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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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噛み付きプレイ

「はっはっは! 元気があって大変よろしい!」


自分の肩に食らいついている、CLS患者と化した<人間としての自分>の様子に、メルシュ博士は満足そうにそう声を上げた。


が、体重をかけて寄りかかられるとそれを支えきれず、地面に倒れ込んでしまう。このロボットとしての体は、ロボットであるにも拘らず非常に力が弱いのだ。生身の人間の十歳児並みの力しかなかった。だから大人に寄りかかられてはひとたまりもなかったのである。


と言うのも、彼女がインターフェイスとして利用しているそのロボットは、<ラブドール>という種類のロボットで、要するに人間の性的欲求を受け止める為だけに作られたロボットなのだった。つまり、人間が最も無防備な状態で、かつ激しい情動をぶつけてくるままに接しなければならないので、万が一にも人間に怪我をさせたりしないようにと意図的に出力が制限されているというわけだ。


それでいて、さまざまな性癖や特殊なプレイにも対応し、かつ簡単には壊れないようにする為に丈夫には作られている。地面に押し倒されたくらいでは傷もつかないのだった。


白衣をまとった女性が、同じ顔をした全裸の女性を地面に押し倒しその体に何度も噛み付くというシュールな光景に、メイトギアであるリリアテレサは呆れたように冷たい視線を向けていた。


「それはいったい、どういうプレイなのですか? 博士」


明らかに侮蔑を込めた問い掛けにメルシュ博士は、CLS患者と化した自分自身に乳房に歯を立てられながらピクリピクリと反応しつつ、


「はっはっは、これも研究の一環だよ君ぃ。CLS患者の生態を観察するというね。あんっ」


と応えた。そして時折、強い刺激に甘い声を漏らす。


彼女がインターフェイスに使っているこの体は、市販のラブドールをベースに独自の改造を加えたものだった。より人間に近い感覚を得る為に五感センサーの働きをするナノマシンを体表面に大量に増設。実にベース機の十倍を超えるセンサーを備えていたのだった。通常の市販品ではそこまですると利益が出ないので、あとはソフトウェア側の反応で補っていた。人間の相手をするだけであり、ラブドール自身は快楽に溺れたりする必要がない為、本来はそれで十分だったのだ。


が、メルシュ博士はそれを自分の体として使う為に、人間の感覚を再現する必要があったという訳だ。自分が人間であるということを忘れない為にも。でなければ、肉体側からのフィードバックによって人間は自分が人間であるという事実を常に意識しているという部分が失われ、時間の経過と共に人間としての感覚が失われてしまうのである。そしてそれはやがて人間性の喪失にも繋がり、人の心を解さない怪物になってしまう可能性があったのだった。


彼女としては自分が怪物になるのは別に構わなかったが、研究に対する意欲が失われては元も子もないので、自分が人間であるということを忘れないようにしたいというのがあったのである。



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