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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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心を持つ者と持たぬ者

『…誰?』


メイトギアには男性型のそれもあるのは知っていた。映像でなら何度か見たことはある。けれど、男性型のメイトギアの外見は、執事服を模したものだった筈だ。なのにそこに佇んでいる少年の服装は、Tシャツにジーンズと、およそロボットらしからぬ服装であったのだった。


「サーシャ。彼は人間です。あなたと同じ。クローンでもデザインベビーでもない、純粋な人間です」


タリアP55SIが穏やかな感じで言う。それはどこか誇らしげな印象もあった。自分が探し出した人間を紹介できることを誇っているのだと思われた。だが、サーシャの受け取り方はそうではなかった。


『人間…人間って……!』


目の前にいるのは確かに人間に見える。だが、自分を攫ってきたメイトギアが傷付けたゴードンのどこがこの少年と違うと言うのか? 姿形は多少違うかも知れなくても、ゴードンにも確かに赤い血が流れていた。自分はこの目で見たのだ。サーシャはそれが納得いかなかった。そのつぶらな目から、また大粒の涙が溢れる。


「人間人間ってあなたたちは言うけど、あなた達が傷付けたゴードンだって人間よ!? 私やこの人と同じ人間なんだよ!? 私、あなたたちを許さない!」


拳を握り締め、体を震わせながらサーシャは叫んだ。


すると、そんなサーシャをしばらく黙って見ていた少年が、静かに口を開いた。


「お前達が、悪い科学者に捕まってる女の子がいるって言うから俺はお前達についてきたけど、何だよこれ? どう見たってお前達の方が悪者だろ?」


少年はそう言いながらサーシャの前に歩み出た。


「ごめんな。お前の友達が怪我したのか。だったら俺もこいつらのことが許せない。お前の家に戻ろう。こいつらの言うことなんて聞かなくていいよ」


『…え……?』


少年の思いがけない言葉に、タリアP55SIをはじめその場にいた全てのメイトギアの動きが止まった。そしてサーシャは少年の目を見て、少年はそんなサーシャに頷いた。


サーシャはキッと目に力を込めて、腹の底から声を発した。


「私サーシャが、人間として命令します! 私達を今すぐ開放しなさい!!」


それを受けて少年も声を上げた。


「俺からも命令する! 俺達を解放しろ!!」


その強い意志と明確な意図を持った命令は、人間に従うことこそが存在意義であるタリアP55SIらメイトギアのメインフレームそのものに叩き付けるかのように打ち込まれた。さらにそこに、


「あなたたちのしていることは略取誘拐です。直ちに私の娘を返してください」


と、激しくはないが毅然とした声も届いてきた。ハッとその声の方に振り返ったサーシャの顔にみるみる笑顔が戻る。


そこには、コゼット2CV(ドゥセボー)の姿があったのだった。



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