廃城
暇が無く更新が遅れて申し訳ございません
深夜、参謀本部に寝泊まりしているテイス将軍の枕元に、影が立っていた。
「動き始めたようです。アビラ砦には五万程度の兵が遠征準備をしているようです。」
「ん。五万か……少ないのう、間違いはないか?」
「間違いありません。」
「そうか、頼りになるのはお前だけじゃ、また戻ってくれ」
「承知!」
と、その影は窓から消えて行った。
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早朝、結衣はカミル千人長へ呼ばれ、任務を与えられた。
「昼までに遠征の準備をして、城門前の広場に集合だ。今回は、カールハインツ公爵のご子息を迎えに、王都まで行く」
「護衛ですか? 騎馬隊がする必要があるんですか?」
結衣がカミル千人長に質問する。
「急ぎなので、歩兵の随伴はなし、早馬の馬車と騎兵だけで王都まで行くと言うことにしてるのだ」
「は、はい……」
カミル千人長の含みのある言い方に、不信感を覚えたが、結衣も何かを察していた。
部下の十人長と三姉妹を集めた結衣が
「皆さん、これから護衛で王都に行きます。全員昼までに準備をして、兵舎の前に集合して下さい。」
「王都に行くのか~久しぶりっ!」
王都と聞いてヨナが浮かれた声を出した。
「遊びに行く訳じゃないのよ。最近は、そこら中に反乱予備軍みたいな農兵がいるから、気を抜かないように!」
お昼を過ぎた城門前の広場では、部隊毎に点呼がされていた。最後に報告を受けたカミル千人長が
「全員揃ったようだな。出発するぞ!」
「「「おおおおおおおおおおお」」」
雄叫びが上がると、五百騎の騎馬が地鳴りのような音を立てて、城門橋を渡って勢い良く馬が駆け抜けていく
「ひゃっほう~」
ヨナは奇声を挙げ、大外で覚えたての薙刀を振り回し疾走する。
「ヨナ! 調子に乗るは止めなさい。後で疲れたって言っても置いて行くからね!」
三姉妹の長女であるサナが躾けるように言うと
「は~い」とヨナは素直に言うことを聞いて薙刀を収めた。
陽が傾き始めた頃、先頭のカミル千人長が部隊を止め
「ここから街道を外れて森に入る。前の馬を見失わずしっかりついてくるんだ」
森の中をゆっくり進むと、廃墟となった城が現れた。
↑王都
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廃城 森森|道|森森森森森
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↓城塞都市
「なんか、薄気味悪い~ お化けが出そうじゃない……」
ヨナは顔面蒼白で、膝をぶるぶる震わせた。
カミル千人長に続いて、廃城の中へ入ると天井が崩れ落ちている大広間で全員が馬を降りた。
カミル千人長が薄汚れた壇上に上がり
「今回、我々は王都へ行かない。」
と言うと、動揺した兵士達がざわめく
ざわめきが静まるのを暫く待ってカミル千人長が
「お前たちを信用していない訳ではないのだが、最近内通者が多く、いま我々の任務を言う事はできないが、暫くここに駐屯して貰うことになる。」
――廃墟とは言え、元お城であった為、頑丈な石造りの部屋が多数あったので、各自好きな部屋で寝泊まりする事になった。
「お化けが出そうだから、四人一緒の部屋にしてね」
と、ヨナが相変わらず震えながら嘆願する。
「はい、はい、埃っぽいくて、掃除しなくちゃいけないから、四人部屋の方が楽だからいいわよ」
広々とした部屋を見つけ、四人で手分けして掃除した後、軍から支給されたハンモックを天井から吊るし四人ならんで横になった。
「ユイ百人長、内通者を恐れるのは解るけど、今回どんな作戦だと思います?」
サナが天井を見つめながら結衣へ聞いて来た。
「うーん。なんらかの奇襲だと思うけど、私にはわからないわ」
「奇襲なのに、また待ち伏せされるのは嫌だから、作戦が秘密なのはいいけど、いつまでここにいる事になるでしょうかね?」
「反乱軍の動き次第なんじゃないかと思う」
カンッカンッカンッ!
「ご飯だー!」
鐘を合図に、ヨナがハンモックから真っ先に降り、食堂へと駆けて行く、ヨナを後をゆっくりと付いていくと、大きな食堂に兵士達が、集まりだしていた。
「クンクン、クンクン、この匂いは……お肉だー! おねーちゃん。お肉だよーお肉」
ヨナが食堂に充満する肉の香りに、はしゃいでいる。
皿を持ち並んでいると、隣の兵士が
「周囲を偵察に行った部隊が、鹿を三頭仕留めて来たらしいぞ」
「いい仕事しますねー、よし! 私達が偵察行ったら猪狩ってくるよ!」
サナが呆れた顔で
「偵察は大事な任務ですよ。帰り道に偶然出くわしたら狩りますけど、狩りは目的じゃないですからね……」
四人でテーブルを囲み、肉にかぶりつく
「新鮮で美味しいー」
「うん。美味しいね。でも、エール飲みたくなるわー」
「さすがに、それはないようね……」




