似た者、同士〜始まり編〜
この作品のみ
どちらのキャラクターも性別を変えて演じて頂いても構いません。ただし、中身はしっかりと読んでからお願いいたします。
竜司:♂ 味噌汁が飲みたい人
愛梨: ♀竜司に呼び出された人
愛梨と竜司は久々に連絡を取り合いBARに来てとりとめのない話をした。そしてーー
竜司「あー、味噌汁が飲みたい」
愛梨「どうしたの?急に」
竜司「急じゃねぇよ……。
毎日思ってんだよ、味噌汁が飲みてぇなーってよ」
愛梨「今時インスタントなんて大量にあるんだから、買って飲めば?」
竜司「そうじゃねぇんだよ!」
愛梨「なに」
竜司「俺は手作りの味噌汁が飲みてぇんだよ!」
愛梨「だから、飲めば?」
竜司「は?」
愛梨「知らないの?今は料理男子が普通なの」
竜司「だから?」
愛梨「クッ○パッドで調べて自分で味噌汁、作りなさいよ」
竜司「だからそうじゃねぇって言ってんだろ」
愛梨「さっきから、なにが言いたいの」
竜司「だーかーらー!
俺は!可愛い女の子が作った!味噌汁が飲みてぇんだよぉ!」
愛梨「だったら彼女でも作って、作ってもらいなさいよ」
竜司「そう簡単に作れないからこうやって嘆いてんだろ」
愛梨「……見た目はそこまで悪くないのに、なんで彼女の1人や2人できないのかね」
竜司「え、俺ってイケメンじゃないの?」
愛梨「ごめん訂正、そんなんだから彼女ができないんだわ」
竜司「だって俺、モデルだよ?
イケメンと言えばの職業、ナンバーワンだよ?」
愛梨「自信過剰乙」
竜司「あーあ、モデルやってれば彼女の1人や2人余裕で釣れて、毎日味噌汁三昧の生活ができると思ったのに……」
愛梨「モデルへの偏見はこの際置いておいて……随分と味噌汁に執着してるね」
竜司「そりゃそうだよ!
可愛い女の子の味噌汁は、可愛い女の子の肉じゃがを抜きん出てナンバーワンの憧れだよ?オンリーワンだよ?お椀だよ?」
愛梨「いや、なにその畳みかけ。
ほんと、漫画の読みすぎじゃない?」
竜司「えーでもー!
やっぱり憧れるじゃん!憧れるよね?ねぇ?」
愛梨「私に言われても……」
竜司「そりゃそうか……」
愛梨「そんなことより、3年ぶりに幼馴染から連絡が来たと思ったらすぐに来いって言われて、しかも素直に来た私になんかないの?」
竜司「暇なんだな」
愛梨「殴る」
竜司「ごくろーさまでぇぇっすー」
愛梨「蹴る!」
竜司「お冷奢るよ」
愛梨「波○拳打つ!」
竜司「打てんのか!」
愛梨「なに、目ぇキラキラ輝かせてんのよ!」
竜司「そりゃ波○拳なんて全男子の憧れだろ!」
愛梨「本当に打てると思ってんの!?」
竜司「本当に打てなきゃ言わねぇだろ!?」
愛梨「ノリだって察してよ!」
竜司「わかるかよ、んなもん!」
愛梨「現実に波○拳打てる人間なんているわけないでしょ!?」
竜司「だから憧れるんだろうが!」
愛梨「知るか!」
竜司「俺の純情返せ!俺の波○拳を返せ!」
愛梨「あなたの波動拳でもないし、あなたに純情なんてものはない!」
竜司「失礼なやつだな!」
愛梨「あなたこそ!」
竜司「昇○拳!!」
愛梨「暴力!暴力反対!」
竜司「ハァ、ハァ………で、なんの話してたんだっけか」
愛梨「……(呼吸を整える)味噌汁でしょ?」
竜司「そうなんだよ、可愛い女の子の味噌汁が飲みてぇんだよ」
愛梨「だから彼女でも作って……」
竜司「またこの不毛な言い争いするか?」
愛梨「さっきのは私に対しての労いの言葉がなかったから起きたんでしょ」
竜司「あれ?そうだっけか?」
愛梨「そう」
間
竜司「……なぁ」
愛梨「なに」
竜司「味噌汁……」
愛梨「うん」
竜司「作って……」
愛梨「うん」
竜司「……くれる可愛い女の子紹介してくんない?」
愛梨「嫌」
竜司「なんだよケチ!
今の流れだったらOKする流れだろうが!」
愛梨「ケチってなに!私だって今の流れなら、私に作ってって言うのかと思ったのに……
それなのに……それなのに……なによ!
あなたなんかに紹介できる女の子なんて1人も居ない!」
竜司「なんで紹介してくんないんだよ!」
愛梨「……はぁ、率直に言ってあげる」
竜司「なんだよ」
愛梨「あなたの性格がクソ過ぎて女の子が不幸になる未来しか見えないの」
竜司「さっきはさらっと流したけどさぁ、酷くねっ!?」
愛梨「だって自分の欲求と他人の見た目にしか興味ないでしょ、あなた」
竜司「そうだけどさ……」
愛梨「ほらー、そうやって肯定しちゃうところ」
竜司「だって事実だし」
愛梨「ほんっとに性格悪い」
竜司「ほっとけ!」
愛梨「……でもね、そんなクソみたいな性格な男を愛してくれそうな人を1人、知ってる」
竜司「本当かっ!?」
愛梨「えぇ」
竜司「何処だ!?何処!」
愛梨「こ・こ」
(自分を指差す)
竜司「は?居ねぇじゃねぇか」
(辺りを見渡す)
愛梨「こ!こ!」
(竜司の頭を両手で掴んで自分に向けさせる)
竜司「あいたたただぁ!何しやがる!」
愛梨「ここだって言ってんのに気付かないのが悪いんでしょ!」
竜司「だって、何処にいんだよそんなやつ!」
愛梨「鈍いわねぇ……わ・た・し!」
竜司「はぁ?……はぁぁっ!?」
愛梨「なによ、その驚き方」
竜司「待て、待て待て待て待て」
愛梨「いつまで待ってればいいのかしら?
