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7話

嘗ては険しい山だった、だが今は開拓され人の努力により快適な環境となるように工事され、この島の中でも裕福な、大陸では中流階級クラス程度が住むような場所となっている。


一般人の間でも、雄大な自然と静かな大海を余すことなく臨むことができる観光スポットとして有名だった。


当然ながら彼女もここが好きだった。


昼は日光によって照らされた気温の高い日でも、涼しく感じ、海は太陽を浴び七色に輝き、森は新緑の心地いい色合いを目に伝える。

一方夜は月の光が海に差し込み、水平線の先へ続く光の道を創り出す、木々は白く冷たく輝き、一年中蒸し暑い気候のこの島を一転、冬の朝の風景に変える、新月の日は小さな星達がこの日を待ちわびたかのように瞬き、海には月の道の代わりに、星の川が生まれていた。



「久しぶり、じゃないんだけど、そう感じちゃんだよね」彼女は汗を拭いながら、目の前にいる金髪の男を見つめる。

「というわけで、お久しぶり。あんたを最終的にはこの世から消してしまう者です」

そう言うと彼女はエキゾチックにスカートの端を持ち上げる仕草とともにお辞儀する。


そして彼女は彼の返事を待つ。距離はそこまで離れていない。彼女の身体能力ならすぐ様肉薄できる距離だった。



「...........お前は何者なんだ...........」だが彼は彼女の言葉など一切聞かずにただ驚きながら彼女を見つめる。

「...........いや、いい。もうお前は警戒対象以上の者だ」

彼はそう言うと槌矛を彼女に突きつける。

金色の分厚い先が彼女を殺す為に薄赤いぼやけた明かりの中不気味に光沢を放っている。


「それはどうもありがとう」彼女も右手に持ったペンを彼に突きつける。

朱銀色の美しい彩が薄赤いぼやけた明かりの中燦然と輝く。

「でもこっちも、あなたは教会に来て頂いたお偉方の金づるではなくなっておりますので」


二人はお互いを凝視する。一方は壊すために、一方は狩り取るために。


ジリジリと摺り足で相手を伺うソフィア。一方でオリガは悠然と凝視していた。


先に動いた方が先手を取れる。だがそうするとカウンターを取られる危険性があった。

互いの力量を知っているならばカウンターを取られやすい先手は不利になるが今回は何もわからない。分かるとすればお互いが似た系統の魔法が使えるということだ。

つまり先手を取った方が戦闘の主導権を握れ有利に進められる。


それを知っているソフィアは動いてこない相手に対し攻撃をかける。

ペン先から真っ赤なインクが彼女の手の動きとともに形作られていく。

 だがそれを見た瞬間彼は口を動かす。


 「地開の嘆き(ガリアス)」

彼は槌矛を突きつけたまま魔法を詠唱破棄する。圧倒的な戦歴を持つ彼は彼女に先手を取らせてはいけないと判断した。


不可視の衝撃波が空気を抉りながら真っ直ぐ彼女を狙い突き進む。


だが彼女も対応が早かった。滑らかな動きで真横に素早く身体を動かし衝撃波の射線から外れる。


背後で石畳が壊れる破壊音が響く。しかし彼女は動じずペンで図形を描いていく。

円を描き五芒星を描き中心に不可思議な鎖模様を描いていく。


意味は破壊、崩壊、粉砕


「32番目の魔法(サードトゥーマキナ)


魔方陣が輝き、彼に向かって魔法が放たれる。


「舐めるな」一方彼も反撃を予想していたのか、対応が早かった。槌矛を左手に持ち、右手を自らの胸に当てる。

「我が手に宿るは紫命の塊」

〈パープルオブジェクト〉


彼の手から発生した紫色の光が彼全体を包んでいく。


しかしソフィアはそんなこと御構い無しに再び魔法陣を描く。

正五角形、頂点と頂点を結ぶ全ての線、全ての辺の二等分線、そして全体を囲うように円を描く。


意味は波動


「36番目の魔法(サードシックスマキナ)

