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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
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魔眼の少女


 結衣は、行政区画にある参謀本部へ呼ばれていた。

 石造りの三階建ての大きな建物に入ると、戦場でテイス将軍の傍らにいた従者が待っており、何のチェックもなく中へ通された。


 コンコンコン!

「ユイ百人長をお連れいたしました。」

「入れ」


 扉を開け中に入ると、広々とした執務室の奥にテイス将軍が座っており、その手前には事務処理をしているだろう従者が、書類と格闘していた。


「戦が終わったあとは、書類との戦いが待っているんじゃよ。兵士の給与や食料から弓矢などの消耗品まで、全て精算しにゃならんのだ。」


「兵士は戦っているだけですが、色々大変ですね。」

「もちろん、命を懸けて戦っている兵士の為に、やっておるんじゃが、中には物資を横流しする輩もおるんでの~ ユイもそんなことするなよ」

「しませんよ。絶対!」

「冗談じゃよ、今日来て貰ったのは、これを渡す為だ」


 テイス将軍が引き出しから金属片を取り出し、結衣へ手渡した。

「なんですかこれ?」

「国王軍の認識票じゃ」

「にんしきひょう?」

「お前の身分を証明するもんじゃよ。それにこれからは給料は手渡しじゃなく、その番号に振り込まれるんじゃ」

「キャッシュカードみたいなもんか」

「なんじゃそのきゃっしゅなんとかってのは?」

「ああ、何でもありません。」

「王国内なら、どこの軍経理部へ行っても金は下ろせるから、大金を持って戦場に行かんでも大丈夫だ」


「なるほど、便利ですね。」

「身寄りのいないお前の場合、戦死したら、軍に没収されるがな……」

「……そうですか、戦死しないようにします。」

「これからは常時首から下げておくんじゃよ。」

「解りました。」



 参謀本部を出て宿舎へと戻る結衣


 しかし、行政区画は石造りの同じような建物が立ち並び、迷ってしまいそうであった。同じ建物であれば、材料も作り方も同じだから効率的に作れるのは解るが面白味がない。


 暫く歩き行政区画を抜けると、天日干しレンガで作られた建物に変わった。そこは生活感が漂う住宅街のようであった。

 軒先には洗濯物が万国旗のように干されており、井戸の周りでは、女達が洗濯しながら、おちゃべりをし、その周りでは子供達がべちょべちょになりながら仔犬のように遊んでいる。


「こういうのは、どんな世界でも変わらないのね」

 結衣は、その微笑ましい光景を見て何故か安心した。


 住宅街を抜けると、何かいい匂いがしてきた。果物や野菜を売る店が並び、その周りには屋台で何かを焼いている。


「なんかどれも美味しそうで目移りしちゃうわ」

 結衣が何か焼き物をつまもうと、屋台を物色していると、


 どどどどどどどどどっと、少年の集団がりんごを片手に駆け抜けていく、それを後ろから追いかける男が

「クソガキ共、待ちやがれー! ど、どろぼうめー まてー!」


 結衣はとっさに少年たちを追った。


 少年たちを追い路地裏へ入るが見逃してしまった。


(結衣、子供達は、その階段の裏に入っていったぞ)

「コンサ、見てたの?」


(ああ、しかし子供達を追いかけてどうするつもりじゃ、あの子らは孤児じゃ、生きて行くために多少の盗みも仕方がないじゃろ)