もうこっちは3年以上は待ってるのに」
竜司「だっておまっ、そんなそぶり1回も見せたことなかったじゃねぇか」
愛梨「あんな姿で誘惑なんてできる訳ないじゃん!」
竜司「あんな姿って………男ん時の話だろ」
愛梨「そう、男ん時の話。確かにあの姿は両親からの賜り物だし嫌いって訳でもなかった。だけど、あれは私じゃないから」
竜司「いや、私じゃないからって言われてもよ……」
愛梨「あなたに告白する時は、本当の姿になってからって決めてた……。でも、こんなロマンチックのかけらもない告白をすると思わなかったな」
竜司「俺もまさかこんな形で告白されると思わなかったよ」
愛梨「あなたが3年ぶりに連絡して来てくれた時は凄く嬉しかった。
やっと……やっとあなたに告白できると思ったから」
竜司「……引かれるとは、思わなかったのかよ」
愛梨「なんで?あなたは昔っから見た目第一主義でしょ?
今の私の姿を見て引く訳ないじゃない」
竜司「お前も相当なもんだな」
愛梨「うるさい」
竜司「……でも、昔に比べて綺麗になったな」
愛梨「月とスッポンでしょ?」
竜司「お前も、人のこと言えねぇじゃねぇか」
愛梨「ふふっ、そうなのかもね」
竜司「……お前はよ、本当に俺で良いのか?」
愛梨「どうしたの?改まって」
竜司「いや、実際綺麗だし……他の良い男なんてすぐに見つかるだろうし」
愛梨「そうね」
竜司「肯定早いな!」
愛梨「でも、昔は男だった。
……なんて言ったら、みーんな私のこと捨てる」
竜司「そういうもんか」
愛梨「そういうものなの」
竜司「勿体ないな……こんなに綺麗になったのに」
愛梨「……そういうところ」
竜司「なんか言ったか?」
愛梨「なんも言ってない!
……でも私達、お互いによく気付いたよね」
竜司「そうだな……やっぱり幼馴染ってのはすげぇよな」
愛梨「似た者同士……」
竜司「あ?」
愛梨「似た者同士だから……気付けたのかもね」
竜司「お前が自分の欲求と見た目にしか興味ないって?」
愛梨「違う、失礼しちゃうわねえ」
竜司「じゃあなんなんだよ」
愛梨「あなたも………私が知らない間に男になってたじゃない」
竜司「そうだな」
愛梨「お淑やかなお嬢様って、学校では装ってたのにね」
竜司「なんかなー、自分にも他人にも……ガサツになりたかったんだろうなぁ」
愛梨「本当の自分を隠すのに疲れた?」
竜司「それもあるだろうけどよ。面倒くさくなったんだよ。
本当の俺を知らねぇ奴が毎日毎日、俺に告白してくるのが」
愛梨「これだからモテる女ってのは……」
竜司「はんっ、モテてる方も辛いんだよ」
愛梨「の割に、今はどうなのよ」
竜司「それを言うなってんだ」
愛梨「無い物ねだり……よね、本当に」
竜司「自分にないもの、できないものを求めるのが欲求ってやつだろ?」
愛梨「あなたが言うと変に説得力があるわね」
竜司「一番得たかったものを得た俺だから分かるんだよ」
愛梨「味噌汁は?」
竜司「それは別だろうが」
愛梨「作るわよ?可愛くは無いけど、綺麗な女の子が作った味噌汁飲みたいでしょ?」
竜司「飲みたい」
愛梨「ふふっ、そんなはっきり言われたら張り切っちゃう」
竜司「……世の中、めんどうだよなぁ」
愛梨「本当にね」
竜司「もっと皆、素直になればいいのによ」
愛梨「……本当にね」
竜司「帰ろっか」
愛梨「そうね。勿論、タクシーは拾ってくれるのよね?」
竜司「おう、任せとけ。万札振ってアピールしてやるよ」
愛梨「時代錯誤も甚だしいわね」
竜司「うっせ」
愛梨「それじゃあね。明日、味噌汁作りに行くから」
竜司「マジ?よっしゃ、予定空けとくわ」
愛梨「そうしといて」
竜司「そういえば、味噌にも色々種類あるよな」
愛梨「そうね」
竜司「でも、その中でも1番と言えば……」
愛梨「赤味噌よね」
竜司「いや、白味噌だろ」
愛梨「………あんまり似てなかったみたいね」
竜司「そうみたいだな」
愛梨「でも、合わせ味噌にしちゃえばお互い好きな味になるかもね」
竜司「それ、告白か?」
愛梨「はぁ……?バカじゃないの?去り際なんかにしないわよ。
また明日、また明日ね」
竜司「嗚呼。そうだな。また明日。いただきます」
ご利用ありがとうございました。
いつか2人の学生時代の話も書きたいです。
(追伸)
いつかっていつだろう……年月が空きすぎましたね。