すると彼女の足元が振動する。そしてそれは地中を進む大蛇のように地面を抉りながら彼に真っ直ぐ向かっていく。


そしてそれが彼の足もとにたどり着いた瞬間爆発する。圧縮されたエネルギーが地面の蓋が取れた瞬間彼を襲う。


だが彼は煩わしそうに左手に持った槌矛を下に向ける。

〈地閉の嘆き(アラガス)〉

槌矛が一瞬光る。

するとせり上がってきていたはずのソフィアの衝撃波がまるでホースの先に栓をしたように押しとどめられる。そして行き場を失った衝撃波が彼の左右から粉塵と共に吹き出す。


「私は覇撃のオリガと呼ばれている」彼はこちらを見つめるソフィアに向かって悠然と言い放つ。

「衝撃波系の魔法を操る私に同系統の技は...........」


 しかしそんな戯言に彼女は何の興味もない。


その言葉が言い終わる直前、彼の目の前が爆発する。

「う...........くそっ!」


彼は身体に力を込め吹き飛ばされるのを防ぐ。だがそれでも数歩後ろに押し戻される。


「やっぱ、さっきのは防御魔法か」ソフィアは彼の周囲に展開されている紫色の霧を観察しながら呟く。

「なら...........」

彼女は彼の周りを円を描くように走り出す。

そして走りながらペンを使い魔法陣を描いていく。


一方オリガは槌矛を地面に突きつけ魔法を放つ。

「衝撃の竜巻(ガルダレディエス)


彼を中心に空気が動き出す。最初は弱いゆっくりとしたものだがすぐさま力強い台風のような突風が吹き始める。


「...........く...........」

風が強くなっていくとともに軽い細かい瓦礫が宙を舞い始める。

「あ~~、鬱陶しいのよ!」ソフィアはあらゆる方向から無法則に吹き荒れる風と塵によって視界が奪われる。彼女の周りは砂嵐のように薄茶色に染まっていた。

しかしここに来る途中に使った魔法の効果により塵が皮膚にあたり怪我をするのは防いでいた。




瓦礫が飛び交い轟音とともにかき混ぜられていく。そしてついに風によって石畳そのもが抉られ巨大な塊が宙を浮き始める。その巨大な塊はやがて彼の周囲を回転するスピードを増していく。

 「もう手加減はできんぞ」彼は竜巻の中から彼女に呼びかける。

 

 「うるさい!今まで手加減なんてしてないのによく言うわ!」

 彼女は必至で叫び返す。彼女からは彼の姿は見えなかったが、彼からはまるで見えているかのように喋ってくる。

 

 「仕方がない」

オリガはそう言うと槌矛を持ち上げ巨大な塊に向かって真っ直ぐ向ける。

 〈地閉の嘆き(アラガス)〉

 するとその巨大な瓦礫は今まで宙を飛び交っていた力を無くす。だが支えが無くなろうと回転によって生み出された遠心力は消えない。


 直径が最低でも1メートルは会るかと思うほどの巨大な瓦礫が真っ直ぐ彼女に向かって猛スピードで迫る。


 「ちょっと」彼女は引きつったように笑いながらつぶやく。「冗談でしょ、笑えな・・・・・!!」

 そして彼女は走ってきた助走の力とともに体を地面にたたきつけられることも構わず全力で真横に飛ぶ。

 彼女が数瞬前までいた所から巨大な岩が砕ける音が響き渡る。

「ああーーくそ!!」直撃そのもは回避したものの着弾と同時に抉られた地面の破片が四方に飛び散る。


 そして拳大ほどの破片が彼女の頭部に真っ直ぐ飛ぶ。それに気づいたとき彼女に回避手段はなかった。


 一瞬目の前が真っ暗になる。意識が暗転し数瞬遅れてがれきが頭部に直撃したことを理解する。すぐさま気を取り直し目の前の世界が脳内に映し出されるが所々に彼女の視界を邪魔するように光の筋が入ってくる。

