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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
16/49

農民解放軍の兵士


 真昼間に路地裏に引きづり込まれた所を、見廻りの反乱軍兵士に助けられた結衣は、兵士が家まで送ると言うので、適当に街を歩いていた。


「農民解放軍は、まだ寄せ集めで軍規がなっておりません……住民の皆様にはご迷惑をお掛けして申し訳ないと思ってます。」

 結衣は

「なぜ軍規が守られないのですか? 国王軍ではこんなことありませんでしたよ。」

 兵士は困った顔で

「農民上がりの兵は、兵士は何をしても許されてると思っている者が多く、我々も手を焼いておるのです。」

「それは、貴方達が農民に対しやって来たことを見て来たからじゃないの?」

 結衣が問い詰めるように言うと

「……否定出来ません。ただ、いつもそんな事をしている訳じゃありません。一部の者なんです。信じて貰えませんか?」

 兵士は素直に認め、申し訳なさそうに結衣に話す。

 結衣はその姿に感心し

「貴方のような誠実な人が、何故農民解放軍に居るのですか?」


 兵士は少し考えたあと、

「私はアビラ地方で、帝国との国境警備をしておりました。二年続いた凶作で、農民達は税に苦しみ、武器を手に蜂起しました。」


「それを鎮圧するのが、貴方達の役目では?」


「そうかもしれません。私も上官から命令されればそうしていたでしょう。しかし、軍は農民と一緒に領主を倒してしまったのです。少なくとも領主は最悪の人間でしたので……」


「まぁその領主のことは知らないので、何とも言えないけど……」


「そうなると、後には引けず、周辺の農民達も参加し、段々と大きくなりました。」


 結衣は兵士の話を聞いて

「経緯は解ったけど、貴方達は帝国に踊らされいるだけじゃないの?」


「そうかもしれません。」


「随分と素直に認めるのね」


「この街の住民が、私達を悪人に思うのはしょうがないですが、田舎の貧しい農民から見ると、この大きな街で豊かな暮らしをしている人が、憎悪の対象になるんですよ。」


「だからといって、この街で傍若無人な振る舞いをしても許さるものじゃないですよ。」

「そうですね、我々も早急な治安の回復に努めます。」


 結衣は適当な場所で、

「ここで大丈夫です。ありがとうございました。」

「私は、チャナ。貴方の名前は?」

「ユイです。」「ダニエラだよ」

「それじゃユイさんダニエラちゃん、気を付けてね」


 兵士と解れ地下に入るとダニエラが

「おねーちゃん。あの反乱軍の兵士は嘘を付いてなかったよ。」

「そうだね。私もそう思った。とても誠実な人だったね」


 結衣はチャナと出会い、自分が戦う意味を考えさせられたが、今はそれを封印し城塞都市奪還の事だけを考えることにした。


 夜になると結衣は、城塞都市を抜け出し、三姉妹や部下達が待つ森へ行き、全員を連れて地下に戻ってきた。


「今日はゆっくり休んで下さい。陽が昇ったら、ここも少し明るくなるので、子供達と一緒に地下を歩き周り、地上の何処と繋がっているか把握して下さい。」

 と、部下達に話し自分もゆっくりと休んだ。


 朝になり、結衣の部下達は、子供達と一緒に四つん這いになりながら、地下空洞を這いつくばり、出入口をひとつずつ確認していた。

 その頃、結衣はダニエラに大きなお願いをしていた。

「ダニエラちゃん、貴方にしかお願い出来ない事があるのいい?」

「うん。私に出来ることなら何でもする。」

「信用出来る街の人達に、私の部下を家に匿ってくれるようにお願いして欲しいの」

「……う、うん。やってみる。」

「ごめんね。難しいお願いして」

「違うの……おねーちゃんは、私の眼のこと知ってるの?」

 結衣は少し考えたあと

「うん。知ってた。神様に教えて貰ったの」

「そうなんだー 神様が……」


「なんかダニエラちゃんの能力を利用する見たいなことして、ごめんね」

「ううん。いいんだよ。」



 結衣は数日間かけ、作戦を立案し、その為の準備を行った。

 全ての準備が整うと、サナに頼み文を書き、コンサの足に結んで空へ放った。

 その文の内容は

『潜入と工作の準備が整いました。今夜から作戦を実施します。反乱軍に潜入者と内通者の恐ろしさを味合わせてやります。』


 結衣と三姉妹は、食糧庫近くの石畳の下で息を潜めていた。

(ユイ、食糧庫の警備は三人だけじゃ、今なら大丈夫じゃよ)

 食糧庫の屋根から周囲を見渡すコンサが念話を送ってきた。


 結衣は石畳を慎重に外し、暗闇のなか警備兵に背後から近づくと、バサッと薙刀で斬り倒した。

 サナとリナも同時に薙刀を警備兵に突き刺し、ヨナが食糧庫を開錠した。


「勿体無いから、ちょっと拝借するね。」

 ヨナが干し肉を袋に詰めると、サナが

「それ位にして起きなさい。火を放つわよ!」

 と言い、サナが食糧庫へ油を注ぎ、火を放った。

「あー勿体無い、いい匂いするしー」

 と、ヨナはギリギリまで干し肉を拾っていた。


 また、住民の家に匿って貰っていた結衣の部下達も、路地裏で反乱軍の兵を数人後ろから斬りつけ、直ぐに姿をくらましていた。



-----


 ジークベルトは苛々しながら、報告を受けていた。連日、食糧庫が焼き討ちにあい、城塞都市内で数十人の兵士が何者かに殺されていた。

 また、補給部隊も各地で襲撃にあい食糧が底を付き始めていたのだ。


「この城塞都市に内通者が、どれくらい潜んでおるのか解らんのか!」

「ジークベルトさま、毎晩の襲撃が同じ者の仕業なのか、毎日違う者なのかさえ解っておりません。」

「住民の家を、一軒一軒しらみつぶしに調べればいいだろう。」


 従者は跪いたまま

「一部の荒くれ共のせいで、住民の我が軍に対する感情が悪化しております。住民の家を強制的に調査するとなると、住民蜂起もありえます。」

「くそー これも全て糞じじいの仕業だと言うのか……」


 従者は

「テイス将軍をお連れしましょうか?」

「ああ、ここへ連れて来い。あと、食糧庫の警備は百人に増やせ、兵士に夜間の外出を禁止、そして十人単位で街を警戒を指示するんだ。」


 暫くしてテイス将軍が連れて来られた。

「テイス将軍、さすがですな、全て貴方の作戦ですか?」

 ジークベルトは余裕を装ってテイス将軍へ言った。

「はて? なんの事じゃ?」

 テイス将軍は、とぼけた顔で逆にジークベルトに聞いた。


「連日、食糧庫へ火を放ち、暗闇で見境なく兵士を斬り殺し、おまけに補給部隊も襲撃にあっているのだ。いったい何人をここへ忍ばせているのだ?」

「ほほー、面白な、数日前まで、わしも同じ悩みを抱えておったぞ。あの時、農民解放軍は何人内通者を潜入させておったじゃ?」

 テイス将軍は、また逆に聞き返した。


「食えぬ男だの……」

 ジークベルトはこれ以上話しても無駄と思い、テイス将軍を牢屋に返した。



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