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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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コルゼン

しかし、自らの体を顧みないほどの力を振るうことができない代わりに、メルシュ博士のクローンでCLSに感染・発症した状態のまま何も手を加えず経過観察しているコルゼンの体は部分的に壊死が見られた。進行の速度はそれほどではないものの壊死した部分は時間を追うごとに増えているのは確かだった。このまま壊死が進行することでいずれ機能を失うことになるのか、コルゼンについてはそういう部分も重要な観察目的になっている。


クローンなのだから見た目は確実に自分自身なのに、メルシュ博士はコルゼンの体が醜く崩れていくことを何とも思っていないようだった。むしろ嬉々としてその変化を楽しんでいる様子さえある。


「さ~て、どこまでもつのかなあ?」


いつまで持ち堪えられるのか楽しみで仕方ないらしい。データが不足しているので正確さでは精々二十パーセントというところらしいが、およそ四十年くらいという、仮の結果は出ている。一方で、コルヴィアやコルセプトのように体が小さな子供は壊死が見られない為、二百年くらいは生きる可能性があるという結果も出ていた。それを実際に観察するのが目的だった。


なお、メルシュ博士自身は現在、八十歳を超えている。と言っても、一般的な肉体年齢で言えば二十一世紀頃の三十を過ぎたばかりの妙齢の女性と同じであるが。実際、この時代の人間の感覚としては八十代などまだまだ小娘と言われることもある年齢だ。しかも彼女の場合、老化抑制技術の実験に自らの体を用いていたこともあり、彼女自身の実質的な肉体年齢は二十代前半だった。少女と言っても差し支えないレベルである。


実は、彼女が服役した違法な人体実験の罪状の全てが、この老化抑制技術に関するものである。その半数が、実験に供された人間自身の希望によるもので、残りの半数は自分自身の体を使ったものだった。その上、実験のすべては実際に効果を上げて被験者を喜ばせ、彼女自身もそれによって若々しい肉体を保っていたという訳だ。


もとより徹底したシミュレーションの結果、安全性は確認された上で行われたものであり、その辺りが情状酌量の根拠となり、どれも五年以下の短期かつ、仮釈放によって三年以内で出てきている。さすがに最後に受けた判決では常習性を考慮してそれまでで最も長い五年の判決を受けたが。


正式な承認を得ずに勝手に行われたことが違法な人体実験として罪に問われたものであり、この辺りは医療行政が抱える問題として長年懸案とされてきたものでもあった。承認に時間がかかるのだ。時間がかかるから金もかかる。だからそれを疎む人間は後を絶たなかったのである。さりとて、万が一を考えれば安易に承認できないというのも事実なのだが。


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