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曖昧

曖昧

作者: 花子

ドスン

「痛い、なんなの」

ベットから落ちた衝撃で目が覚めた。

窓の外はすでに明るく、太陽が昇ってる。やばい今何時?

慌てて携帯を探す・・・・あれここ何処・・見知らぬ部屋

「ヘックシュン」

肌寒いと思ったらくしゃみがでた。

そして自分の姿を見て吃驚、何も着てない、慌てて周りに落ちていた自分の服を身に着けた。

鞄も見つけ中の携帯を確認すると朝の7時、早くしないと仕事に間にあわない。

「もう起きたの?」

ベットの中から声がした。

やばい一人じゃなかったんだ。

見ると職場の中で結婚したい男性ナンバー1の野中剛28歳が寝ぼけた顔で私を見てる。

なんで彼が?

「早くしないと仕事遅刻しますよ。私はこれで失礼します。」

一応声を掛け部屋からとびだした。

ここマンションなんだ。いい所に住んでるんだと関心しながらタクシーを拾う。

これなら一度家に帰って着替えても時間に余裕がある。

安心したら、不安になってきた。なんで私と彼が?

伊藤真奈美・25歳男性とお付き合いの経験無し・見た目普通、しいて言うなら地味らしい。

周りの友達に服の趣味が最悪と言われ同僚の加奈には、

「今時おばちゃんでもそんな渋い服着ないよ」

とよく怒られる。

私の趣味はほっといてって感じだけど・・・

昨日加奈に、加奈のロッカーに入れてある予備の服を着せられ、無理やり合コン場所の居酒屋に

連れて行かれて、やけくそで飲めないお酒を飲んだ所までは、憶えている。

後は思いだせない。

まったく思いだせない。

なぜ、彼と居たのか?裸だったのか?私知らない間に処女喪失?

考えてる間に家に着いた。料金を払い家に駆け込む。

母の小言はスルーして急いで着替えメークして会社に向かう。

こんなにお天気いいのに私の心はブルーもうお酒は飲まないとこの朝誓った。

会社に着くとなぜか、みんなが私を見てる。

なぜ?受付の女性は私を睨んでる感じ、私の服装そんな酷いかな?

なんて考えていると加奈がすっとんできた。

加奈に引っ張られ更衣室に連れて行かれ

「真奈美大丈夫なの?突然あんな事しちゃって、ご両親吃驚したでしょう。真奈美も付き合ってるなら親友の私に話してよ。突然入籍するなんて・・・・朝からこの話題で会社中大騒ぎだよ。」

エー何言ってるの?加奈が宇宙人に見える。

野中さんと私、接点ないよ。

付き合ってるなんて事絶対ない。私が保証する。

25年間男性とお付き合いした事が無い私が入籍?無理でしょう。

それも野中さんなんて、ここは私が大人の対応しなきゃね。

「加奈、まだ寝ぼけているの?私と野中じゃありえないでしょう。しっかりしてね。」

加奈は鳩が豆鉄砲くらったような顔をしている。はっとして

「真奈美昨日の事憶えてないの?私達に保証人になってもらって入籍届け提出したよ。

真奈美は飲みすぎでできあがっていたけど、野中さん飲んでなかったから本気だよ。

あんなうれしそうな野中さんみたら二人は隠れて付き合ってたと思っちゃうよ。

本当に何も憶えてないの?真奈美は、野中真奈美になったんだよ。」

加奈の目は本気だ。私どうしたらいいの?朝以上に混乱してきた。

まずは野中さんに会わなきゃいけない。

でも彼は営業だからなかなか捉まらないはず、どうする?一人で考えても仕方がない。

私は、自分の仕事をする事にした。

二人とも慌てて制服に着替え経理課に向かう。

こんな時は加奈と同じ課で良かったとつくづく思う。

一人だったらこの視線には耐えられない。

彼がどのくらい人気があるか思い知らされる。

パソコンで書類作成しながら、彼との接点について考えた。

会話をしたのは、今朝が初めて、きっと彼は私と誰かを勘違いしてるはず、それでないといきなり入籍なんてしないよね。

私は彼の携帯の番号を知らない、マンションの場所も朝慌てていたから憶えてない。

連絡の付けようのない事に気付いた。

同じ会社だからいつか会う事があるだろうと呑気に思う。

こんな時はあの母の娘で良かったとつくづく思う。

のんびりしていて能天気、きっと私が帰ってなかった事も朝私を起こしに行って始めて気付いたはず、

その時の様子を想像すると面白い。

朝の小言はスルーしたけどあんまり怒ってなかった。

しっかり睡眠取りました、の顔をしていた母

でも彼氏紹介する前に旦那様を紹介する事になったら腰をぬかすだろう。

やっと一日の仕事を終えほってしていると女性社員が経理の入り口を見つめ騒がしくなった。

話題の野中さんが経理課の入り口に立っている。

勘違いを教えてあげなきゃと思っていると私の前にやってきて、私の手を取り立たせると

部長のデスクの前に連れて行く。

どうしたの?彼の顔を見るとうれしそう。

「結婚の報告が後になってしまい申し訳ありませんでした。このたび伊藤真奈美は野中剛と入籍を済ませ野中真奈美になりました。結婚式は改めてやりますのでその時はよろしくお願いします。」

と部長に頭を下げる。

私は呆然とその姿を見ていた。部長が

「おめでとう。伊藤さんなら良いお嫁さんになる。伊藤さんじゃなくもう野中さんか。」

なんて笑いながら言ってくるけど、誰と誰の事を話しているのか解からない。

加奈に助けを求めて目で訴えるけど口ぱくで

「あ・き・ら・め・ろ」

と言っている。

彼に連れられ会社を出た瞬間

「野中さんは、私と誰かを勘違いしています。私野中さんと話したのも今朝が初めてですよね。それなのに入籍したと言われても困ります。両親にもなんて言っていいのか解かりません。」

私が彼に問いかけると彼は困ったような顔をして

「僕は真奈美さんと誰か他の人と勘違いなんてしてないよ。僕は君が好きで昨日の夜プロポーズをした。そして君はそれを受けてくれた。だから君の気が変わらないうちに入籍を先に済ませた。

君の両親にも昼間のうちにあいさつに伺ってきたから君が心配する事は何もないから安心して良いよ。

それとも僕が嫌い?」

そんな泣きそうな顔で嫌いと聞かれても返答に困る

好きでもないけど嫌いでもない。

これから少しずつ彼の事を知っていけばいいのかしら、今頃母も家で入籍したなら仕方がないとか思っているんだろう。

父は、母の決めた事に逆らわないし・・・私が思いに耽って笑ってしまうと隣の彼は

「僕と結婚してください。恋愛しながら幸せな家庭を築いていこう。僕の事を幸せにして下さい。」

手を差し出してきた。私が

「よろしくお願いします」

と彼の手の平を掴んだ瞬間、彼の胸の中に閉じ込められた。

「これから一緒に幸せになろうね。一生離さない。」

最後の方は私の耳には届かなかった。


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