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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
13/49

鉄球の魔人


 早朝の廃城で、地下室に百人長が集められ軍議が開かれていた。入り口には、警備兵が立ち一般兵は近寄る事を禁じられていた。


 カミル千人長が全員揃ったことを確認すると、

「アルマサン城塞都市は現在、五万の反乱軍に囲まれている。その後方には五千の帝国騎兵が見守っており、帝国からは停戦の使者が城内に入っているとのことだ。」


「帝国が停戦交渉の使者ですか?」


「帝国は積極的に戦闘に関与せず、反乱軍と王国の和睦を望んでいるらしい」


「まぁ独立した反乱軍を帝国へ引き込む考えなんでしょうな」

「漁夫の利か?」「いやいや最初からそれが帝国の手だろう」

「あいつらじわじわと、王国の領土を奪っていくからな」

「最初から城塞都市の乗っ取りが目的だろ」


 百人長達が勝手に話を始めると、カミル千人長は


「静かにっ! そのような話はいま考えることではない。あと約二万の反乱軍が援軍に向かっていると言うことだ」


「それでも十万に満たない兵で、アルマサン城塞都市は落ちないのでは?」


「そうだが、反乱軍の内通者が城内にどれだけいるのか読めんので、楽観は出来ないぞ」


「それでたった六百の騎兵で何をすると言うのですか?」


 カミル千人長は全員を見渡したあと、

「まだ詳細は話せんが、今日陽が暮れたら出撃する。一晩ぶっ通しで移動する予定だ。兵にそれを伝え、準備をして陽が暮れるまで、十分に休んでおくように伝えてくれ」




 陽が暮れると、廃城前の広場に騎兵隊が綺麗に整列していた。その様子を満足そうに見ていたカミル千人長が、馬上から

「これから、東の山を越えた森を南下する。陽が昇るまで休憩は無しだ。出撃だ! 遅れるなよ」


 カミル千人長を先頭に騎兵隊が一列になり、森を抜け山を駆け上がっていった。



        ↑王都

森山森森森森森森| |森森

森山森森森森森森| |森森

森山    森森|街|森森

森山 廃城 森森|道|森森

森山    森森| |森森

森山山森森森森森| |森森

森山山山森森森森| |森森

森山山山山山山森| |森森


~~~~~~~~

森森山山山山山山

森森山山山山山山   城塞都市

森森山山山       丘丘丘丘

森森山山山        反乱軍陣地

森森山山山

森森山山山

森森山山山

~~~~~~~~

         イルン平原

森森森森森森

森森森森森森

森森森森森森  元国王軍駐屯地

森森森森森森  (現反乱軍、兵站基地)

