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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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アリスマリアの閃き号

「レイバーギアを三十体下してくれ」


アリスマリアHは、リヴィアターネの上空百キロに静止衛星として固定された個人宇宙船<アリスマリアの閃き号>にそう命じた。


<アリスマリアの閃き号>は、それ自体が自律行動が可能な一つのロボットだった。強力な武装こそ施していないが、かつてこのリヴィアターネを封鎖し爆撃した軍のロボット戦闘艦と基本構造は同じである。何しろ、現在のロボット戦闘艦の基本設計は、メルシュ博士の手によるものだったのだから。


火器については門外漢だったものの、ロボット戦闘艦やロボット宇宙船の本体である非常に高度なアルゴリズムを駆使し自律行動を行う人工頭脳というのは、彼女の得意分野の一つだったのである。それを用いて作られたのが、現在の彼女自身である人工頭脳という訳だ。実は、ロボット戦闘艦用の人工頭脳の開発は、自身の意識と記憶を完全に移すことができる人工頭脳開発の為の技術の検証という意味もあった。軍はまんまとそれに利用されてしまったということだ。


もっとも、それで軍に何か不利益があったかと言えば何もない。メルシュ博士はそのことで軍に対して何らかの策謀を巡らせた訳でもないしそんな意図もさらさらなかったので、互いに利益を得ただけだった。そもそも軍に対しても何の興味もなかった。ただ丁度、技術検証の必要性を感じていたところに軍からのロボット戦闘艦用の人工知能開発の依頼が舞い込んだからそれに乗っただけに過ぎなかった。


メルシュ博士は、サイコパスで人間味の欠片も持ち合わせない最低のクソ外道だが、陰謀の類には関心を持っていなかったのだ。ただただ研究と実験が大好きな生粋の科学者であり技術者なのであった。


故に、非常に貴重なCLSの不顕性感染者であるサーシャについても、単に実験をしてみたかっただけだった。このリヴィアターネで生きることが可能な数少ない人間がどのようにしてここで生きていくのかという遠大な実験を。


その日の夕方には、コゼット2CVドゥセボーとサーシャが生活の拠点としていた郊外型の複合商業施設に、リルフィーナを使者として派遣。この商業施設を中心として一つの町を建設。他の不顕性感染者が見付かれば迎え入れて新しく<人間>が住める場所を構築しようと提案させたのだった。


「そんなことが可能なのか…?」


半信半疑なコゼット2CVと比べ、サーシャは、


「すごぉい、町ができるの!?」


と目をキラキラとさせて身を乗り出していたのだった。



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