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時色

一人になって一足飛びに大人になった気がしたのに。

あなたが恋しい。

こんな思いをするとは思わなかった。

秋風が恋を運んでいく。

 青木真由(あおき まゆ)と青木素子(あおき もとこ)は一卵性双生児だ。真由(まゆ)は双子の妹だがなぜか姉である素子(もとこ)は妹である私にベッタリとしていた。髪型、洋服、友人、部活と思い当たることは全て一緒にしていた。両親からは「真由は社交的だから引っ込み思案の素子の面倒をみなさい」と言われている始末だ。だから中学までは全部一緒であることが空気のようだった。高校進学時にはっきり進路が別れた。私は美術部の顧問の勧めで私立高校の芸術科の美術専攻に進学した。素子も一緒の進路を選ぼうとしたが入試で実技が不合格だった。そして、公立の進学校に進学した。高校に入学し、一足飛びに大人になれた気がした。携帯電話を持ち、髪を茶色にし、ファッション雑誌を買って制服の崩し方やメイクを覚えた。最初は素子がいない事に慣れなかったが好きな事の勉強と新しいクラスメイト、友人、先輩との出会いで高校生活は楽しかった。素子も4月の始めは不安げだったが素子が初めて自分自身で決めた茶道部に入り、同じ中学校出身の仲間のおかげで友人もでき、楽しい日常を過ごしているようだった。


 二人の間でお互いの学校生活を語っていく。何でも語っていたが一つだけ話していないことがあった。恋愛。友人となら語り合えることを素子には話せなかった。しかし、私は言葉通り恋に落ちた。その相手は素子のクラスの教師三年目の副担任の数学教師の田子譲(たご ゆずる)だった。きっかけは素子の学校の文化祭だった。素子の学校は歴史と文化がある学校で行事に力を入れていた。新聞の地方版に載るぐらいだ。素子は学校生活を楽しそうに話しているがやはり中学卒業までは一番の保護者だった私は素子の事が心配になって素子の学校の文化祭に行ってみた。銀杏の葉の黄色の絨毯で彩られた学校は前夜祭によって引き上げられた雰囲気のためか早くも熱気で溢れていた。朝一で訪れたため準備に勤しむ生徒が多かった。素子のクラス企画のフリーマーケットも準備中だった。風が強く吹く。その風が私の恋を呼ぶとは思わなかった。


 風によって素子のクラスのメインの看板に近くにおいてあった絵の具のバケツがぶつかった。完成していた看板が一瞬にしてバケツの中に満たされていた青い絵の具の色に無様に塗りつぶされた。生徒たちは一瞬言葉を失った。時間が経つにつれ動揺が広がっていく。生徒たちをフォローする役目である田子は真っ白な顔面で言葉にならない言葉を生徒たちにかけていた。素子が真由を見つめる。その目は昔から変わらない。決意する。「素子、黄色のアクリル絵の具を持ってきて」固まっていた素子が慌てて指示に従う。私は一発書きで黄色の銀杏を書き上げた。それは空の青と銀杏の黄の秋の風景だった。最初に田子が言葉を発する。「間に合う。大丈夫だ。神の助けだ」笑顔と泣き顔が混じったクシャクシャの顔だった。田子は真由に握手を求めた。10歳も違う男性の初めて見るストレートな感情の露吐にやられた。恋に落ちた。そんな自分を認めるのが恥ずかしくて表情を抑えて田子と握手をする。男性らしいゴツゴツとした大きな温かい手。ずっとずっと握っていたかった。(続)


久しぶりの連載作品です。

双子物です。

ラストシーンがまだ固まっていないので真由の恋愛は前途多難です^^;

基本恋愛強めでお送りする予定です。

最後までおつきあいくださると幸いです。


2017年9月8日

BGM:ALL TIME SINGLES ポルノグラフィティ

秋を感じる肌寒い夜


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