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隔たり

作者: 七星
掲載日:2015/10/21

 女子は嫌いだ。

 何が嫌いなのかなんて理由は色々あるが、一番は多分、女子という身分に甘えているところだと思う。

 女子なんだからもうちょっと優しくしてよ、とか、私の気持ちをもっと考えてよ、とか。そういうのが、鬱陶しい。

「女子だからなんなんだ、同じ人間だろ」

 聞こえようによっては名言でも言っているようで、その実文句を言っているだけの陸の言葉を、親友の悠人は微苦笑を浮かべてやんわりと否定した。

「陸、それは言い過ぎだよ」

 何が、と聞く前にさらに言葉が重ねられる。

「確かに同じ人間だけど、やっぱり違うじゃん、女と男じゃ。女子は男子みたいに体強くないんだし、優しくするのは当然だろう」

 悠人は爽やかで優しいと評判のいわゆるイケメンだ。バレンタインに何十個ものチョコをもらうのなんて当たり前。一ヶ月に一度は告白されているし、後輩先輩問わずみんなに顔を知られている。

 別に羨ましいとは思わない。何しろ女子は嫌いだから、逆に可哀想だなと思う。本人は好かれることは純粋に嬉しいみたいだが。

 そんな悠人の言葉は、陸を納得させるまでには至らなかった。

「だからなんだよ。そりゃあ、好きで女に生まれたわけじゃないだろうけど、それはこっちだって同じだよ。なんで男子に生まれたってだけで、女子を守らなきゃならないんだ」

「……まあ、いつか陸にも分かるよ」

 今度はハッキリと苦笑して、彼は委員会の仕事に向かった。

 最後まで納得はできなかった。




「望月綺音」と書かれた黒板の前で、一人の少女が頭を下げた。

「モチヅキアヤネです。よろしく」

 顔を上げると同時に、整った顔に長い髪がかかる。単純に、綺麗だ、と思った。たった4つの文字が黒板から浮いて、陸の目の前にちらつくように感じた。

 ヒュウッと誰かが口笛を吹いた。女子はキラキラした瞳で彼女を見つめ、男子はひたすらニヤニヤしている。彼女の瞳は全てを見透かしているようで、陸はとっさに目をそらした。

「よろしくね」

 幸か不幸か彼女は陸の隣の席だった。誰かがからかうように言う。

「大丈夫かよ、そいつ女嫌いなのに」

 舌打ちをしたい気分になった。何もここで言わなくてもいいだろうに。

 すると、彼女は目をパシパシと瞬かせ、ちょっと不思議そうに言った。

「そうなの?」

「ああ……まあ」

 スパッと肯定するのもどうなのかと思い、曖昧に頷く。すると、彼女は少し黙考してから真剣な顔で言った。

「そう。……じゃあ無理して交流しようとしなくていいからね。でもよろしく」

 とんでもなく素直な返答に目を丸くする。自己紹介の時から思っていたが、この転校生は今まで会った女子とは何か違うようだ。何が違うかと言われると一番はやはり瞳だが、媚びたような笑い方をしないところも違う。

