「アプローチ2/2」
「ミツケタ」
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――――騒々しい女や男の声が聞こえる...頭が痛くて鼓膜が破れそうになるほどの耳鳴り...脳の命令と反してゆっくりと瞼が開く、視界に入る白いモヤが完全に消え去り、視界が安定してくる。
すると、目の前に広がる景色は予想を反していた。
『おや、目が覚めたみたいだぞ?』
『本当?』
『ぼうや、大丈夫かね?』
「君!大丈夫!?」
自分を囲む沢山の野次馬(?)達が次々と声をかけてくる。
尾山「大丈夫...です...。」
仰向けで倒れた状態からひとまず状態を起こそうと、立ち上がったが、すぐにふらつき、めまいがし始め、また倒れてしまう。
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再び目が覚めると今度は甘ったるい匂いとなにか柔らかい......ベットの上に寝そべっていた。
「おやおやぁ、やっと目が覚めたのね?」
声のする方を向くと、何か宗教服のようなものを着飾る、ピンク色のロン毛で小顔が可愛い少女がいた。
状況はすぐに掴めた。
尾山「すみません...自分、気を失って...ウッ。」
立ち上がろうとするもすぐにまた、視界が暗転し始めふらつく。
「あぁ、ほら...まだ安静にしてないとダメだよ?今飲み物を持って来るから待っててね。」
尾山「...ちょっと待って下さい...いくつか聞きたいことがあります。」
「あら、どうしたの?」
尾山「まず...貴方は誰ですか?...そしてこの世界はどこですか?」
「あら、なんでここが元いた世界と...違うとわかったの?」
尾山「いえ...確信はしていませんでした、ですが今の貴方の言葉で...確信になりました...。」
「はぁ、私の名前はファビオラルース。この世界のことは後で教えてあげる、今はゆっくりして。」
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体調が良くなったのは夕日が沈んで来たころだった。
尾山「...理由は簡単です、まず、部屋を見渡しましたが、俺の友達がいなかった、あなたに言ってもわからないでしょうが、私はここの世界に来る時には、あと2人いた。」
ルース「......。」
尾山「それなのに自分1人だけが、こんな家に運ばれるなんて、何だかの理由か自分1人しかそこに居なかったと言う事。3人同じ場所にいたのに、自分1人しかいないと言うことは、場所が変わったか運ばれたしかないでしょう。それと、もう一回聞きますが...貴方は誰ですか?」
ルース「わかったわ、一つ一つ...説明させていただきます。」
ルース「まず、この世界は確かに貴方の居た世界とは違います、ですが、恐らく貴方がいた世界には影響を及ぼしています。そして次に知って置いて欲しいのが「能力者」の事です。」
尾山「能力者?」
ルース「はい、恐らく貴方も能力を一つ持っているでしょう。先ほどお話した影響のこと、ソレをわざと起こしている集団がいます...もちろん、その能力で。そして、能力の所得条件はこの世界にいる事です。」
尾山「って事は。」
ルース「つまり、貴方も能力者であり、この街は愚かこの国...いえ、この世界にいる人達全員が能力者です。」
尾山「そんな事言われても信用できないと言いたいけど、十分わかった...でも、この世界で俺はどうすればいい?」
ルース「そんなの私にもわからないわ。でもまぁ自分の能力ぐらい知っといた方がいいんじゃない?」
尾山「そっか、そうだよな…。」
この世界に来た意味も...その先の運命も...友達の居場所もわからないまま...ただ、アプローチを続けるしかなかった。