表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ

 知る人ぞ知る小国モノリス。特に名産もなく、観光場所と呼ぶにも殺風景なこの国に、一人の男が大きな鞄を抱えやって来ていた。

 モノリスの城下町は城下と言うにはあまりにも城から遠い場所にあり、ひっそりと人々が生活している。

 国と言っても、一応城があり民が居るだけであまりにも小さい。地図にも一応載ってはいるが、すぐに場所を差せる人は殆どいないだろう。イクシム大陸の東の端にある、小さな島にその国はあった。

 島には城と城下町の他に、これまた小さな町が一つあるだけで、他は自然に囲まれた後進的な島だ。

 他の国との交流は殆どなく、自然の恩恵と家畜だけで国の需要は賄われている。暮らす人々は穏やかで、奔放な性格をしている者が多い。

 男は重い鞄を下ろし、高台から城下町を見下ろした。動く小さい棒切れのような何かが見えるが、あれはきっと城下町に住む人々だろう。

 男は目を細め、より一層注意して城下町を眺めた。

 民は急ぐわけでもなく、各々の仕事を黙々とこなしているようだ。ぽつぽつと建った家は人口の少なさを窺わせた。

 遠くに城が見えるが、遠近感を考慮しても随分小さく、やはり小国なのだと言うことを男は再確認する。

 男は鞄を抱えなおし、城下町に向かって下り始めた。

「私の店をここに建てよう!」



「ブームさん、ブームさん。木刀が欲しいのですが」

 目の前に居るのは、既に常連となったトリム。ガイア教の司祭だ。

 ブームとトリムの目の高さには変わりはないが、ブームは人間のサイズに合わせた店のカウンターに、脚立のようなはしご付きのイスを置いてそこに座っている。

 人間の子供の身長くらいで、おっさんの顔つきをしたブームはホビット族だ。

「あぁ、いいですよ。好きなのを選んで行ってください」

 そう言うとトリムはいつも真剣に武器を選ぶ。この店には、大概同じ種類の武器が数個置いてあるので、来る客にはその中から一番良さそうな武器を選んで貰っていた。

 たまに「どれがいいですかね?」とか聞いてくる客もいるが、粗悪品を扱っていないブームの店ではどれも大して変わらない。

「これが良さそうですね」

 トリムも適当な物を選んだようだ。どれを選んでも大して変わりはないが、持ったり握ったりした時の感じは微妙に違う。ブームは客にはそのフィット感を選ばせているのだ。

「おいくらでしたっけ?」

「十カリムだよ」

 言って客を眺める。一目でガイア教のものと分かる服に身を包んだトリムは、懐から皮のサイフを取り出し、十カリム紙幣をカウンターに置いた。

「この町には武器屋がなかったから、ブームさんのおかげで助かりますよ」

 人懐っこい性格が顔に表れている。この客は大抵長話をして帰って行くのだ。

「隣町にはあるって話ですよね」

「そうそう! 僕はいつもそこまで買いに行ってたんですけど、世の中物騒ですから」

 二九九九年に勃発した第三次封魔大戦で、勇者ノアが魔王を打ち滅ぼしてから四十年経った今でも、この世界には魔族やモンスターが溢れていた。

 いつの時代も人間と魔族はいがみ合い、殺しあって生きてきた。きっとこれからもそうだろう。

「私はやっと慣れてきましたよ。でもやはり、外に行く時はモンスターに注意しないといけないですね」

「そうですよ、油断は禁物です。私達司祭がいつでも助けに行けるとは限らないのですからね」

 ブームが仕入れに出ている先で出会うと、トリムは親切にも回復魔法を掛けてくれる。ブームはそれで何度か助けられているのだ。

「はぁ…、気をつけます」

 三十五歳にもなって、自分よりも若く見える司祭に諭されていると言うのも情けないものがあるが、ブームは素直に首を振った。実年齢よりも老けて見える顔に落ち込んだ表情が走る。

「そう言えば、ブームさんはトーテム山の方に仕入れに行っているんですよね?」

 唐突な話題にブームは首をかしげた。話題どころか、トーテム山と言うものがどこだか、ブームは知らない。

「……トーテム山?」

 今いるモノリスの城下町に来る時に高台からあたりを見回したが、そんな物はなかった筈。ブームは記憶を手繰り寄せた。見渡す限りの森に囲まれるように、町と城があるだけの光景が、瞼の裏に浮ぶ。

「トーテム山って言うのは、町を出て西にある小高い丘の事ですけどね」

「あぁ、私が通ってきた所です。高台か、丘だと思ってました」

「あはは。まぁ、何でもいいんですけどね。あそこの山には、大工一家が住んでいるのですがね。それが私の知り合いで、ブームさんがそっちに仕入れに行くって話をしたら、頼みたい事があるって…」

 頼みたい事?

 ブームは再び首をかしげた。大工が武器屋に何の用があると言うのだろう?

「近いうちに来ると思いますから、よろしくお願いします」

 返事をする間もなく、トリムはそう言って店を出て行った。

ゲーム『 The Shop2 』の最初のマップを小説にしてみました。

ゲームをプレイしたことの無い人も、これを読んでプレイしていただければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