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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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研究の成果

CLSウイルスが人工的に生み出された生物兵器であるということは確定した情報ではない。単に、その成り立ちや生物に対する攻撃性やあらゆる種類の薬剤に対しても防衛手段を持つという、自然発生したものとしてはあり得ない能力を持つことから、そうでなければ説明がつかないということでそのように推測されているだけである。


このことについては総合政府も既に把握しており、やはりワクチンの開発よりも封鎖政策の方が有効であると結論付けていた。


また、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士がリヴィアターネで人道に反した実験を行っていることも承知はしていたが、リヴィアターネ内で行っている限りは敢えて見て見ぬふりをしておこうということで意志の統一が図られていた。


何しろ博士が、無償かつ無制限にアクセスできるように<アリスマリアの閃き号>内のサーバーで公開している研究結果は、他のどの研究者のそれよりも緻密かつ踏み込んだ内容であり、医学的・科学的に見てもその価値は計り知れないものであったからだ。


メルシュ博士は確かにどうしようもない狂人ではあるが、その一方で、権力志向を一切持たない人物であり、政府に対する反逆や国家転覆を望む種類の人物ではないということも、要注意人物として徹底的にマークされ調査され分析が行われてきたからこそ明確に判明していたし、おかしな話ではあるが、そういう部分では強固な信頼も得ていたのだった。


そして、博士が公開したデータに着想を得て、新薬や新商品も続々と開発されたりもしていたのである。CLS程ではないが危険な感染症として恐れられていた別の病に対する治療薬が生み出され、体内の臓器の役割に干渉したり自らが代行したりするCLSウイルスのメカニズムを応用した内臓疾患の新しい治療薬やナノマシンのプログラムなどが生み出されたりもしていた。さらには、より緻密に妊娠をサポートし胎児を健やかに育てるシステムの開発にも貢献した。


また、さすがに倫理的に問題があるとして内容自体は総合政府の管理下には置かれたが、メイトギア人間に心が発生するかどうかという部分の研究データにより人間の<心>というものへの研究もさらに進んだのも事実である。それは同時に、やはりロボットに心は必要ない、機械的にそれを再現しようとするのはコストを無駄に増やすだけでしかないという事実を補足する結果も生んだという一面もあったが。


こうしてメルシュ博士の研究は、黙認という形ではあるが総合政府のある種のお墨付きをもらうこととなり、より一層、彼女が研究に没頭する環境を生み出すことになったのであった。



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