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エピローグ

「これだよ、これ!」

 ゴウンは特製金槌を手に取り、しげしげと眺めた。

「娘が病気で家を抜けられないし、特製金槌にもガタがきて仕事も出来なくて困ってたんだよ。いやぁ、助かった」

「うちにも娘がいるから、その気持ちは良くわかりますよ。お役に立てて良かった」

 身体が弱く病気がちの娘を思い出し、ブームは素直に頷いた。

 実家に置いてきた妻と娘は、元気にやっているだろうか?

 拙い字で一生懸命書いたと思われる娘の手紙がたまに来るが、六ヶ月も顔を見ていないとさすがに寂しくなってくる。

「娘も元気になったし、これでようやく本格的に仕事が出来るよ。ブームさんも、店を大きくしたくなったら言ってくれ。あんたの店なら……」

 そう言ってゴウンはぐるりと店を見渡した。

「そうだな、十五……いや、十万カリムで請け負うよ」

 どうせならタダでやって欲しいのだが、さすがにそこまではムリだろう。

「あはは、あんた商売上手だな」

 ブームは笑って自分の考えを吹き飛ばした。

 今まで店の改装については考えた事がなかったが、この前のオークの一件が町中に知れ渡ったようで、仕入れから帰ってきてからは客の入りが良くなっていた。

 この調子で客足が伸びたら、今の店では商品が足りなくなるだろう。懐も温かくなってきた事だし、ここらで店を大きくしてもよさそうだ。

「じゃあ、早速店の増築を頼みたいのだが」

「お! いいねぇ。善は急げって言うからな。人を呼んで明日までにデカイ店にしてみせるぜ! あんたは一日休んでてくれ」

 ゴウンはそう言うときびすを返し、「ガランゴロン」と盛大な鐘の音を響かせ店を出て行った。

「相変わらず忙しい人だな…」

 ブームは鳴り止まない扉の鐘を見つめ、ボソッと呟いた。



 こうしてブームの店は次第に大きくなっていった。近い将来、ブームがレッドドラゴンを倒し国の英雄として扱われる事になるとは、モノリス国の誰もが予想すらしなかったことである。

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