奴隷としての人生
「さっさと働け!!」
そのセリフと共に監視員に何度鎖で叩かれただろうか。
「うう…。」
ディオンはうめき声を上げながら重い木材を同じ境遇―つまりは奴隷である―の男と運んでいた。
「トロトロするな!あと10日以内にこのバラムス・タワーを完成させねばならんのだ!貴様等に休む暇などないんだぞ!どうせ職もなく餓死するだけの貴様等にありがたくも仕事と寝床をくださったバラムス様に感謝するんだな!!」
(あんな洞穴が寝床だって?魔物だってもう少しましな所に住んでるよ…。)
ディオンはこの労働が終わったら帰るであろう、日当たり風通し最悪、不衛生極まりない寝床を思いだし、顔をしかめる。
「何がバラムス様に感謝するんだな!!だ。そもそも俺たちを奴隷にしたのもアイツじゃないか。」
「あっ、そんなことを言ったら!!」
「ほぅ?貴様、バラムス様に逆らうと受け取って構わないな。」
男の呟きを聞き取った監視員が鎖を構えて近づいてきた。
「しまっ「バラムス様に逆った罪は死を以て償え!我が祝詞に応え敵を焼き縛れ、ブレイドウィンド!」
「ヴあああああああ!!」
男は監視員の中の精霊、おそらく魔法の効果からして風の精霊だろう。
その魔法により男は肉片の欠片も残さず消え去った。
「貴様があの愚か者のパートナーか?」
「…はい。」
「連帯責任だ、貴様は今日は食事抜きだ。」
「……分かりました。」
「貴様等もこの愚か者のようになりたくなければ働け!!今日はここまで!食事を済ませた後直ぐに就寝せよ!!」 ディオンは寝床で横になっていた。
空腹の時は何も考えず、なにもしない、それが長年奴隷として培ってきたディオンの「生きる知恵」だった。
「ディオン、ディオン。」
自分の名を呼ばれていることに気付いたディオンは声のする方へ振り向いた。
「リディ?」
そこにいたのは顔を小汚ない(汚いという点ではディオンも大差ないが)布で覆った男?(性別は知らないが口調から判断して)がこちらへと近づいてきた。
「どうしたのリディ。」
「どうしたもこうしたもない、お前今日何も食べてないだろう、これを食え。」
そう言って手渡されたのはお世辞にも綺麗とは言えないカビの生えたパンと水だった。
「ダメだよ、これはリディの取り分だ。」
「そんなこと言ってる場合か?お前はもう3日も何も食べてないんだぞ!」
リディの言う通り、昨日は労働ノルマに達しなかったため、一昨日は監視員の八つ当たりのためにディオンは3日間水以外何も口に含んでいないのだ。
「それでも僕は大丈夫だから、君が食べなよ。」
「だが!「早くしないとまた監視員が見回りに来る。見つかると面倒だよ。」
「いや、さっき酒盛りしてたからしばらくは来ない筈だ。今日はお前に話があってきた。」
「話?」
ディオンの返しにリディは頷くとこう切り出した。
「革命を起こさないか?」