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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
2/49

最初の集落

 不作が数年続き、それでも年貢はしっかりと持っていかれ、多くの農民達は飢餓に直面していた。

 それに対して、数人の田舎騎士達が立ち上げた反乱軍は、日に日に数を増やし、国王軍を苦しめ、内乱の火は国中に広がっていた。

 ただ、その反乱軍も増えた兵士を養う為に……


 騎馬に乗った十名の兵士が、辺境の小さな集落に訪れ、村を一周りしたあと、村人を集落の中央に集めた。

「村長はいるか? いたら前に出ろ」


 恐る恐る一人の男が前に出て

「村長でありませんが、一応、私がこの集落をまとめております。」


 騎馬に乗った兵士は

「我々は、農民解放軍である。各地で反乱の狼煙を上げているのは聞いておるか?」

「はい、この小さな集落にもその噂は流れております。」


「よし、それじゃ話は早い。村の倉庫にある芋を我が軍へ提供して欲しい」


「騎士様、あれは大切な種いもでして、次に雨が降ったら畑に撒く予定なのです。収穫後でしたら、提供できるのですが……」


「我々が国王を倒したら、農民の生活は楽になるのだ、一時だけ飢えをしのいでくれ」


「ですから・・・種いもを持って行かれると、畑に植えるものさえなくなってしまいます。」


「もういい、お前ら馬車に芋を積み込め」

 指揮官らしき兵士が命令すると、他の兵士達が馬を降り、倉庫を開けて芋を馬車に積み始めた。


「これでは盗賊と変わらんではないか! 何が農民解放軍じゃ!」

 と、一人の老人が叫んだ。


「ん? いま何と言った。」

 指揮官らしき兵士が馬上から、村人をなめるように見回した。


 老人は怯むことなく前へ出て

「盗賊と同じだと言ったんだ」

「貴様!」

 と言うと同時に、兵士は老人の胸を一刺しした。


「う……、糞共め」

 老人は、口から血を吐きながら、正面から倒れた。


「おじいちゃーん、おじいちゃーん」

「おとうさんっ!」

 小さな女の子とその母親が刺された老人に駆け寄る。


「無抵抗な老人になんてことするんですか……」

「おじいちゃんに何するの、馬に乗ってるおじちゃんは悪い人だー」


 馬上の指揮官は、虫けらを潰すような目で、親子の首を斬り落とした。


「お前たちも、同じ目に合いたくないなら、芋の積み込みを手伝うんだ!」



 ――ちょうど、その時、結衣は集落に辿り着き、一部始終を見ていた。


「な、なんてことをっ」

(どうするんじゃユイ)

「どうするって言われても……」


 すると、馬上の兵士が結衣に気が付き馬で近寄って来た。

「ほう~、上玉じゃねーか」


 結衣は兵士を睨みつけ、コンサは羽ばたき小屋の天井へ移った。

「まだ、生娘のようだな~、名を何と言う、一緒に付いてくるなら、俺が囲ってやるぞ」


(売女のお誘いじゃ、不特定の相手じゃないから条件はいいぞ)

