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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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コラリスの危機

「しかしそれではおかしくありませんか? こんな風に知能も理性も失ってしまっては人間として意味がないと思うのですが」


メルシュ博士の言葉に、リリアテレサが素直な疑問をぶつける。彼女がそう思うのも当然だ。CLSウイルスが人間の肉体を変質させる為の装置だとするなら、どうして知能や理性まで奪ってしまうのか?。


それに対してメルシュ博士は推測する。


「問題はそこだ。君の言うとおりこれではもはや人間とは呼べない。獣にも劣るただの怪物だ。だからまあ、<失敗作>だと考えるのが現時点では一番しっくりくるな。


ただし、それでも大きな疑問が残る。先ほども言ったとおり、まるで脳そのものを破壊するのが目的であるかのように脳とそっくり入れ替わってしまうというその性質から次に推測されるのは、元々の失敗作をさらに変質させた生物兵器としての可能性だな。


何しろこいつは、ある程度以上の脳を持った生物でしか発症しない。しかも、これが発生して一番困るのは誰だ? 他でもない人間だ。こいつは、人間を狙い撃ちにした生物兵器である可能性もある。


とまあ、単純に考えればそういうことも推測できてしまうのだが、そこまで単純ではないかもしれん。なのでもっとデータが必要だ。という訳で、さらにサンプルを確保したい。そこでリリアテレサくん、CLS患者をちょろっと攫ってきてはもらえないかね?」


メルシュ博士がそう言って振り返ると、そこにはコラリスとは別の中年女性らしきCLS患者に噛り付かれているリリアテレサがいた。メルシュ博士達を見つけて、食う為にどこからかやってきたというところか。


「ははは! 何たる僥倖! でかしたリリアテレサくん!」


そう言った博士だったが、今度はまた別のCLS患者が自分に近付いてきた。中学生か高校生くらいの少年のCLS患者だった。相変わらず全裸だった彼女の方が確かに美味そうには見えるのだろう。ちなみに彼女が全裸なのは、あまりに非力な体であるため、服を身に着けるのも負担に感じるという理由もあった。もちろん十歳児並みの力しかないとはいえ実際には十歳児でも服を着てそれを重いとは普通は言わないので気にしなければいい筈なのだが、彼女にとっては気になるらしい。服の重さに煩わされるのが嫌なのだ。


だが、それはどうでもいい。この時、さらに別のCLS患者が現れ、今度はコラリスに向かって近付いてきた。がっしりとした体格の若い成人男性のCLS患者だった。見た目が普通の人間と変わらなくなったことで、CLS患者に食料であると認識されてしまったものと思われた。


「おお、これはいかん! コラリスを守らねば!」


せっかくの貴重なサンプルを食べられては適わんと、メルシュ博士はコラリスを庇おうとした。しかしCLS患者に掴みかかられ、その場に倒れ伏してしまったのだった。



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