「よろしく」

 それだけ言い返して、すぐにふい、と視線をそらした。無愛想だったかな、と思う自分にイライラする。何を考えてるんだ、俺は。



「へえ、陸も遂に恋をしたか」

「……は?」

 悠人に転校生のことを相談したら、そんな素っ頓狂な答えが返ってきた。

「俺は転校生に会った時の状況説明をしただけなのに、なんでそうなるんだ」

 少しイラつきながら言う。全く、高校生っていうのは色恋沙汰が好きだから、すぐこういう方向に持っていきたがる。悪い傾向だ。

「ああ、いや違う違う、別にお前の気持ちを決めつけるつもりはないんだ」

「じゃあ何なんだ」

 表情から機嫌が悪いのを読み取ったような悠人の話し方に、間髪入れずに答えを返す。しかし悠人は動じない。

「ほら、女子なんて女子なんてって言ってた陸がさ、女子のこと褒め始めたら、誰だってそうなのかなって思うだろ」

「……褒めてたか」

 全く抑揚のない声が出た。自分が自分ではなくなってしまったかのような、奇妙な感覚を覚える。

 しかし悠人はそんな陸に微笑み、肩をポンポンと叩いた。

「今は慣れないかもしれないけど、それが普通の感覚なんだから、すぐ慣れるよ」

 言いたいことをぐっと飲み込んで、陸はそうだな、と返した。本当は、自分がこれに慣れるなんて、絶対無理だと思っていた。



 彼女は天文部員になった。

 本当に天体に心酔しているようで、口を開けば星か月の話しかしなかった。

 彼女にわらわらと集まっていた取り巻きたちも、次第に話についていけなくなったらしい。彼女はぽつねんと一人でいることが多くなっていた。

「……何を、読んでるんだ?」

 彼女が一人でいるとき、陸はよく話しかけていた。ふっと顔を上げて彼女が自分を認識して、溢れるような微笑みを見せたとき、陸は途方もない砂漠のなかのオアシスに辿り着いたかのような達成感を得るのだ。たとえその彼女の微笑みが、天体に興味を持つ者全てに向けられているものだとしても。

「今日は、ギリシャ神話を読んでいるんだよ」

「ギリシャ神話?」

「そう」

 言って、彼女は嬉々として話を始める。ギリシャ神話なんて露ほども興味のなかった陸からしてみれば、ティターン戦争やらクロノスやらハデスやらと言われてもちんぷんかんぷんだが、とにかく彼女の目を見て話を聞いていた。

 すると突然、彼女はハッとしたように動きを止め、照れたように笑った。

「……ごめんごめん、つまらない話しちゃったね」

 濡れた瞳が、真っ直ぐにこちらを見た。

 どきりとする。彼女はときたまこんな発言をするから困る。人の心の中にずぶずぶと入り込むような、そんな言葉を無意識のうちに口にするから。

「そんなことない。俺も興味あるし……その、望月の話、楽しいし」

 陸は顔を逸らしながらぼそりと言った。

 悠人が見たら「30点」とつけるだろう反応だったが、綺音からは何故か笑った気配がした。

「良かった。じゃあもっと話すね」

「えっ……」

「あれ、やっぱりダメだった?」

 いたずらっ子のような微笑み。しかしそこに隠されているのは、確かな寂しさだった。

 ああ、やっぱり女子は嫌いだ。そんな風に笑うなんて。嫌だなんて、言えなくなってしまう。

 結局、陸は最後まで綺音の話を聞いた。綺麗な瞳で語る彼女の話は、美しくて、儚かった。



「好きなんです」

 わずかに瞳を潤ませて、俯き加減でそう言う女子が、目の前にいた。

 陸は心の中で舌打ちをする。来るんじゃなかった。どうせこんなことになるだろうことは分かっていたのに。『放課後に体育館裏に来てください』なんて、絵に描いたようなフラグだったというのに。

 悠人ほどではないが、陸もそこそこモテるほうだ。こうしてたまに呼び出されることもある。普段だったら行かないのだが、今日は呼び出しの手紙を友人達に発見されてしまっていた。

 行けよ行けよと急かした友人達を責めつつ、陸はふうと息を吐いた。頭をガシガシとかく。

「……あのさ」

 バッと顔を上げた女子の瞳にうんざりした。望月綺音とは比べものにならないほど濁っている。気持ち悪さが肥大した。

「悪いけど、俺、君に興味はないんだ。ていうか俺、君と話したことないよね」

「そ、それはそうですけど! でも私、ずっと先輩のこと見てたんです! 身長体重生年月日はもちろん、先輩のよく行く図書館とか、好きな作家さんとかまで全部知ってます! だから、だからどうか付き合ってくれませんか……?」

「……」

 だから、の意味を履き違えてるんじゃないだろうかと思わざるを得ない彼女の言葉。陸にとってはそれで十分だった。自分を見る目がどれだけ陶酔の色に染まっていても、彼の心は全く動かない。動けない。

 一際大きなため息をついて、陸は突き放すように一言告げた。

「無理」

「……え?」

 渾身の告白をたった漢字二文字でバッサリと断ち切られ、告白した少女はそのまま固まった。陸は矢継ぎ早に告げる。

「俺は初めて会った子と付き合うほど軽くない。というか君のこと全く知らなかったのに君はなんで俺のことそんなに知ってるの」

「そ、それは、先輩のことが好きだからで……」

「それが怖いんだよ。自分のことを隅々まで知られてるかと思うと寒気がする。知りたいことがあるなら自分で聞きに来ればいいだろ。なんなんだ。俺は君みたいな怖い子と付き合おうと思えるほど肝が据わってない。無理だ。絶対、無理」

