001 迦我見家の日常
ソレは、いつも家族が集まる居間に置かれている。
道具として考えるならソレを居間に置くのはおかしいけど、ちいさな頃からずっと見慣れてきたから、不思議と我が家では当たり前のことなのだと思ってた。
ソレの黒々とした光沢と無駄のないフォルムは、素人目にもこれは良いものだと思わせる何かがある。
刀匠であった祖父が丹精込めて作ったという、他に類のない作品。
婿養子の父は、自分の師匠であり義父でもある祖父の作品をこよなく愛しているから、他の御刀と同様にソレにも丹念な手入れを怠らなかった。
おっとりした母はそんな父の姿をいつもほほ笑みながら見守り、チートな兄は家業を継ぐ気もないくせに父の技を目で盗み、末っ子のわたしは自由気ままにちゃぶ台の上にあるお茶請けを食べまくる。
それが一週間前までの迦我見家の日常だった。
一章は短編としてまとめる予定で書いていたため、ひとつの場面の文字数少なめで、いろいろ端折っています。
(二章以降から一話の文字数や描写が増えます)
『魔法少女はじめました』と、同じ現代世界と異世界が出てきます。
(http://ncode.syosetu.com/n9910dq/)
登場人物同士の繋がりはありますが、本編には登場しません。
番外編短編集『うち兄 ぷらす』では、魔法少女の登場人物たちも参加します。