朽葉
なんでも言い合えると思った
だけど秘密がどんどん膨れ上がっていく
風船のようにパチンと割れる
それは時間の問題だった。
部屋でゴロゴロしていたら素子の学校の私と共通の友人からメールが届いた。「真由、おひさしぶり!!よかったら一緒に新しくオープンした喫茶店に15時に行かない?」すかさず返信をする。「おひさしぶり!!OK。15時に間に合わせるね。」携帯をしまいメイクを始める。まずはクマを隠す、次にニキビ、それが終わったらファンデーションと一番好きなアイメイクをしていく。口紅はワインレッドにする。お気に入りのピアスを付ける。木炭デッサンで汚れた指を隠すためにマニキュアをする。茶色のセミロングの髪をハーフアップする。幾何学模様のバレッタを付ける。時計は入学祝いにもらったSKAGENの細身の時計。グレーのニットにネックレス、ベージュのトレンチコート、スキニージーンズ、キレイ目のとんがりパンプス、武装は完璧。待ち合わせの5分前に喫茶店につく。久しぶりに会う友人とはすぐに話すことができた。「真由カッコイイ。やっぱり芸術系の学校だと私服もおしゃれなんだね」「校則もゆるいからおしゃれな先輩や同級生が多くて大変だよ」思わずため息をつく。「素子の彼氏の事を知っている?」目が点になる。「素子に彼氏…」言葉が出てこない。思わず頭が真っ白になる。しかし答えは私が想定した最悪の答えではなかった。「茶道部の二年生の先輩なんだけど。」「いつから付き合っているの?」友達は息を荒げる。「文化祭の前夜祭の時に先輩から告白されたんだって。」友人曰く、素子の学校の文化祭の前夜祭は告白の場であるそうだ。生まれたカップルは数えきれない。ただし、続くカップルも多くはない。素子の携帯の『A』 は文化祭後から現れた。今が一番楽しいし、幸せなときだ。ため息を着く。素子に一番近くにいると思っていた私は素子のことを知らなかった。やはり『恋愛』は姉妹の仲をつなぐためにはタブーな存在だったのだ。友人は『A』について語っていく。知れば知るほど私達の距離は遠くなっていく。可愛らしいマキアートアートが崩れていく。それがまるで私達を映し出しているようだった。
素子にお土産でクッキーを買っていく。コーヒーが飲めない素子に紅茶を入れる。それが戦の始まりだ。「素子、率直に聞くね。携帯の『A』は素子の彼氏の吉永英二さん?」素子の手が震える。零れそうになった紅茶のカップを必死に抑える。素子は顔を赤らめる。答えはイエス。入学時のオリエンテーションの時に独りぼっちになった時に吉永英二に話しかけられ茶道部だけではなく、美術部や文芸部なども案内してもらったのが最初だった。それでも茶道部に入ったのは顧問として田子がいたこともあったが最後の決め手は吉永が茶道部にいたからだ。他の1年生部員も皆最初のうちはぎこちなかったが次第に仲良くなれた。素子は器用な方ではない。だけど、与えられたことはきちんとやってみせる。吉永が書いた茶道の手順書を何度も何度もぼろぼろになるまで読み込んで文化祭では上級生のサポートに就けた。「今日の美術館も吉永さんと二人でいったの?」素子が珍しく怒った目をする。「そこまで真由に干渉される筋合いはないよ。もう、私は高校生なんだよ」売られた喧嘩を買う。「だったら携帯に恋人の名前ぐらい本名で入れろ。」その次の日から素子は私が起きてくる前に学校に行くようになった。お互い学校での話をすることはなかった。素子は私と共通の友達とも「志望校のランクを上げたからこれから勉強しないと間に合わない」と言って距離を取り始めた。素子にとって客観的に見れば独り立ちできたのは良いことだったが着実に友達を減らしていった。素子は吉永英二とは部活が終わった後に学校の図書館で勉強をするというのが日常になっていった。冬が終わりに近づいた時に私達の冷戦も終わった。素子から茶道部の定例のお茶会に誘われた。田子も来るということでその誘いをありがたく受け取った。素子が安心の笑みを浮かべた。その微笑みをみて私も笑った。久しぶりに二人で喫茶店に行って生クリームがたっぷり入ったココアを飲んだ。「甘いね」「心にしみるね」「心って?」素子それは恋心だよ。(続)
今晩は連続投稿です。
寝付けない夜が周期的にやってきます。
素子の独立が無事にできてよかったです。
後は真由と田子だけです。
最終イベントまでもう少しです。
BGM:元気ロケッツ
眠れない秋の夜
2017/9/13
長谷川真美