 「この・・・」

 額を押さえながら立ち上がるソフィア。指の間からドロリとした温かい液体が流れ落ちる。しかし右手にはしっかりと朱銀色のペンを持っていた。

 (くそ・・折れてる。)彼女は確かめるように額を押さえた指を一つ一つ僅かに動かす。しかし薬指と中指は激痛とともに動かすことができなかった。

 こんな攻撃をこれ以上何発も受けるわけにはいかない。直撃すれば即死、回避できてもその破片によるものだけでかなりのダメージだ。その上緊急回避を行った時にも地面にたたきつけられ何か所か切ってしまっている。

だが攻撃は一発だけでは終わらなかった。


 〈地閉の嘆き〉〈地閉の嘆き〉〈地閉の嘆き〉〈地閉の嘆き〉


 合計4っつもの瓦礫がソフィアを狙う。そのどれもが直径が1メートルはあり、さらに微妙に位置をずらすことにより彼女の回避可能範囲全体をカバーできるようにしている。彼は彼女に対応の余地を与えないつもりだ。

 「この・・チートかよ」

 だが彼女はふらつく視界の中目まぐるしいスピ―ドで思考する。

 (全部を防ぐのは無理・・・だったら、最小限に抑えればいい)


 ペンを動かし図形を描く。否、もはや描くという範疇を超えている。彼女が手を動かす前に、脳内の信号が腕の筋肉に伝わる前に、ペンからインクがこぼれ彼女の思い描くように図形を描いていく。

 三角形が二つ浮かびあがり頂点が合わさり、砂時計のような形となる。そしてそれを囲むように楔形の文字が描かれていく。

 〈33番目の魔法(サードトライマキナ)


 するとその魔方陣が金色に輝きだす。

 それは周りの空間ごと包み込むように広がっていく。それは迫りくる4っつの瓦礫も例外なく包み込んでいく。


 その瞬間、先ほどとは比べ物にならないほどの轟音が辺りに響き渡る。土煙がその振動に揺さぶられながら小さなきのこ雲を作り出し登っていき、また周囲に吹き荒れ視界を潰す。さらに空気の衝撃波が彼を押し後ずさりさせる。


 「なんだ・・・」彼は予想外の現象に目を見張る。

 「何が起こった?」彼の行ったことはただ魔法を一部だけ解除しただけだ。そのためには魔法の根本まで理解しそのとてつもなく複雑な式をいじらなければならないかなりの高等技術なのだが、とにかく彼が行ったのはそれだけだ。

 瓦礫に特別な力も魔法もつけていないし効果を付与したわけでもない。

 なのに体に力をいれ耐えなければならないほどの衝撃波が来るのはおかしいのだ。


彼は槌矛を一振りし自らの視界を邪魔するように立ち込める煙を吹き飛ばす。

 そして自らの周囲に展開している竜巻を僅かに消し彼女の姿を確認しようとする。だが濃密に立ち込める煙はそう簡単に吹き飛ばすことはできず、彼女の姿を確認できない。

 

 どうするべきか。

 

 そうたった一瞬だけ、一瞬だけ彼は思考を停止し注意を怠った。少なくとも一対一の戦闘で警戒をやめてしまうというのは絶対にしてはいけないことだ。それを彼は理解しているはずだった。

 しかしそうしてしまったのは年老いた人間の若さを侮る心があったが故だった。


 



〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)

〈36番目の魔法(サードシックスマキナ)