 語調を強めて一気に言い切ると、少女は絶句し、瞬く間に青ざめた。瞳は憤怒に染まっているが、何も言わずにそのまま踵を返し、脱兎のごとき勢いで姿を消した。

 何度目ともしれないため息が漏れる。あんな顔するくらいだったら告白なんてしなきゃいいだろう、今日は厄日だなと思いつつ、教室へ戻ろうとした時だった。

「ねえ」

 澄んだ声に、心臓が大きく音を立てた。それはただ単にいきなり声をかけられたからなのか、それとも彼女だったからなのか。その時は考える余裕などなかった。

 いつのまにかその場に、望月綺音が立っていた。

「あ、ああなんだ、望月か。どうしたんだ、こんなところで」

 ドクドクと音を立てる心臓をなだめながら、陸は平常心を保って聞いた。綺音はすっと陸に背を向けて、空を指差す。

「……夕焼けが、よく見えるから。ここ」

「夕焼け?……ああ、本当だ」

 確かにここからは夕焼けがよく見える。赤や青、紫。色んな色の雲が煙のように空にたなびいていて、とても幻想的だった。

 しばらくそれを眺めていると、不意にポツリと、綺音が声を漏らした。

「……ひどい振り方、するんだね」

「え……」

「さっきの子」

 ひやりと、背中が冷たい何かに撫ぜられたように感じる。見られていた、見られていたのだ。

 全身に鳥肌が立っている陸を見ることなく、綺音は言葉を続けた。凛とした背中が、近寄りがたい雰囲気を放つ。

「……きっとさ、陸君のことが本当に好きだったから、話しかけられなかったんだよ、あの子は」

 透き通った水晶のような声の温度は、いつもより酷く低い。

「そういう子もいるんだよ。みんながみんな、強いわけじゃないんだよ」

「……」

「告白するのがどれだけ勇気のいることか、陸君は知ってるの? それをあんな風に言われて、傷つかない子がいると思うの?」

 彼女は、ずっとこちらを見ていなかった。淡く染まっていく空を、じっと凝視している。

「望月、あのな、俺は……」

 そこまで言って、口ごもる。

 今自分は何が言いたいのか、陸にはよく分からなかった。ただ確かなのは、さっきの自分の行動が確実に彼女を怒らせていて、自分は彼女に嫌われるかもしれないということで……そして陸は、それだけは嫌だと思った。絶対に、嫌だと思った。

「……陸君は、私以外の女の子とはあまり喋らないよね」

 突然綺音の話は一変して、それと同時に、さっきまでの憤るような声は瞬く間にしぼんでいった。

 何の話だと訝る陸に、綺音はぽつりと言う。

「もしかして陸君は……女の子のことがあんまり好きじゃないの?」

 核心を突く質問と共に、綺音はこちらを見た。突然自分の本心を言い当てられ、陸の心は荒れ狂っていて、彼女相手に取り繕うことは出来なかった。陸の顔を見た綺音は、ハッとしたように目を見開く。

「やっぱり、そうなんだね」

 言って、彼女は下を向いた。声が震える。

「……じゃあ」

 小さい、小さい、喉の奥から搾り出したような声が、陸の頭を打つように響いた。

「……じゃあ、私は、一体陸君の何なんだろうね?」

 陸の心は完全にフリーズした。揶揄するような言葉とは裏腹に、綺音の顔は、今にも泣き出しそうなほどに歪んでいた。

 言の葉で出来た刃を陸に突き刺して、彼女は返事を聞くことなく走り去る。けれど彼女の体にも、もっと深く刃が突き刺さっていたのだろう。そしてそれを刺したのは、他ならない陸なのだ。

 淡く儚い影を残して、綺音は夕焼けの中にとけるように消えていく。

 ぴくりとも体を動かせないまま、陸はそれをじっと見つめていた。




 望月綺音はそれからというもの、陸に話しかけることをしなくなった。笑顔を向けることさえせず、会話といえば授業や係などでの、事務的で無機質なものばかりになった。休み時間に陸が話しかけようとしても、彼女はするりと逃げて部室へとこもってしまうものだから、話などできない。そんな状態が、かれこれ二週間ほど続いた。

