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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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災禍

「やはり、起こってしまったか。まあこういう事態は十分に想定できたが、まさかここまでとはね」


ニオラ・フォーマリティに続き同居していたアデーレ・ヴァルゴまでもが死亡した診療所に、アリスマリアHの姿があった。ノーラAE86Jだけでは対処しきれないということで出てきたのである。しかしその時には既に、診療所のベッドは満床で、テーブルの上にマットレスを敷いて簡易のベッドにしている始末だった。


「ワクチンの生成は既に行っている。後は完成を待つだけだが、さて、それまでに何人死ぬかな…」


まるで他人事のように呟く博士の前に、新しい患者が搬送されてきた。ゆるくウェーブした金髪の少女、サーシャだった。サーシャまでもが発症してしまったのだ。そんな少女の後を、コゼット2CV(ドゥセボー)が心配そうについていく。


「おやおや、サーシャ嬢までが発症してしまったか。これは困ったね」


困ったねと言いながらその顔は少しも困っているようには見えなかった。


「博士、このままでは…」


ノーラAE86Jが切羽詰まった表情で博士に声を掛ける。


「ファノーラくん。こればかりは焦ってもどうにもならないよ。後はワクチンが出来上がるのを待つしかない。それまで患者達を何とかもたせてくれたまえ。それが君達の役目だよ」


この時、診療所にはファノーラと呼ばれたノーラAE86Jの外にも、医療関係のデータをアップデートされたメイトギア達が医療スタッフとして患者達に懸命な治療を施していた。


実は、メイトギアは救急措置はできるのだが、人間ではないので当然のことながら医師免許は持っておらず、本来なら医療行為は行えない筈だった。しかし今のリヴィアターネには法律と呼べるものがなく、他に医療機関もないので救急措置の一環として拡大解釈する形で医療行為を行うようになっていた。しかしこの辺りも、メルシュ博士の技術をもってすれば改造してしまえるものである。と言えどもそればかりに手間をかけていられなかったので後回しにしていたのだった。


それにしても、どうしてこんなことになってしまったのか?


これは、ここにいる者達がCLSの不顕性感染者であるが故の事態である。メルシュ博士は既にこの事態の原因を把握していた。CLSの発症を抑えてくれる遺伝子の活性化は、逆に、エーレントラウト麻疹の原因であるEMウイルスを激しく活性化させ、強毒性のウイルスに変化させてしまうということが分かったのである。


こういうことが起こりうるのも予測はできていたし、予め劇症化することが判明していた疾病についてはワクチン接種を行っていた。しかしそれでも、まだ発症例のなかったものについては全てを把握するには至っていなかったのであった。



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