突如魔法の気配が発生する。

その場所は彼のほぼ真後ろ。すぐさま振り向けばソフィアが4個の魔法陣を展開している。

〈36番目の魔法〉〈32番目の魔法〉

〈36番目の魔法〉


地面を抉る三本の衝撃波が彼に向かって進む。


「効かないと言わなかったか」彼は冷静に竜巻に隠れながらも彼女にはっきりと聞こえる声で言う。

 彼は槌矛を一振りする。するとたったそれだけで地面を進む二本の衝撃波が掻き消される。さらに追撃に出たもう一つの魔法は彼を包む紫色の結界に防がれる。


「今度こそ終わりだ」

彼の槌矛が金色に光り輝く。


すると彼の周囲を囲む竜巻が少しずつ広がり始める。


「この魔法は全範囲を攻撃する。回避は不可能だ」


竜巻が広がっていくとともに塵と瓦礫の密度が小さくなり彼の姿が少しずつハッキリと見えてくる。

だが風のスピードは広がるとともに加速していっている。大きな瓦礫はお互いがぶつかり粉々に砕けているが、それによって鋭利な細かな塵が発生しより殺傷力を増していく。

 それは所謂かまいたち。強烈な風が皮膚を切り裂くその現象が細かいチリが研磨剤の役割をすることによってさらに殺傷力を増していく。


「ご丁寧に御説明をどうもありがとうございました」

彼女はそんな光景を見つめながらも強気な姿勢で勝気な発言をする。



「.................................」それを哀れな物でも見るかのような目で見つめる。

勝つことしか、殺すことしか頭に無いものは退くということを行わない。否、知らない。

戦いは退くときを見極める事こそが最も大事なことだ。それをしないものは皆負け死んでいく。彼の記憶にもそんな戦いが多々あった。

家族を殺された者、恋人を失った者、故郷を奪われた者。

そういう者の末路は例外無く同じだった。


だから彼は一瞬で終わらせてやろうと思う。育ての親と同じように。


そして竜巻が一瞬止まる。

瓦礫を吸収し続け、破壊し、細かく鋭利にしていく。それと共に、轟音の周波数が高く、鋭い、切り裂くような音へと変わっていく。


「近所迷惑な音を...........」


ソフィアが薬指と中指が雨後化に手で左耳を抑えながら呟く。


そしてその瞬間。


「弾けろ」


凝縮した濃密な粉塵、極小のナイフが全方向、隙間など一切を作らず、ただ無情に全てを切り刻んでいく。それが一気に加速しソフィアを無慈悲に襲う。

もう後戻りができない。後ろに逃げても捕らえられる。


ソフィアは微妙に笑いながら少しだけ後ずさる。


(やるっきゃないわね)


彼女はペンを構えものすごいスピードで図形を描いていく。



〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)

〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)

〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)

〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)


とにかく連発していくソフィアの魔法。


不可視の衝撃波が彼女の周囲の渦巻く塵を吹き飛ばし、風を相殺する。


「う......................く......................」しかし7割ほどは吹き飛ばせても、残りは容赦なく彼女の服を皮膚を切り刻んでいく。

ナイフで切られたような細い小さな傷跡が増えていき、血が涙のように垂れていく。息ができず頭に血が上ってくる。息を吸い込んだ瞬間恐らく肺がズタズタになるだろうからだ。



〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)

〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)


それでも彼女は魔法を連発していく。しかし防げる量は限られている上に中心に向かえば向かうほど塵の密度と風の強さが増していく。


オリガはもう勝ったことを確信していた。

そういった雑念によって先程背後を取られたことなど忘れて。



〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)

〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)


少しずつ彼女が魔法によって作り出した比較的安全な範囲が狭まっていく。

それと共に彼女の純白の服が茶色く、傷つけられていく。


(この...........変態が...........一張羅なんだよ、この服は)

彼女は歯を食いしばりながら心の中で叫ぶ。


そして、


「消えろ」彼は槌矛を真っ直ぐ彼女に向ける。

「我が智を力に換えよ」詠唱破棄せずに魔法を発動しようとしたのは彼なりの慈悲だったのかもしれない。


だがそれが命取りとなる。

「地開の...........」


そう言おうとした瞬間、塵の中から彼女の顔が見える。


恐怖に慄くか、泣いているか、どうだろうと彼には関係ないが、


だが彼の目に入ったソフィアの顔は...........微笑んでいた。


さっきまでの諦めたような、呆れたような笑顔ではなく、明らかな勝ち誇ったような、そんな笑みだった。


彼はそれを見てゾッとする。

(こいつは...........本当に人間か?)


