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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
10/49

ポップコーン


 あれから結衣は、訓練の合間をぬって地下で暮らす子供達の元へ、りんこや芋を土産に足しげく通った。

 この世界では、子供でも自活していかなければならないと思った結衣は、休日に子供達を連れ街へ買い物へ出掛けた。


「おねーちゃん。何をするの?」

「みんながお金を稼げる方法を教えてあげるの」


 結衣は、道具屋で火鉢と鍋を買い、肉屋で捨てそうな脂身を格安で買い付け、最後に乾物屋で

「硬くて、小さい一番安い乾燥トウモロコシが欲しいだけど」

「硬くて、小さいのでいいのかい?」

「はい、それを安くして頂戴!」

「解った。通常一袋銀貨一枚だが、これなら二袋で銀貨一枚でいいぞ」

「ありがとう」

「はっきり言うが、それは鳥のエサにする奴だぞ」

「これでいいんです」


「みんなどこで何を買ったか覚えた?」

「「「 はーい 」」」

「特に、トウモロコシは固い奴じゃないと駄目だからね」

「うん。それで何作るの?」

「それは、後のお楽しみ、どこかで笹の葉をいっぱい摘んできて」」


 結衣は屋台が並ぶ通りのはじで、火鉢に火をいれ脂身をひいた鍋にトウモロコシを少し入れ蓋をした。


「ちょっと、待っててね。」

 子供達は興味津々に鍋を見ていると、

 ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!

「うわーーーー、蓋が上がってきたーーー」

「なに、なに、なに? おっきくなってるの?」


 結衣が鍋を火鉢から移して蓋を開けた。

「うわーーーなにこれ? 小さいトウモロコシの種がおっきくなってるーー」

 結衣が塩を少し振り、笹で作ったお皿に移し子供達ひとりひとりに渡した。

「食べてみて」


 子供達は恐る恐る口に頬張ると……

「うわー 美味しい!」「美味しいー」「こんなのはじめてだー」「こおばしいー」


 通りを歩いていた男が

「なんだ? 新しい食いもんか? ひとつくれ、いくらだ?」


 結衣が笑顔で

「一皿、銅貨一枚ですよ」


 銅貨一枚を払いポップコーンを食べた男が、旨い旨いと言いながら、あっと言う間に平らげてしまう。

「もう一皿くれ、いや、面倒だから、三皿くれ」

 と、直ぐに追加注文をした。


 すると、次第に人が集まってポップコーンを買う為に、行列が出来てしまった。


 一時間ほど経つと売り切れてしまい。並んでいた人達が残念そうに戻り

「明日もここで売るのかい?」

「はい、晴れていれば毎日ここでお店を開きますよ」

 と、結衣が笑顔で答えると

「あれ? あんた国王軍の白い悪魔じゃないか。こんな商売もしているのかい」

「今日は、お手伝いしているだけですよ」


 結衣と子供達は地下へ戻り、売り上げを計算すると、銀貨一枚で買ったトウモロコシの種が、銀貨六枚になったのだ。


「どう? 明日から自分達でやっていける?」

 結衣がダニエラに聞くと

「うん、私達だけでやっていけそう。仕入れは私がやれば騙されることもないと思う」

「そうね。仕入れはダニエラがやった方がいいわ。」

「でも、これなんて料理なの?」

「ポップコーンよ」

「ポップコーン? なんか解り難いわ」

「そうか、じゃ爆発菓子、なんてどう?」

「爆発菓子かいいね。店の名前はどうしよう?」

「うーん。ダニエラの爆発菓子でいいんじゃない?」

「それはちょっと……」


 と結衣とダニエラが悩んでいると、小さな女の子が

「さっき、お客さんが言ってた。白い悪魔でいいんじゃない? これ白っぽいしー」


「よし、『白い悪魔の爆発菓子』にしよう。いいでしょユイ?」

「うん。わかった。私の通り名も多少は有名だからいいでしょう」


 ダニエラが神妙な顔で

「今日、火鉢と鍋買うのに金貨一枚使ったでしょ? これは稼いだら後で必ず返します。」

「返さなくていいわ。それよりね。」とダニエラに金貨を渡し

「何日かやって、慣れてきたら、このお金で同じ屋台をもう一店出しなさい。そして、真似される前に、なるべくたくさんお店を作って欲しいの」


「そうした方がいいの? ひとつのお店に皆に来て貰えばいいんじゃないの?」

「並んでくれるのは最初だけ、いつでも気軽に食べれるようにした方がいいわ」


「小さいお店をいっぱい作った方がいいのね」

「うん。そして、あまり欲張らずなるべく安く売った方がいいわ。薄利多売ってやつね。あと味も改良していったほうがいいわ」


「改良ってなにをした方がいい?」

「そうね。最初は油を色々試した方がいいわ。植物種から採った油が手に入れば安く済むでしょう。貴方達は自由に外へ出られるんだし外で探してみて」


「うん。わかった。これから少しずつやってみるわ。ユイ本当にありがとう。これで盗みなんてしなくても食べて行けるし、いつかみんなで家を借りる事も出来るかもしれない」


「頑張ってね。ダニエラ、あとは貴方達次第よ」


「はい」と、魔眼の少女ダニエラは満面の笑みを浮かべた。



-----



 テイス将軍は、アルマサン城塞都市を治めるカールハインツ公爵に呼びつけられていた。

 周辺の慎ましい二階建て住宅を、圧倒する存在感を示している公爵邸の前まで行くと、守衛が扉を開け中には従者が待っていた。

 クラシックな造りと、家具調度品が王宮とそん色ない豪華な一室に通されると、カールハインツ公爵が出迎えた。


「テイス将軍、呼びつけてしまい申し訳ない。王から手紙がきたのじゃ」

「王からですか」

「これじゃ、隠す事はないので読んでくれ」


 テイス将軍は、王の自筆の手紙を読んだ。

 カールハインツ公爵へは、アルマサン城塞都市を死守せよと、テイス将軍へは、焦る必要はないが、機を見て反乱軍を襲撃しイルン平原の奪還をせよ、との命令である。

 そして、各地の状況も書かれていた。

 王国内では、各地で農兵が立ち上がり不安定な状況で、とても援軍を送れる状況でない。帝国が反乱の後ろ盾をしており、農兵も徐々に組織化されている。

 また、国王軍の中にも、反乱軍に寝返る者もおり十分に気を付けるようにと、最後に締めてあった。


「カールハインツ公爵、我が軍も傭兵まがいの寄せ集めなこともあり、多くの内通者がいて、作戦が筒抜けでありました。お恥ずかしい話しです……」

 テイス将軍は、ため息交じりで、テイス軍の状況を話した。

「テイス将軍、ここの守備兵も農民出身が多いので、同じようなもんじゃ……いつ門を開けられるか心配で、門番は騎士自らやってるくらいなんじゃ」


 両軍に潜む内通者の話で、二人きりの部屋は深く静まりかえり、どちらかが唾を飲み込む音まではっきりと聞こえるほどだった。


 沈黙を嫌ったカールハインツ公爵が

「王からの手紙にある、反乱軍の襲撃は何か手があるのか?」


「作戦が反乱軍に筒抜けなので、奇襲が難しいのです。今は反乱軍の出方を探っている状況です。」


「そうか、無理はせんで良い。この城塞都市であれば、十万の兵にも半年はもつであろう。王が言うように機を見てやってくれ」


「カールハインツ公爵、お言葉に甘えさせて貰いますが、何も考えてない訳では、ございませんので……ご期待ください。」



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