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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
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十人長へ昇進


「これは……ハットサーベルのジョンじゃないか……、お前また凄い奴を討ったな」

 戦果査定の老人が目をまるくして結衣に話す。

「そうなんですか? 確かに動きは素早く奴でした。」


「こいつは、甲冑の穴を正確に突いてくる、重装キラーとして有名なサーベル使いだ。」

「じゃ褒章金貰えるの?」

「ああ、金貨10枚じゃ、それとヨリックが討たれたから、お前が今日から十人長だ。」

「ええ? でも新入りの私が十人長なんて……他の人が認めないんじゃ……」


「いやいや、一番の古株のサナからお前がいいと言われたんじゃ」

「サナさんが……」


 結衣は、褒賞金と十人長の腕章を貰い部隊の天幕へ戻った。


「ユイ十人長、おかえりなさい」

 と、三姉妹の末っ子のヨナが、甲高い声を張り上げた。

 他の者達も、「昇進おめでとう」と歓迎した。


「皆さん、ありがとう。これからは、皆さんの足を引っ張らないように頑張ります。」

 と、深々と頭を下げた。


「ユイ十人長がいれば、この部隊は安泰だよ。あんなに強いなんて思ってなかった。」

「あんなに、高く飛べる人なんて見た事なかったです。」

「その武器凄いですよね。振り回すと雑兵なら近づくことすら出来ないもんな」


 結衣が天幕の奥の自分の場所に寝転ぶと、隣のヨナが

「十人長は、個別の天幕があるから、ここじゃないですよ。」

「そうなんだ」

「そこまで、ご案内しますから、荷物をまとめてください。」

「まぁ、荷物はリュックサック一つだから……」


 結衣は、ヨナに連れられ十人長の天幕へ向かった。

「ここだよ! 前はヨリック十人長が使ってたの」

「そうですか……」

 結衣は浮かない顔で呟くと

「戦で死んで行った人のこと、いちいち気にしてたら持たないですよ」

 と、ヨナが無邪気に言う。

「そうね。切り替えて行きます。」

「じゃ、ユイ十人長、ゆっくり休んでくださいね~」

 と、ヨナは駆け足で戻って行った。



「ふぅ……、個室を貰ったのは、嬉しい……」

(戦で活躍して出世すると、王都に戻って良い暮らしが出来るぞ)

「コンサ、どこにいるの?」

 コツッ、コツッ、コツッ、と天幕の支柱が揺れる。

(上じゃよ、いつも見張っててやるから安心せい)

「ありがとう。王都か……この世界に来て大きな街に行ってないから……街は楽しいところある?」

(酒場や食堂に、お前の好きそうなカフェみたいな所もある)

「そうか、楽しみだな~、あっそうだ! コンサ誰か来たら教えてね。」

(ああ、解った)


 結衣は、リュックサックからスマホを取り出し、指紋認証で画面を開く、流石に怪しまれると思い。人目に付く場所では使えなかったのである。

「圏外か……アプリも使えないし、カメラ位しか使えないか……バッテリーは減らないの?」

(大丈夫だ、お前が日本から持ってきた物は劣化せん)


