感情の概念について
人間ならば誰しもが持っている感情。
今回はその感情という概念について考えてみたいと思います。
みなさんが感情という言葉を聞いたら、まず何を思い浮かべますか?
もしかしたら「喜怒哀楽」という四つの感情を思い浮かべたのではありませんか。
省略せずにいうと「喜び・怒り・哀しみ・楽しい」の四つになります。
四字熟語で覚えやすいですし、誰でも知っている一般的な感情の種類です。
喜怒哀楽の四つ以外にも様々な種類の感情があります。
例えば「嫉妬・不安・恐怖・興奮・不満」などです。
たくさんの感情が存在しますが、大まかな傾向として二つに分類することが出来ます。
それは「ポジティブな感情」と「ネガティブな感情」です。
別の言い方をすれば「良い感情」と「悪い感情」です。
試しに今まで出てきた感情を分類してみましょう。
ポジティブな感情:「喜び」「楽しい」「興奮」
ネガティブな感情:「怒り」「哀しみ」「嫉妬」「不安」「恐怖」「不満」
9個の感情を分類してみました。
振り分けはポジティブな感情が3つ、ネガティブな感情が6つとなりました。
みなさんは上記の分類を見て、何か感じませんか?
明らかにネガティブな感情の方が多いです。
別に私は恣意的に感情を抜き出して、結論を誘導したわけではありません。
念の為に、もっとたくさんの感情を挙げて分類してみましょう。
以下、「感情の一覧」でウェブ検索した44個の感情を分類しました。
『ポジティブな感情』18個
「安心」「感謝」「憧れ」「興奮」「好奇心」「幸福」「幸運」「リラックス」
「名誉」「尊敬」「親近感」「欲望」「勇気」「快感」「満足」「期待」
「優越感」「愛しさ」
『ネガティブな感情』26個
「不安」「冷静」「焦燥」「困惑」「緊張」「責任」「驚愕」「恐怖」
「後悔」「不満」「無念」「嫌悪」「恥」「軽蔑」「嫉妬」「罪悪感」
「殺意」「劣等感」「怨み」「苦しみ」「悲しみ」「怒り」「諦め」「絶望」
「嫌悪」「空虚」
※私個人の主観による分類なので、人によっては若干の誤差が生じる場合があります。
【結論】
ポジティブな感情が18個、ネガティブな感情が26個という結果になりました。
ポジティブな感情よりも、ネガティブな感情の種類の方が〝約1.5倍〟多いということが分かりました。
この結果はなかなか興味深いです。
見る人によって、色々な考察が出来るのではないでしょうか。
もしかしたら、この結果を見て、
「自分がネガティブな性格なのは、ポジティブよりもネガティブな感情の種類の方が多いからだったんだ。納得できた」
と、思った人がいるかもしれません。
上記の感想、間違いではありませんが、私としては本質を捉えてはいないと思います。
みなさんは「対義語」という言葉を知っていますよね。
対義語とは「意味が対照的な言葉。または、意味が反対になっている言葉」です。
分類結果はネガティブな方に偏ってしまいましたが、対義語を探していけば、ポジティブの数とネガティブの数がほぼ同数になると思います。
「焦燥→安らぎ」「嫌悪→愛好」「嫉妬→称賛」「絶望→希望」
「恥→誇り」「罪悪感→達成感」「困惑→納得」「諦め→粘り」
試しに対義語を探して見ました。
完璧な対語ではないものもありますが、これでポジティブに8個プラスされます。
すると、ポジティブの数が26個になります。ネガティブの数と同じになりました。
「なんだ偏ってないじゃないか、騙したのか?」と思った方、ちょっと待ってください。
私は騙す気は、まったくありません。安心してください。
分類結果をもう一度、順を追って考察していきましょう。
1.ネガティブな感情の種類の方が、ポジティブな感情の種類よりも1.5倍多かった。
2.対義語を探していけば、ネガティブとポジティブの数はほぼ同数になる。
3.本来同数であるべきなのに、どうして偏りが出来てしまったのか?
次に考えるべきことは「3」のどうして偏りが出来てしまったのか、です。
偏りが生じてしまうのは、何か理由があるはずです。
その理由を考えて行きましょう。
みなさんの中にはネガティブな感情がなくなって欲しいと思っている方がいるかもしれません。
しかし、それは間違いだと断言します。
ネガティブな感情は、とても重要なのです。
人間にとっては、ポジティブな感情よりもネガティブな感情は高次元なものです。
それではポジティブな感情とネガティブな感情を比較して、特徴を見ていきましょう。
みなさんは、自分がポジティブな気分の時、どうなりますか?
友達と遊んだり運動したり、どこかに行ったりと、体を動かして〝行動的〟になると思います。
それと小さな失敗なら〝全然気にならなく〟なります。
反対にネガティブな気分の時はどうでしょうか?
家でゆっくりしたり、何か考えごとをしたりと、体は動かさず〝思考的〟になると思います。
それと小さな失敗でも〝すごく気にして〟しまいます。
簡単に言えば、ポジティブが行動的。ネガティブが思考的です。
上記の例では、感情が先にあり、その感情によってあとの行動が決まっていますね。
もし反対に行動を先にしたら、感情はどうなるでしょうか?
