第2章-5 新兵器に大興奮(俺とおっさん)
グラフルと挨拶を交わしたら、まずはバリスタのお披露目だ。
「ほうほう、これがバリツタか。この槍を飛ばすのかね」
大きな城の後ろにある庭で、グラフルはバリスタを前に興奮している。目新しい武器に興奮するのは男の性だろう。実物を見るのは初めてなので実は俺も興奮している。
言い間違えてることを指摘しようか迷ったが、まぁいつか気が付くでしょう。
バリスタは組み上げると軽自動車くらいのサイズがある。一番上に巨大な弓があり、その下に箱とタイヤが付いている。箱は大きめのダンボールくらいで、バリスタはほぼすべてが金属製だ。
「そのとおりです。強力な弦を張り、人の力では引ききれないまでに弦を引くことで槍を飛ばします」
グラフルは弦を自分で引っ張って、あまりの硬さに「こんな弦どうやって引くんだ。引けない弓に意味はないぞ」と、なんともありがたいリアクションをしてくれる。
「そこの紐を引っ張ってください」
おぉ、おお、おおっ!グラフルは笑いながら紐を引く。
この紐はバリスタの箱の中で滑車を通ることで弦が軽く引けるようになっている。
「これはどうなっているんだ」
グラフルは機嫌よく聞いてくる。
「これが科学です」
この世界に井戸用の滑車は存在するが動滑車は存在しない。バリスタの存在を示した以上は、兵器の発展を促進させないために動滑車は現地人には開示しないこと決まった。
この決定は戦争部、機械部、物理化学部や外交部が取り決めたらしい。勝手に破ったら裁判にかけられる。
グラフルはずっと紐を引いたり戻したりをしている。重いものを軽く引けることに感動しているようだ。
「この中が見たいのだが」
グラフルは箱を指差していう。
「申し訳ないがその中を見ることは大変危険でして、無理に開けると爆発します」
大事な技術には自爆装置が付いている。車と同じやつだ。
グラフルは残念そうに箱をさすっている。なんか仕草が可愛い気がしてきた。
武器のお披露目をするからにはやはり試射をしなければならない。迅さんと3m近い矢をセットする。この矢は3~5kgほどある上に、長いのでもっと重く感じる。
グラフルが的にしていいという木に狙いを定める。だいたい20m先くらい。プールの幅くらいだ。
「では発射します」
ビュッッ!!
大きな音をたて、矢は木を突き抜けた先に落ちた。
俺と迅さんは連射性を示すためにすぐに矢をセットし2発目を撃つ。勿論2発目も木を突き抜ける。
グラフルの口をポカンと開けた表情も100点のリアクションだ。
その後もバリスタの機動性や狙いの付け方などを説明をして城の中にもどる。
今からが最も大事な交渉が始まる。




