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世界へと跳び立つ時

こういった転移ものの定番といえば空から落ちたり見知らぬ森の中にいたり見渡す限りの平原があったり薄暗い洞窟の中であったりなどなど散々な使い回しがこの世界の話にもある。


だがしかし、俺のような者は少ないだろう。


何故なら俺は……。


「これ……生き物の体内じゃないか?」


見渡す限りの内臓を思わせるピンク色の壁に、何かを消化したかのような生臭い腐敗臭がし、なおかつ酸性の水溜りがあちらこちらにあるという不思議空間。


魔力と魔石の気配が頭上から感じられるので恐らく大型の魔物の体内であることに間違いは無い。


俺が持っている少ない道具類(魔王との戦いによって消費、あるいは紛失した)の一つに魔導ランプという魔道具が無ければ薄暗いままどこかも分からずにのたれ死んでいただろう。


この周辺にある、白骨化した死体がそれを物語っている。


「早く脱出しないと俺もこの骨の二の舞か。とりあえず使えそうな物が無いか死体や周囲を漁るのは勇者的行動だよな」


過去でも俺は魔王軍によって滅ぼされた村で物が無いか漁ったりした。


そうしないと生き残れなかったというのもあるがそもそもこの世界の勇者は魔王の暗殺者的な意味合いの方が強いので清廉潔白な存在よりも薄汚れたイメージの方が強い。


現実的といえばそれまでだが弱い俺は生き残るために妥協何てしていられないのだ。


日本には死人に口無しなんて言葉があるがこの世界では死人も喋ることもあれば動いたりすることもあるので警戒しながら周囲を探すも小銭くらいしか見つからず、装備品しかり道具しかり大体の物が腐食してボロボロになっていた。


どうやらよほど強力な消化能力のようであり、魔物の皮を使って作る財布が流行していなかったら小銭すら消火していたに違いない。


ひとまずその小銭だけでも見た目より容量がある魔法のポーチの中に入れると俺は魔王からもらった宝箱をその中から取り出した。


「残る希望はこの宝箱だけだな」


現在の俺の手持ちではこの謎生物の体内から脱出するのは非常に難しい。


無傷でなければできることも無い訳では無いが魔物の体内にいるせいか察知系の能力が魔物の魔力でジャミングされてりうようで周辺の状況さえも分からずそんなことをすれば生存率は下がる。


もっと言えば魔物の体内にいるということは周囲は魔物が住むような地形の可能性が高いのだ。


なおかつ俺のメインウェポンである魔王殺しの剣は魔王の魔石に刺したまま戻って来ていない。


「という訳でオープンだ!」


罠なんていうつまらない物をあの魔王がしかけると思わないので遠慮無く開くと金色の光が中から漏れ出して周囲に広がる。


この現象は俺の持っているポーチと同じく見た目より容量がある宝箱の中身を開けた時に起きる現象なので期待が持てる。


光が収まると共に宝箱が消え、中から現れたのはどこか見覚えのある剣と黒いブーツであった。


「【鑑定】」


勇者のスキルを得ると自動で取得するスキルを唱えて早速どういった物か調べてみる。


『名:ワールドトリガー

レア度:世界級

効果:【魔王級殺し】【開示権】【制御権】【封印権】

説明:かつて勇者が上位龍の逆鱗を使って作った魔王殺しの剣に世界を守りし魔王の権能が備わった世界で一本だけの剣。世界の力にアクセスする権限があり、その力の一部を扱うことが出来る。勇者にしか装備できず、勇者しか触れられない』


『名:フリーダム

レア度:神級

効果:【脚力強化】【衝撃吸収】

説明:かつて無数の足を持っていた魔王の足から生まれた靴。装備者の脚力を十倍、百倍、千倍と強化し、なおかつ装備部に受けたあらゆる衝撃を吸収する。剣にその力のほとんどを注ぎ込んだがためにたった二つのスキルをつけるだけで精一杯であったがこのスキルだけそなたは自由を得ることができるであろう』


剣には魔王の力が、靴には魔王の意志が宿っているかのような装備だ。


そしてどうやら剣の方は俺が以前使っていた剣と柄の部分が瓜二つのため、実際に持ってみると手になじみ鞘から僅かに抜いてみると応えるかのように若干光った気がした。


ブーツは今履いている魔王との戦いでボロボロになったものと交換すると独りでにサイズを調整し始めたがこれは効果欄にあるスキル持ちの装備は全部同じことが起きるのでこの世界の理の様な物だ。


どちらも俺のために用意されたかのような装備。


この二つのお蔭で俺は魔王との戦い時以上の戦闘力を手にすることができた。


特に意外かと思うがこの『無限の自由』という名のブーツの方でだ。


実際、俺は世界の力のアクセス権など持っていても使い方が分からないし、使いたいときに使えれば普段は別に必要無いと思っている。


ゆえにその能力のほとんどは死滅すると言ってよいので切れ味のいい剣を持っているに過ぎない。


逆にブーツの方は俺のステータスに非常によくマッチしていた。


「衝撃が吸収されるってことは全力を出して力を込めても反動が来ないってことだ。なおかつ俺は速度だけは魔王に匹敵する」


俺はパッシブスキルはかなりの数を持っているがアクティブスキルは一つしか持っておらず、そのスキルだけで魔王と戦った。


なぜなら魔王は意識内で発動されたアクティブスキルに対して強化されるというチートスキルも持っているからだ。


ゆえに俺は相手が無意識内でのみ発動できるアクティブスキルしか持っていない。


なので俺の力のほとんどは多数のパッシブスキルと速度のみのステータス、そして一個のみのアクティブスキルという偏った力。


「動き出したか」


肉壁がぷるぷると震えると共に壁から胃液のような異臭を放つ酸が滲み出る。


それと共に地面も偏り初めたので寝ている状態から起きあがる状態へと変化しているようだ。


俺は剣を抜き放って頭上である心臓付近にある魔石目がけて掲げると足に力を溜めるためにしゃがみ込む。


さて、脱出を兼ねて魔物の討伐といきますか。


「【脚力強化千倍】【暗殺者の誇り】」


本当は口に出す必要は無いスキル名であるが俺はあえて口に出した。


同時に俺は爆発音と共に弾け飛ぶ。


【衝撃吸収】により、俺の体や足は無事でも足場はそう言う訳にもいかなかったようで跳び立つと同時に爆散してしまったらしい。


痛みと驚愕で魔物の動きが止まったのが分かる。


凄まじい勢いで天井に突き刺さり、肉を裂いて上へと昇っていく。


余りの速さに血が付くことなんて無いし、剣の切れ味が良すぎて抵抗感をあまり感じない。


そして硬質な音が鳴ったかと思ったと同時に俺は光のある世界へと飛び出した。

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