 と、コンサから念話が届く


 結衣は、薙刀を前に構え

「無抵抗の老人や女、子供しか斬れない男に名乗る気はないっ! 種いもを全部持って行かれたら、村人達は生きて行けないだろ、何が農民解放軍だ!」


 集落の人達からも、小さな声で「そうだ」「そうだ」と声が上がる。


「ん? 俺一人じゃ物足りないって? ここでまわされてから、死にたいと言うのか?」

 兵士は馬から降り、他の兵士達も結衣を囲うように集まって来た。兵士に睨まれた村人達は、声を静め遠巻きに見るしかなかった。


「寄るな!」

 結衣は、震えながら薙刀を弱弱しく振り回し、兵士達を牽制する。


 指揮官の兵士が、抜刀し剣を振り落とそうとした時、結衣の振った薙刀は、指揮官の首で寸止めされた。


「奇妙な剣だが武術の心得があるのか? 中々の腕前じゃねーか、戦なら死んでたな」


 指揮官は、抜刀した剣で薙刀を振り払った。

「剣は殺す気で振らないと、寿命を短くするだけだ! あっはははは」


「次は、殺す! 死にたくなかったら、この村から帰れ!」

 二人はお互いに剣を構え、間合いを取りあっている。


 指揮官が薙刀自体を剣で強く振り払い、一気に間合いを詰めると、結衣は、その勢いを利用し反対側の柄で顔面を突いた。


 指揮官は、剣を投げ捨て仰向けに倒れた。

「……凄い腕前だな」

「認めるなら、立ち去れ!」


「何故、とどめを刺さないんだ?」

 指揮官は起き上がりながら、結衣に問うが、結衣は無言である。

「人を殺した事がないんだろう?」


 指揮官は、剣を持たず結衣に近づく

「人を殺せないんだな?」

 指揮官は、結衣の薙刀を自らの心臓に当て

「いまお前が力を込めれば、俺は死ぬんだぞ」

 指揮官が薙刀を胸に当てたまま一歩一歩、間合いを詰める。


「殺せよ、一刺しすればいいんだ!」

 結衣は、薙刀を指揮官の胸に刺しながら逆に一歩一歩後退していく


 すると、後ろにいた兵士に結衣は羽交い締めにされた。

「な、な、何をするの!」

 結衣は抵抗するが、あっという間に結衣は兵士達に取り押さえられてしまった。


「人を殺せないのに、人殺しの稽古だけしてたのか? まぁいい、お前ら十分に楽しんでから、楽にしてやれ」


 兵士達は、集落の真ん中で結衣の四肢を押さえつけ、髭面の大男が結衣に馬乗りになって、顔を舐め始めた。

「い、い、いやー」

 と、結衣は絶叫する。

(戦えユイ、戦うんだ!)コンサが念話を送った


「ひっひっひっひひー、こんな透き通るな肌の女は初めてだー、ゆっくり楽しませて貰うぞ」


 髭面の大男は、顔から首筋そして乳房へと結衣の体を舐め回し、段々と下半身へと向かっていった。

「い、い、いやー、やめてー、お願い」

 結衣は泣き叫んだ。

(戦えユイ、何故、振り払わないんだ!)


 集落の人達は、下向きせめて無残な姿は見ないようにしていたが、小さな子供が髭面の大男に駆け寄って

「おじちゃん、止めてあげて、おねーちゃん泣いてるよー」


 子供をチラ見した大男は、「うるせーな」と裏拳で子供の顔を思いっきり殴ると、子供の顔は陥没し五メートルふっとんだ。


 女性が既に息をしていない子供に駆け寄り

「この子の何をするの」と泣き叫ぶと、横に立っていた兵士に首を落とされた。


(ユイお前が戦わないから、どんどん人が死んでいるぞ)


 髭面の大男が

「お前ら、村人を黙らせろ、女は俺一人で十分だ」


 結衣の四肢を押さえつけていた兵士達が、剣を持ち村人を威嚇し始めた。

 髭面の大男は、結衣の上に乗ったまま、両腕を押さえ付け、また顔を舐め始めた。

「ふぇふぇふぇふぇふがふが……」


(ユイ戦うんだ! ユイ!)

 結衣の心の中で何かが弾けた。


 ピキィーーーン!


「戦う……戦うわ……、こいつらぶっ殺す!」

(そうか、それでいい)


「ぶっ殺すだと? 威勢がいいな、あっはははは」

 髭面の大男は、高笑いを浮かべる。


 コンサが屋根から滑空し、髭面の大男の頭を鋭い爪で掻き毟る。

「いてーーー」と大男が、上体を起こすと

「息臭せーんだよ!」と、結衣は大男の股間を思いっきり蹴り上げた。

「うっ」と大男が悶絶すると、その隙に左に転がり薙刀を手に取った。


 薙刀を構えた結衣に、髭の大男が斧を手に

「人を殺せないだろ? あーはっはははー」

 と高笑いしている最中に、大男の腕と斧が地面に落ちた。

「このあまー!」と腕から血をぼたぼたと落としながら、体当たりを仕掛けてくるが、結衣が薙刀を一振りすると、男の体は、大根でも切ったように真っ二つに割れた。


 結衣は、勢いよく屋根に飛び乗り、屋根伝いに進むと、馬上の指揮官に向け飛び降り、そのまま首を斬りおとした。


 一瞬にして、髭の大男と指揮官を斬られると、他の兵士達は馬にまたがって、悲鳴をあげながら我先にと引き返えして行った。




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