。

古今東西、可愛そう(笑)な死を迎えて人にはですね、なんと、二度目の人生が与えられることになってるんです! 過去にはボニファティウス8世とかも対象になってますよ」

「憤死した人だ!」


 なんか急展開きた。

 え、なんか急展開きた!!


「えっと、つまり生き返られせてもらえるってこと?」

「んー、まあそうとも言えなくはないです」


 俺の質問に曖昧に答えるウザ天使。

 どうやら単純に復活できるわけではなさそうだ。


「あなたはこれから、転生するのです。異世界にね。おめでとう! 好きでしょ、異世界! 最近流行ってるもんね! 良かったね!」

「なにその投げやりな態度!」

「さあ、準備はOKですか? 始まりますよ、あなたの二度目の物語! 今度は上手くやれるといいですね! 小泉遥さん」


 そう叫ぶと天使は指をパチンと鳴らした。

 瞬間、世界は反転する。

 真っ白なキャンバスにインクを落としたように、色が広がり、それが世界になっていく。


「行きますよ!なに、ちょっと目が回って吐き気を覚えるかもしれませんが、それだけです! すぐに素敵な素敵な異世界生活始まっちゃいますよ!」

「……ちょ、ちょっと待てよ!もうなにがなんだか…!」

「大丈夫ですよ!なんとかなります!…それに、このままでいいんですか? 新しい人生、始めたいでしょ?」

「それは、そうだけど…!」


 ぐるぐる回りながら、周りの風景が変わっていく。そして、やがてそこは見知らぬ草原になった。

てか、落ちてる!?


「やばいやばい!落ちる!?始まってすぐ終わっちゃう!?」

「落ち着きなさい、ヒューマン。天使ちゃんにかかれば、これこの通り」


 天使が指を鳴らすと、落下速度が緩やかになりゆっくりと落ちていく。

 やがて、俺の身体は大した衝撃もなくゆるりと地面に

ついた。


「た、助かった…」

「ふふん、感謝してもいいですよ? というかするべきですよ? ほら、はやくはやく」


 天使が薄い胸を自慢げに張り、そわそわと褒められたがっている。


「ぐ…、癪だが助けられたのは事実だ…ありがとな」

「ふふ、いいってことですよ」


 敗北感!圧倒的、敗北感!

 しかし、本当に異世界に来てしまったようだ。

 いや、これはすごいことだぞ。


「んで、俺はここで一体なにをすればいいんだ?」

「なにをって、そんなの決まってるじゃないですか。生きるんですよ。今度こそ」


なるほど、たしかにその通りだ。

だが…


「生きるっていっても、まだこの世界のことがよく分からないしな… もう少し情報を集めたいところだ」

「まあ、そうですね。敵を知れば百戦危うからず。孫子くんも言ってます」

「いや、友達か」


 とにかく、まずは情報収集だ。

 そういえば、こいついつまでついてくるんだろう。


「なあ、あんたこれからどうするんだ?」

「ん? 私ですか? そりゃあなたの担当ですからね。どこまでもサポートしますよ」


 そういう感じなのね。まあ、知らない土地で1人きりってのも不安だし、ちょうどいいか。


「わかった、よろしくな。えっと…名前なんだっけ?」

「そういえばまだ名乗ってませんでしたね」


 こほん、と咳払いをすると天使は姿勢を正しこちらに向き直る。


「あなたの担当天使となりました、ミリエル・カブニカと申します! どうぞ、お気軽にミリーと呼んでくださいな〜」


 ぺこりと頭を下げた天使……、ミリーはひまわりのように笑った。

 こうして、俺の第二の人生が幕を開けた。願わくば、今度はもう少し生を全うできますように。

キャラクター設定


小泉遥

17歳の男。身長は176cm 体重は60kg

特に特徴のない平凡な高校生だったが、ある日駅のホームに落ちていたバナナの皮で滑って、電車に轢かれてしまう。

あまりに間抜けな最後を哀れに思った神様に異世界での二度目の生を与えられる。

人並みに好奇心旺盛ですけべ。


ミリエル・カブニカ

通称ミリー。女、年齢は不明。

身長148cmくらいの小柄な少女の姿をしている。

黒いロングヘアの美少女。

天使を自称し、不憫な死に方をした遥の担当となる。

貧乳。

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