 結衣は、スマホの中の写真を見ながら

「ラーメン食べたい。パンケーキ食べたい。チョコ食べたい……」

 と呟きながら、そのまま寝てしまった。


 結衣の天幕を止まり木にしている、シマフクロウのコンサの目に、深夜に駐屯地をコソコソと出入りする複数の影が映っていた。



-----


農民解放軍 アビラ砦


「国王軍は、動かんのか?」

「内通者から毎日報告を受けておりますが、イルン平原に駐屯する国王軍に動く気配はありません。」

「このアビラ砦に攻め入ってくれればと、考えていたのだが、奴らも中々慎重だの」

「我が軍と違い、兵站に余裕がありますから動く必要がないんでしょう」


「国王軍の情報が丸々と解る状態でも、動きがなければ、数では劣勢の我が軍から手出しが出来ん」

「これでは、農兵に毎日、ただ飯を食わせてるだけじゃないか!」


 軍議が紛糾するなか、顔半分が火傷でただれている男が立ち上がり

「我が軍から動きましょう。正面からぶつかるつもりはありません。国王軍の裏をかいやります。ついでに兵站も奪いましょう。くっくっく」

「王国の斥候にも内通者がいます。一度しか使えませんが、嘘の情報も流せます。」


「よし、ジークベルトに作戦は任せる。我が軍から動くぞ」


「閣下、ありがとうございます。必ずや成功させてみます。」



-----



「テイス将軍、斥候から反乱軍が大軍でこちらに向かっていると、報告が届きました。」

 テイスは、ギロッと目を見開き

「斥候をここへ連れて来い。わしが直接聞く」

「はい」

「それと、兵士に訓練を止めさせて飯を出せ、ケチケチすることはない。大盤振る舞いでいいぞ」

「承知いたしました。」


「失礼します。斥候を連れて参りました。」

「うむ、まずは水を飲んで落ち着け」

 早馬を走らせてきた斥候は、水を飲み干し息を整えた。


「情報は正確にな、お前の余計な詮索は不要じゃ」

「はい」


「お前は、どこまで見て来た。」

「アビラ砦から隊列を組んで、反乱軍約三万がこちらに行進を始めたところまで確認しました。」


「うむ。別の方向に分隊が向かわなかったか?」

「向かっておりません。一団となってこちらに行進しております。」


「独立した先行部隊は、いなかったか?」

「はい、前日から偵察しておりますが、まとまった部隊の出撃はありません」


「わかった。下がっていいぞ」


「ここまでは一日で到着せん。宿営地点に、東の森から騎兵で夜襲を掛ける。残り全軍も、南へ真っ直ぐ進み、夜明け前に正面からぶつけるぞ。」


「先手を打つと言うことですな」


「そうじゃ、少ない人数で攻めて来ると言うことは、何か用意しているはずじゃ、それを使う前に倒してしまうぞ」


「将軍、ここの守りは残さなくていいですか?」


「ここは、城でも砦でもない。盗賊よけに百人部隊を置いておけばいい」



-----



 結衣は、下士官用の食堂で、この世界に来てから一番豪華な食事を堪能していた。

「肉だ! にく、に、く」


 すると、上級将校らしき人物が壇上に立ち

「諸君! 食事をしたままでいいので聞いてくれ!」


 そう言われても、一同手を止め聞き耳を立てた。

「今日、陽が暮れたら出撃することになる。飯を食ったら十分に休養し備えてくれ、たぶん夜戦になるだろう。詳しくは各自の上官に確認する事! 以上」



 食事を済ませた結衣は、上官の百人長に作戦内容を聞いたあと、部隊の天幕へと向かった。

「皆、作戦内容は聞いているか?」

「いえ、何も聞いてません。」


 結衣は腕組みをし作戦を伝えた。

「陽が落ちたら、出撃となるので、それまで休養と準備をしてくれ」

「「「はい」」」


「状況としては、約三万の反乱軍が、アビラ砦から真っ直ぐここへ向かっている。」

 三姉妹も真剣に結衣の言葉に耳を傾ける。


「騎兵隊六千は、本隊とは別に東の森から進軍し、反乱軍が夜営している所を奇襲する。」


「ユイ十人長、いくら奇襲でも三万の兵に六千の騎兵では、死にに行くような物じゃないですか?」

 サナが呆れた顔でユイへ質問した。


「心配しなくても良い。騎兵隊は一撃を与えたら、反乱軍の後方を抜け戦線を離脱する。」

「その後は、どうするですか?」


「反乱軍が追撃に来たら、出来るだけ逃げて敵の戦線を拡大する。追撃がなければ、その場に留まり、本隊の攻撃が始まったら、反乱軍の後ろから挟撃する。」


 最後にサナは、感心した表情で言った。

「さすがはテイス将軍、完璧な作戦ですね!」



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