答えは、同じです。
体を動かしていたらポジティブになり、体を動かしていなかったらネガティブになります。
なぜ体を動かすとポジティブになるのでしょうか?
それは「もっとも基本的な成功体験」だからです。
成功体験とは、目標を決めて達成出来たことをいいます。
「歩く」「走る」など、そんなの出来て当たり前と思っている人は多いでしょう。
しかし、昔を思い出してください。
赤ん坊の頃は「歩く」ことは、物凄く難しかったはずです。
赤ん坊の頃の「歩く」は間違いなく大きな成功体験だと言えます。
大人になり「歩く」ことが大きな成功体験ではなくなりなりましたが、小さな小さな成功体験だということに変わりはないのです。
体を動かし、小さな成功体験を感じることで、だんだんポジティブになっていくのです。
少し話を戻しましょう。
さて、ここで一つの疑問がわきました。
「行動が先か、感情が先か」
「鶏が先か、卵が先か」問題に似ています。
どこが似ているのか、つまり原因と結果が循環している関係になっているのです。
行動 → 感情 卵 → 鶏
↑ ↓ ↑ ↓
感情 ← 行動 鶏 ← 卵
鶏卵問題に答えはありませんが、行動と感情には答えがあります。
答えは「行動」が先で「感情」が後です。
みなさんは、もちろん生物ですよね?
食べ物を食べないと。どうなります?
排泄をしないと、どうなります?
ずっとベットで寝ていたら、どうなります?
生物は、基本的に動かないと死にます。
微生物などには、人間のような感情はありませんが、生きる為に動き回ります。
つまり、まず「行動」がありその後に「感情」が付随する関係になっているのです。
では、感情とは一体なんなのでしょうか?
その答えは「感情とは、感覚から得た情報の評価判断基準」です。
良く分からないと思うので、「歩く」を例にして説明します。
(例1)
歩く→歩けた→気持ち良い→楽しい→もっと歩こう→歩く→歩けた→(以下、繰り返し)
行動→結果 →感覚 →感情 →目標設定 →行動→結果 →(以下、繰り返し)
(例2)
歩く→転んだ→痛い→恐怖→もう歩かない→止まる
行動→結果 →感覚→感情→目標設定 →行動
(例1)は歩くことに成功した時の流れになります。
上手い具合にループして、どんどん歩いていきます。
一方(例2)は歩くことに失敗し転んでしまいました。
そしてループが成立できずに止まってしまいました。
(例1)は歩けたという成功体験から、ポジティブな感情を発生させ、このまま歩き続けようという判断くだしています。
一方(例2)では、転んだという失敗体験から、ネガティブな感情を発生させ、歩くのを止めようという判断をくだしています。
発生した感情によって、次の行動が決定付けられたのです。
(例1)は行動的なままですが、(例2)は思考的に変わります。
・どうして転んだのか? 石があったのか? 靴のサイズがあっていないのか?
・怪我の具合はどうだろう? 消毒が必要か? 助けが必要だろうか?
転んだ方は失敗の原因や怪我の対応、今後の方針など様々なことを考えます。
これはとても大切なことです。
もし失敗の原因を考えなければ、また同じ失敗を繰り返すことになります。
人間が他の生物よりも優れているところは、思考が出来るところにあります。
行動をする前に、思考しリスクを少なくする。もしくは無駄を省き行動を最適化する。
他の生物に真似出来ない思考は、ネガティブな感情の時ほど、よく働きます。
世間でよく耳にするのは「ネガティブは良くない」という言葉です。
それは間違いです。
ネガティブは人間の思考を手助けするとても良いものなのです。
もしネガティブが良くないものとするならば、それはネガティブ過ぎるからです。
ずっと考えてばかりで、行動をしないのは良くありません。
生物の基本は行動です。
全ての思考は行動の為にあると言ってもいいでしょう。
思考をした後には必ず行動をしてください、でなければその思考は無駄になります。
イメージ的には、ポジティブな感情の上に、ネガティブな感情が乗っているものと思ってください。基本はポジティブ(行動)であり、その応用がネガティブ(思考)です。
長くなりましたが、まだ解決出来ていない疑問が残っています。
「44種類の感情をポジティブとネガティブに分類した時、なぜネガティブの方が数が多くなってしまうのか?」
分かりやすくするために、ポジティブを「成功」に、ネガティブを「失敗」に置き換えて説明します。
簡単に言えば「成功」よりも「失敗」の方が重要だからです。
成功した場合は、何も考えずにそのままやり続ければ良いだけです。
一方、失敗した場合は、色々と原因や対策を考えることが必要になります。原因や対策を考える為には、より詳細な情報が必要になります。
より細かい感情の分類をすることで、詳細な情報が収集出来ます。
人は思考するとき、プラスの情報よりもマイナスの情報に注目しがちです。
それは思考が失敗した場面で多く行われるからです。
そしてマイナス要因の排除が、生物としての生存本能だからです。
その為、ネガティブな感情の種類の発見が多くなってしまうのです。
<了>