始まり
なんの計画性もなく始めたのでいつ更新になるか.....
「お兄様?今なんと?」
気持ちの良い春の風を受けふわりと舞い上がる白銀の髪を耳にかけると、聞き間違いだと自分の心に訴えながら、血の分け合った兄を見つめ問いかける。
「現実逃避したって変わらないよ?アリス、君は王太子殿下のもとに行ってもらう」
ただ1人の愛する兄は非情にも現実逃避をやめようとしないアリスに鋭い一撃を食らわせた。
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アリス・ラフォティリアは悩んでいた。
「むむむ....」
「お嬢様、そんなに眉間にシワを寄せてはいけません。残念なお顔になりますよ」
「アナ、本当に貴方容赦ないわね。」
「お嬢様に容赦など必要ないかと」
アリスと軽口を叩き合う彼女はアリスの侍女である。
この狭い馬車の中での言い争いは危険な戦争を生むと踏みアリスの方から言い争いを止める。
「はぁ...」
少しの沈黙の後にまたもため息が漏れる。
アリスも分かっていたのだ殿下のもとに出ることは。いつか来るとは思っていたがいざ来るとなると憂鬱である。
アリスの住まうこの国、ライア国はこの世界で1番豊かな国と言っても過言ではないだろう。
そんなライア国には5大貴族というものがあり、アリスの生まれた家はその中の一つである。
赤、青、緑、白、黒と色があり。この色は王家に使えるものの証として尊敬の意を込め家名の前に付けられ、アリスの家、ラフォティリア家は代々「白」を頂戴している。
この色には様々な意味が込められている。
「紅」は武芸に特化した家で、王家に使える王国騎士を輩出し、王の側近や陛下の専属護衛は代々「紅」の当主が務めている。
「蒼」は主に大臣や王国秘書を務める家であり、これも紅と同じように王には代々その年の当主が務めている。
「翠」は王国薬師、医者などの家で薬草に詳しくこれもまた王に使える家の一つである。
「白」は商人、城下町や国全体の物流、貿易などを生業とし、新商品の開発や他の国との橋渡しなどを務める家であり、アリスの生まれた家である。
「黒」はその色の通り暗殺を生業とし、王の影としてスパイなどをしているが王に対しての忠誠心は少なく、「白」に対して尊敬と絶対の忠誠心がある。
そんな5大貴族の中の長女として生まれ、将来は王家に使えると分かっていた。そう、避けられない道である。
断っておくが、アリスは王家を恨んでいるとかそういう事は無い、王家に使えられる事を嬉しく思っており忠誠心もある。が、もっと違う形で王家に貢献したかったと言うだけである。
「お嬢様?またぼうっとして、これから大変なのですから。そのようなことは無くしてくださいね」
「ええ、分かってるわ。これは仕事よ」
そう、呟くアリスだがニヤリと何かを企んだような笑が浮かんでいた。
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ーーーー久しぶりに来たけど相変わらず大きいわね.....それに.....
チラリと広い廊下の端を見ると....
........王妃様の趣味も相変わらずね
キョロキョロしないよう優雅に歩くよう務めながらも目の端に入るアレを見て思わず....という顔をする。
「お嬢様、出てます」
何をとは言わずに隣にいるアナから今日何度目かの注意を受ける。
「ええ、気をつけるわ」
苦笑いしながらもアレを意識しないように素直に注意を受け入れる。
「ラフォティリア様、ここでございます」
前を歩き王宮の案内をしてくれていた執事が立ち止まり、そう言いながらアリスに振り返る。
「ありがとう」
優雅な微笑みを心がけ執事に扉を開けるように促す。
ガチャっ
扉の先にいたのは、優雅にお茶を飲みながら談笑している、見慣れた美少女達の姿であった。
「アリス様、久しぶりでございますね!」
その中の一人が似合わないご令嬢言葉を使いながらアリスに話しかけてくる。
必死に笑いをこらえながらその挨拶に答える。
「ええ、ミリフィア様お元気そうでなによりです」
楽しそうに談笑し始めるアリスとミリフィアの様子を執事は微笑ましそうに眺め
「では、殿下の用意が終わるまでこちらでしばしお待ちください」と扉を閉め、退出したーーー
すると
「ふふふふ」
と可憐な笑い声をあげていたはずのアリスは堪えきれないと言ったように「ぶはぁ」っと年頃の娘にあるまじき破裂音をかましながら笑い始める。
「なによそのアリス様って!私の猫も剥がれるところだったわよ!」
先程とは全く違うアリスの言動に誰も驚くおこなく「ほんとよねぇ」
と皆大笑いである。
「そ、そんなに笑わなくたっていいでしょ!?」
ミリフィアと呼ばれた見事なプラチナブロンドの髪を耳にかけながら心外だと怒る。
そう、これが彼女たち5大貴族の化けの皮が剥がれた姿、見目麗しい5大貴族のご令嬢と評価されている彼女達の本当の姿である。
「久しぶりの再会だけど、みんな変わってないわね」
アリスが嬉しそうにじゃれあっている三人に声をかける。
「久しぶりと言っても一年ぶりぐらいじゃない、人の本質はそんな年月じゃ変わらないわ」
いつもの調子でカトレアが片目を閉じお茶目にきめる。
「ええ、それに私たちのあの誓も変わってないわよ」
ミリフィアが当然!と頷く。
「当たり前よ!私だって早く家に帰りたいんだから、みんなにだって目標があるのだし」
それに同意するようにランカも頷く。
ふふ、みんな心はひとつみたいで安心したわ。
「では、殿下に一発かますわよ!」