「陸、お前最近どうしたの」

「え……何が?」

「何がじゃねえよ。望月さんと何かあったんだろ」

 迷うことなく告げた悠人の言葉に、陸はハッキリと目を見開く。

「なんで……」

「見れば分かる。そんなもん」

 力強い親友の言葉に、陸は無性に泣きたくなった。

「なんか、嫌われた、みたいだ」

 口に出してみると、ずっしりとその言葉が心にのしかかった。そうか、嫌われたのか、俺は。

「んなわけないだろ」

 陸の弱気な心を見抜いたかのように、悠人はきっぱりそう告げた。

「望月さんがお前のこと嫌いになるわけないだろ。それくらい俺にだって分かる」

「……なんで断言できるんだよ」

 大分投げやりな口調になっていた陸を数秒見つめて、悠人はゆっくりと、小さな子に教えるように言った。

「あのな、陸。自分の周りにいる奴らってのは三種類に分類できるんだ」

 三本の指を立てて、悠人は言う。思わず訝しげな顔をした陸だったが、悠人は全く気にせずに話を続けた。

「お前が何をしてもお前のことを嫌う人。お前の行動次第でお前のことを好きになったり嫌いになったりする人。そして最後は、お前が何をしてもお前のことを好きなままでいる人」

「……」

「俺と望月さんは、3番目だ」

 そう言った悠人の目は、あの夕焼けの日の綺音の瞳と、よく似ていた。

 何か言おうとして、陸は口を閉じた。代わりに、ゆっくりと立ち上がる。

「……いってくる」

 何も聞かずに、悠人はぐっと拳を前に突き出した。

「ああ、いってこい」

 瞬間、陸は走った。走って走って、風を切りながら走った。何も考えず、目の前の景色が移り変わるのを見ながら、走り続けた。




 陸が向かったのは、天文部の部室だった。本当は天文部員しか入れない場所だが、そんなことはどうでもいい。今はそんなことより優先すべきことがある。

 すうっとひとつ深呼吸をして、陸はがちゃりとドアを開けた。

 そこには、星の写真を机いっぱいに並べて眺め見ている、綺音の姿があった。

「え……」

 彼女は陸を見るなり一瞬固まったが、すぐに背を向けた。階段へと一心に走る。

「あ、おい、望月!」

 慌てて陸はその後を追いかけた。たんたんたん、と階段が音を鳴らす。

「待てよ、望月!」

 後少し、というところで、綺音は奥の部屋へと逃げ込んだ。ドアの前で立ち尽くして、陸は部屋の中へと呼びかける。

「なあ望月、俺、お前に言いたいことがあるんだ。開けてくれよ、ここ」

「……帰って」

 何の感情もこもっていない、機械的な声が返ってきた。一瞬言葉に詰まったが、陸はすぐに会話を再開する。こんなところで諦めてはいられないのだ。

「嫌だ。帰らない。お願いだからここを開けて話をさせてくれ」

「……私は話すことなんてないよ」

「俺が話したいんだ。お前に、謝りたいことがあるんだ。ちゃんと面と向かって話したい。何も変わらないかもしれないけど、お前は俺のことが嫌いかもしれないけど、俺はお前ときちんと話をしたいんだ」