彼の経験上こんな者はいなかった。いや、狂った戦闘狂いはいたが彼女のような正常な人間とは絶対になかった。


「あんたの方が終わりなのよ」少しずつ生傷が増えていく中、彼女は口の動きだけでそう言う。

「老齢のクソジジイがピチピチ十代美少女に勝てるわけないのよ」


〈36番目の魔法(サードシックスマキナ)


彼女は防御を一瞬やめ地中を進む攻撃魔法を放つ。

その結果極小のナイフが彼女を切り刻む。


「なんだ...........この程度」

彼は槌矛を振りかざし魔法を唱える。

〈地閉の


だがそれは叶わない。


突如頭を殴られるような衝撃が走る。


「く、なんだ?」紫色の結界が展開される。


それが背後からの攻撃と理解したが彼女は目の前にいる。という事は応援?いやそんなはずがない。


「クソっやっぱ自動展開か」ソフィアは一瞬弱まった竜巻の隙間を逃さず前に飛び込む。


すると先程の強風が嘘のように無風の空間が表れる。そこにはオリガもいる。


ソフィアはこのチャンスを逃さず一気に彼に詰め寄る。


一方オリガもそれを防ごうと槌矛を振りかざす。魔法使いは基本的に運動能力が低い。懐に入られれば彼に対応の手段はないのだ。


「ガリア...........うぐ!」

だが彼が魔法を打とうとすると見計らったかのように魔法が彼を襲う。


だがソフィアはそのようなモーションを行っていない。


「無詠唱?だがそんな」彼は呆然としながら呟く。

その間もソフィアは彼との距離を確実に詰める。


〈36番目の魔法(サードシックスマキナ)


地中を進む衝撃波が彼に向かう。


それを見た彼は魔法で相殺をせずにバックステップをしてその場から離れる。


(やっぱそうね)

ソフィアはある事を理解する。


〈36番目の魔法(サードシックスマキナ)〉 〈36番目の魔法(サードシックスマキナ)


二発の衝撃波が獲物を捕まえる蛇のように突き進んで行く。


〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)


さらに追い討ちを掛けるように魔法を放つ。


「うぐ...........!」彼は最初の一撃は結界によって防ぐことができたが二発目は再びバックステップして躱す。

しかしそうやって飛んだ瞬間彼女の魔法が直撃する。


「うぐぁ!」


彼は数メートル後ろに吹っ飛ぶ。宙に浮いているので身動きも取れず踏ん張ることもできない。


その間に一気に距離を詰めるソフィア。


「クソっ」彼は急いで起き上がる。こんなはずではなかった。こんなところで、こんな奴に。


だが彼の願いもむなしくソフィアはペン先を彼の鼻先に突きつける。


「悪いけど...........いやあんたの方が悪い人間だけど、容赦なんてしない」


そして彼女はそのまま魔法陣を描く。




この時、彼には、オリガにはまだ勝算があった。

紫色の結界はまだ展開されており彼女の正面から来る魔法一撃ぐらいは防げる余裕があった。

そして彼はすぐ様カウンターを放てるように準備する。

ここまで密着すれば衝撃波もないだろう。


〈32番目の魔法(サードトゥーマキナ)


彼女の渾身の一撃が放たれる。


その瞬間彼は勝利を確信する。


槌矛を握り締め彼女を見据える。


だがその時見たのは先程と同じ不敵に笑い、唇の動きだけで喋る姿。


「攻撃してくれてありがとう」


彼女がそう呟いた瞬間、彼女は後ろに吹っ飛ぶ。これはオリガの魔法によるものだった。本来なら彼女の攻撃のほうが先に発動するはずだった。しかしオリガの結界は何の反応も示さない。


だがその瞬間、


結界がひび割れる。まるでガラスに少しずつ圧力を加えていくように潰されていく。


「馬鹿な、この程度で」


しかしそれは正面からだけでない。


背後からも固い木を叩き割るような音が響く。


逆方向からの同時攻撃。自動防御するからこそ、魔力が分散し守りが薄くなる。


「馬鹿な、こんな」それは一瞬のこと。彼に防御魔法を展開する余裕は無い。


そしてついに堅牢な結界は敗れ彼を両サイドから圧し潰すように衝撃波が襲いかかる。


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