「うーん。とりあえず話を聞いて見るわ」


 階段の裏には、石垣には、人が這って通れる程度の隙間が空いていた。

「ここに入っていったのね」


 結衣がその隙間に這いつくばって入って行くと、ちょうど腰の部分が引っかかり身動きが取れなくなってしまった。

「うーーーーん。きついなー」

 と、その時、ガツンと後頭部を殴られ結衣の意識は消えた。



「……、……、う、うーん」


「……、……ん?」


 結衣が気が付くと、身動きがとれないことに気が付いた。

「縛られているのね……どうしよう」


 そこは、天井の石畳のすき間から光が漏れている薄暗い地下のようであった。

「誰かー、縄ほどいてくれない?」

 と、結衣が叫ぶと、小学生くらいの子供達がぞろぞろとやってきた。


 リーダー格の少女が結衣の目の前に座り、結衣の目をじーっと見つめながら

「兵隊さんに手荒な真似をしたくないんだけど、秘密の出口を知られてしまったので、このまま帰す訳にいかないの、どうしたらいい?」


「まずは、貴方達が何者で、何故こんなところにいるのか話しなさい」


「随分と強気ね。子供だと思って舐めてるの? いま背中からナイフを刺したら貴方死ぬのよ?」


「子供がそんなこと言うんじゃないの! 貴方達のこと話しなさいって」


 リーダー格の少女は呆れたような顔で

「私の名前はダニエラ、同じように親に捨てられた子供達をまとめているの、貴方の名前は?」


「私はユイ、国王軍の百人長です。」


「ユイ、私達は親に捨てられ、身寄りも無くここで必死に生きているの。いつもは、ゴミをあさってりんごの芯を食べてるんだけど、今日はつい魔がさしたようね……」


「そう……孤児院とか入れないの?」


「孤児院は親が亡くなった子供達しか入れないの、私達の親は借金とかでこの街を逃げるように出ていったから、無理よ」


「事情を話せばなんとかしてくれるんじゃないの?」


「私達が孤児院に入ったら、親に金を貸していた奴らが、借金のかたに私達を連れ去ろうとするの」


「お金を貸すようなお金持ちの家に入れるなら、ここよりいいんじゃないの?」


 ダニエラは薄ら笑いを浮かべ

「ふっ……ユイは世間知らず? 金貸しの親父達は、借金のかたに連れ去った子供には、男女の区別なく、欲望のはけ口にするような変態ばかりよ」


 子供の口から、そんな言葉が出ると思わなかった結衣は焦った。

「そ、そ、そう……、ご、ごめん。なんか私より大人ね。」


 ダニエラが何やら目で合図をすると、ナイフを持った子が

「ほんとうにいいの?」

「うん、大丈夫だよ」


 結衣を縛っていた縄をナイフで切った。


「ダニエラ、ありがとう」

「ユイ、この場所は内緒にしてね。私達も盗みはしないようにするから……」


「内緒にする。でもたまに遊びに来ていい?」

「うん。でもお土産持って来てね。」

 と、ダニエラは微笑んだ。



 結衣が外へ出ると、コンサが肩に留まった。

(魔眼の少女は、どうじゃった?)

「魔眼? なにそれ」

(あの少女は、人の目を見れば心を読める魔眼を持っておるんじゃ)

「そう……、それで敵意のない私を解放してくれたのね」

(それだけじゃない。ユイの人柄まで含めて解放したんじゃ)

「魔眼を持ってる人は、この世界にいっぱいいるの?」

(何人かは、おるが魔眼持ちがばれると、だいたいは権力者に幽閉されて、都合よく嘘発見器に使われるだけになってしまうのじゃ)

「心を読まれたくない人はいるわよね、偉い人だと特に……」



結衣が部屋に戻ると

「おそーい! こんな時間まで何してたんですかー 心配しましたよ」

 三姉妹が執務室で寝転んで待っていた。

「ごめん、ごめん。街をぶらぶらしてたらこんな時間になっちゃった」

「もうー、飲みにいましょうよー」

 と、ヨナが結衣の腕にしがみつく

「はい、はい、行きましょうか!」

「「「 はーい 」」」


 兵士達は、戦場へ赴くと、毎日芋のスープ一杯だけの生活であるから、街に駐屯している時くらいは、毎晩飲み明かすのも悪いことではない。


「みんな、最初はエールでいい?」

「いいよ~」


 とりあえず、エールを注文すると、直ぐにテーブルに置かれた。


「「「 かんぱーい 」」」


 結衣は三姉妹との馬鹿騒ぎを楽しみながらも、ゴミをあさり地下で暮らす子供達のことが頭から離れることはなかった。



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