 沈黙が、その場を満たした。固唾を飲んで、彼女の次の言葉を待つ。

 長い長い間の後、そろそろ陸が諦めようかと思った頃だった。きいい、と細い音を立てて、重い鉄製の扉が開いた。

「入って」

 静かな声。綺麗な、陸の好きな声。

「お邪魔します」

 勝手に部室に入っておいて今更お邪魔しますも何もないのだが、陸はするりとその言葉を出し、導かれるままに部屋へと入った。

「……!」

 息を呑む。

 そこには、優に二、三メートルは超えるであろう、白く巨大な、天体望遠鏡があった。

 綺音は愛おしそうにその巨体を撫でながら、陸へと視線をずらす。

「素敵でしょ? 私、この望遠鏡大好きなの。いつもいつも、綺麗に星を映してくれるから」

 そう言って微笑む彼女はとても綺麗で、でもとても空虚で、陸はほぼ無意識的に、頭を下げていた。

「ごめん、望月。俺は、望月の気持ちを全く考えてなかった。というか、女子の気持ちを考えたことがなかった」

「……」

「女子はいつも何かしらに媚びてる生き物で、男とは……自分とは違うんだって心の中で思ってたんだと思う」

 すっと、顔を上げる。綺麗な、綺麗な彼女の瞳をまっすぐに見つめた。

「でもその考え方はもうやめるよ。女子とか男子とか、そういうのはどうでもよくなった」

「……どうして?」

 ぼんやりと、力の入らないような声だった。ふわふわとどこかに飛んで行ってしまうような、儚さを秘めている。

 だから、陸はハッキリと告げた。その儚さを、掴み取るように。

「望月のことを、好きになったから」

 刹那、零れ落ちそうなほどに、綺音は目を丸くした。

「……私のこと、嫌いじゃないの」

「嫌いになんてならない。なるつもりもない」

「女子として、見てくれてたの」

「初めて会った時からそういう目で見てた」

 言葉を重ねるうちに、彼女の声は震えていく。どんどんと質問を重ね、最後には音にならないほどか細い声になっていた。

「私のこと、嫌いじゃ……」

「好きだよ」

 きっぱりと告げる。それだけは、胸を張って、自信を持って。きっと陸にとっての、最初で最後の感情だから。

 それを聞いた瞬間、綺音は顔を手で覆って、その場にくずおれた。嗚咽が漏れる。

 陸が慌てて駆け寄ると、綺音は必死に陸の服を掴み、言葉にならない声を上げる。陸はその言葉を全て受け止めながら、彼女が落ち着くまで、その背をずっと撫で続けていた。




「私、好きな人に気持ち悪いって言われたことがあるんだ」

 帰り道、彼女はそっと告白した。

「だから、また傷つくんじゃないかって思ったら、急に怖くなった」

 おかしいよね、と笑う。

「もう五年も前のことなのに、まだ引きずってるなんて」

 乾いた笑い声。似合わないな、と思った。

「無理して笑うなよ。別にいいだろ。そんなこと気にしなくたって」

「陸君みたいにひどい振り方する人だっているのに?」

 すかさず突っ込まれ、陸は苦虫を噛み潰したような顔になる。

「悪かったよ。後であの子にも謝っておく」

「うん、そうしておいて」

 満足気に微笑む。その顔を見てると、やっぱりそっちのほうがいいと思えてくるから不思議だ。

「……あ」

「ん?」

「夕焼け」

 彼女の指差す先。山の向こうに沈んでいく蜜柑色の太陽があった。相変わらず色とりどりの雲は揺らめいていて、綺麗な絵を描いている。

「私ね……星も好きだけど、夕焼けも好きなんだ」

「何で?」

「だって、星とは違って、毎日違う場所にいて、毎日違う絵を描いているんだよ。それってすごいことだと思わない?」

 彼女の言いたいことは、ぼんやりと理解できた。

「同じ絵、一つもないもんな」

「そうなの。それってすごいことじゃない?」

 嬉々として笑う彼女の顔。好きだな、と思った。

「……ねえ、陸君」

「ん?」

 ふふ、と笑う綺音。何か企んでそうな顔だ。

「なんだよ。なんか言いたいことでもあるのか?」

「うん」

「じゃあ言えよ。なんだよ」

 また、ふふ、と笑って、彼女は陸をまっすぐに見た。

「好きだよ」

 一瞬時が止まったかのように固まった陸だったが、すぐにふっと微笑んだ。

「知ってるよ」

「……だよね。でもいいんだ。言いたかっただけだから」

 拗ねたように、でも確実に頬を染めて、綺音は陸の手を引いた。

「行こうよ」

「……ああ」

 二つの影は、夕日に吸い込まれるように柔らかに、緩やかにとけていった。

みなさんの嫌いなものは何でしょう。私は勉強が嫌いです。なんか前にも同じようなこと言った気がするな。まあいいや。


女子が嫌いな男の子の話です。こういう人、少なからずいるんじゃないでしょうか。私は別にそういう人がいてもいいとは思いますけど、社会に出た時大変じゃないかなとかも思ったりしてます。大きなお世話だったらすみません。


さて、今回は最後がホントにリア充話になってしまいました。砂糖吐きそうな文章ですので、そこはあしからず。


近いうちにまた投稿しようかなと思っていますので、何卒よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  誰にもトラウマがあって、それを引き摺りながら生きているのだと感じました。 [一言] 3番目の人を見つけられたらいいですね。
2015/10/21 21:32 退会済み
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