森森森森森森

~~~~~~~~

森森森森森森森| |森森

森森森森森森森|街|森森

森森森森森森森|道|森森

森森森森森森森| |森森

        ↓アビラ砦



 一晩休憩することなく飲まず食わずで、森を疾走した騎兵隊も、陽が昇り始めると、川に近い深い森で休憩となった。火の使用は禁止され、干し肉と干し芋で空腹を満たすと、各自思い思いにハンモックを張り眠りに就き、陽が暮れると、また森を疾走した。


 五日五晩、陽が暮れると走り、陽が昇ると寝ることを繰り返したあと、やっとカミル千人長から作戦内容が告げられた。


「やっと、お前らに作戦を伝えることが出来る。」

 兵士達からうぉぉっと小さな歓声があがる。

「これから馬を走らせ、陽が昇る前には、俺達が以前駐屯していた。イルン平原の駐屯地へと着く」


 兵士達はなにか悟ったように、じっとカミル千人長の声に耳を傾ける。

「情報によると、反乱軍の大量の兵站と約一万の守備隊がいると言う、俺達は夜のうちに火弓を放ち、混乱する雑兵共も蹴散らすのだ!」


「「「「おおおおおおおおおおおう!」」」」と騎馬隊が雄叫びを挙げ、夕暮れの赤色が黒で塗りつぶされ、一段また一段と深くなる闇の森へ駆けて行った。




 先遣隊が見張りを始末し、駐屯地そばの丘に登ると、真っ暗で地を割って奈落の底に下りていくような暗さを増す道が、たいまつの明かりが灯る反乱軍の兵站基地へと続いていた。


 カミル千人長の号令で、一斉に火矢を放つと、兵站基地はたちまち炎に包まれ、雑兵達が慌てふためいて逃げ回っていた。


「突撃せよっ!」

 と、カミル千人長を先頭に騎馬隊が、逃げ惑う雑兵を斬り倒しながら炎の中へ突入していく。

 約十倍の兵力のある反乱軍であったが、炎に囲まれた夜襲に、何が起こっているのかも分からずに、ただただ斬られているだけであった。

 国王軍の夜襲に気付いた兵も、反撃することなく散り散りになって森へと消えて行く者が多数いた。


 反乱軍の組織的な反撃がないなか、カミル千人長が突然、スイカ程の大きさの鉄球に襲われ落馬した。

「うげーっ」

 と、カミル千人長が地面をのたうちまわると、

 どーん!

 鞭のようにしなった鎖の先端の鉄球が上から直撃し、重装備の上からその体を潰された。


 先頭の異変に気づいた結衣が馬を走らせ、カミル千人長の元へ向かうと、

 ひゅーん、どーん!

 水平軌道で飛んできた鉄球が、結衣の馬の頭をふっとばした。落馬した結衣に追い打ちを掛けるように、上から落ちてきた鉄球を寸での所でかわした。

「危ない……、何者?」

 炎の奥から、相撲取りのような大柄で半裸の男が、口からよだれを垂らしながら

「よく避けたな~、次は潰してやるぞ、ふぁふぁふぁっふぁー」

 半裸の男が鎖を鞭のようにしならせると、鉄球は宙に舞い結衣目掛けて飛んで来た。


(ユイ、お前の着ている道衣でも鉄球を食らえばひとたまりもないぞ)

「それくらい、解っているわ。どうすればいい?」

(逃げるしかないんじゃないか?)

「……」


 結衣は鉄球を避け、一気に間合いを詰め薙刀を振り下ろすが、半裸の男の鎖に防がれてしまう。

「ふぉふぉっふぉっふぉ~ 近くで見れば美しい少女じゃないか、降参すれば、わしが囲ってやってもいいぞ」

「また、その話か! 豚野郎!」

(ユイ横っ跳びしろ)

 結衣がコンサの言う通り横っ跳びすると、後ろから鉄球が襲って来た。

「後ろに目が付いているのか? ふぉふぉっふぉっふぉ~ 面白いじゃねーか」

 すると、至近距離から飛んで来た鉄球を薙刀で受ける。

「う、腕が痺れる……」


 結衣が水平に薙刀を振ると、半裸の男は鎖で防ぎ、薙刀に鎖を絡ませる。結衣はとっさに鉄球を足で踏み押さえつけた。

 お互いに武器を抑えられこう着状態となるが


「百人ちょー」

 後ろから疾走してきたサナとリナが、左右に分かれ半裸の男の腕を斬り落とし、抑えられていた薙刀から急に力が無くなって、結衣が後ろに倒れ込むと、その結衣を飛び越して、馬上のヨナが半裸の男の首元に薙刀を突き刺した。


「はぁはぁはぁ……助かったわ……」

 結衣は尻もちを付きながら安堵した。


「ユイ百人長、ご無事ですか?」

 サナが馬を降りて、結衣に手を差し伸べる。

「貴方達が、来てくれなかったら、どうなっていたことか……ありがとう」


「百人長が抑えてくれていたから、倒すことが出来たんですよ。それにまだ終わってませんからねっと」

 サナが勢いを付けて結衣を起こすと、ヨナが反乱軍と剣を交えているのが目に入る。

「うわーーーー」

 と、結衣はヨナへ近づき、反乱軍の兵士を斬る。


 リナが千人長がどこからか馬を曳いて来て、

「百人長、これに乗って下さい」

 と、結衣に馬を渡した。


 四人は訓練した陣形を組み、薙刀を振り回しながら、反乱軍を殲滅していった。結衣のその姿は、国王軍の白い悪魔そのものであった。





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