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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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CLS患者収容棟完成

メルシュ博士の研究棟は、CLS患者を処置するロボットを配置する為に用意された拠点のうちの三つのほぼ中心に位置していた。つまり少なくともあと二体のロボットと挨拶をしなければいけいないということだ。


ロボットの拠点としているそれは、主に軍用の作戦指揮車にメンテナンス用のコンテナ車を連結したものである。人間のような居住スペースは必要ないのでそれで十分だったのだ。これらは、惑星リヴィアターネを封鎖したロボット艦隊による大規模爆撃の後、地上の様子を確認する為に降下した軍用レイバーギアによって、爆撃を受けてもなお処置しきれなかったCLS患者が多数いることが確認されたことにより、破壊を免れた軍の施設や民間の施設から必要なものを徴発、リヴィアターネ全土、数千か所に設置されたものであった。


正直な話、それはあまり正確な調査に基づいて行われたものではなかったので、CLS患者の分布の偏り等の実情にはそぐわない面も多くあったのだが、既に惑星としての利用は諦めていた為にその辺りの不都合はさほど考慮されることもなかったのである。


ちなみに、博士が降下した地点は比較的CLS患者が多く存在する地域だと言えるだろう。その点においてもさすがにいい場所を引き当てるとも言えた。


そしてリルフィーナは隣接する拠点に配置された他のメイトギア二体とも挨拶を交わして自身の担当地区を確定させ、極力干渉を排除することに成功した。その後は地形や住居跡の把握、そこに残された資材や機材の確認等を済まし、二日後に研究棟まで戻ってきたのだった。


「おお、おかえり、リルフィーナくん。ご苦労だったね。それではメンテナンスを受けてゆっくり休んでくれたまえ。その後はまた働いてもらわなければいけないからね」


「承知いたしました」


博士の言葉を受けて、リルフィーナはメンテナンスルームへと姿を消した。入れ替わるようにリリアテレサが現れ、


「CLS患者収容棟の設置、完了しました」


と報告する。新たに降下させた資材を使い、レイバーギアが建てたそれは、研究棟と同じくプレハブ風の簡易な建築物だった。中は五つの部屋に区切られ、それぞれにCLS患者を収容することができるようになっていた。まあ、仮設の集合住宅のようなものである。


そこにさっそく、コラリスとコラダムが収容されていた。さすがに物置を改築した小屋にいつまでも置いておかなかったということだ。観察するにしても不便だったし。その点、ここは廊下に面した壁が透明な樹脂でできており、中の様子も一目で確認できるのだった。

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