ショートスリーパーな私の天職
あらすじの続きという体です
改めて、初めまして。
私はカーツ・シュペーアーと申します。
ヘルム帝国の密偵をやらせて頂いております。
好きなものはジャムパン、甘い物が好きです。
嫌いなものはネズミ、もう見飽きました。
滅びればいいのに。
んん、失礼しました。
えっと、昔から、ショートスリーパーなのが私のちょっとした自慢です。
まあ、そのせいで一度死んでるんですがね。
あ、本当ですよ?
私、前世の記憶というものがありまして、地球という星の日本という国で生きていた記憶があるんです。
日本という場所はここよりもとても科学技術が発達していました。
隼よりも速い空飛ぶ乗り物に、世界中の知識を即座に調べられる道具。
そして、夜でも昼のように明るく照らす照明。
ここ、大事です。
つまり、夜でも働くことができるんですよ。
私が勤めていた会社はいわゆるブラック企業というやつでして、サービス残業が当たり前になっていました。
日付が変わっても終わらない業務の山、減った自宅の滞在時間と反比例するように増えるエナジードリンクの缶。
でも、私は先ほども申しました通り、ショートスリーパーで、短い睡眠時間で足りる体質でした。
なので、積極的に業務を引き受けて他の方が十分に寝られるようにしていたんです。
助け合いを教育され続けた日本人の性ですね。
でも、それが良くありませんでした。
独りで仕事をしていたら、段々と食事までおろそかにするようになっていって。
どうやら、睡眠時間が削られるのには耐えられても、食事が削られるのには耐えられなかったようで、倒れてしまったんです。
あの飽食の時代の日本で、栄養失調で倒れるって相当ですよ。
そして、その倒れた瞬間で記憶が途切れているので、それが私の最期だったのでしょう。
こういった記憶が、物心ついた頃から私にはありました。
最初は違和感がすごかったですよ。
日本は平和な場所でしたから、そこら辺に死体があっても誰も気にしないことにどれだけ驚いたことか。
まあ、今はもう慣れましたけど。
そんな平和な記憶を持つ私が、どうして密偵をやることになったか疑問ですか?
そうですよね、密偵ほど命が軽い職業は他にないですからね。
それは、私の生まれが関係しています。
私は赤子の頃に捨てられて、孤児院で育ちました。
比較的裕福な孤児院だったので、幼い頃から色々な教育を受けさせて頂きました。
私は前世の記憶のおかげで、知識は何物にも代え難い財産であることを知っていましたので、必死に勉強しました。
相変わらずショートスリーパーでしたので、みんなが寝静まった後もこっそり勉強をしてたんですよ。
ある時、それが院長先生にバレまして。
もちろん前世だの日本だのの話はできませんが、睡眠時間が少なくてすむこと、勉強に意欲的なことはお話ししました。
すると、次の日から私だけもっと年齢の大きい子達の授業に回されるようになりました。
そこでは座学だけでなく、実戦的な技術も教わりました。
ナイフや針などの暗記の扱い、変装の仕方、そして、魔法。
そう、魔法です。
私も人並みに魔法というものに憧れがあったので、それはもう意欲的に学びました。
あ、地球には魔法はなくて、想像上のものだったんですよ。
誰しもが一度は、魔法が使えたらと願ったことがあるはずです。
だから、私にとって魔法以外の授業は、魔法を学ぶ時間を奪われないためにこなすだけのものでした。
常に一番でないと自由時間なんてもらえませんでしたから、ある意味必死でしたよ。
言い訳をさせてもらいますと、多少精神が肉体に引っ張られている部分がありまして、感情の制御が難しくなっていたんです。
そこに、想像上のものだった魔法を学べるという事になったわけですよ。
夢中になるのも仕方がないと思いません?
何のために教えられているかも考える事なく学び続け、私は教員さえ負かせるほどに強くなりました。
その時になってやっと気づいたんです。
あれ?これまで学んできたことって、明らかに裏社会で活躍するものじゃない?って。
教わった技術を駆使して孤児院を調べてみれば、案の定。
その孤児院は孤児を集めて優秀な密偵を育てるために帝国が運営している場所だったんです。
裕福だったのは、国から秘密の援助があったからだったんですね。
私の前世の倫理観から行けば色々アウトでしたし、私の実力なら逃げることも不可能ではありませんでした。
でも、そこまで育つ間に、私もだいぶこの世界に染まっていたようで。
最初に思ったことは、なるほど、ショートスリーパーの私にはぴったりだな、でした。
あなたも身をもってご存知だと思いますが、密偵というのは秘密裏に動くでしょう?
怪しまれないように、昼は別の者として表の世界で動き、夜皆が寝静まった後に諸々の任務をこなす。
任務中は緊張状態を強いられますし、必然睡眠時間は減ります。
長期の任務を独りでこなすのは難しいものです。
しかし私は、短い睡眠時間で完全に回復することができます。
これ以上密偵向きの才能もないでしょう。
どんな長期の任務でも、独りで無理せずこなせるのですから。
それを理解してからはさらに頑張りました。
切り捨てられることのないように、少しでも良い待遇をもらえるように。
もう、栄養失調で死ぬのは勘弁ですから。
隣国に行ってクーデターを扇動したり、属国に行って反乱の芽を摘んだり。
もちろん敵国の情報を探りに行くのも。
様々な任務をこれまでこなしてきました。
睡眠時間を減らせる分、行った先で自由時間も作れて、その地の名物を食べたりもしました。
バレたらもっと任務を与えられちゃうので、内緒ですけどね。
それでも、任務を失敗したことはありません。
おかげさまで、私、かなり上層部からの覚えもいいんですよ。
最年少で幹部にならないかと声をかけられたぐらいです。
まあ、書類仕事とかもうやりたくないので、辞退したんですけど。
現場にいる方が魔法を色々試せて楽しいですしね。
代わりに食事を豪華にしてもらう事にしました。
魔法もたくさん使えて、美味しいご飯も食べれて、環境も私にとっては苦痛じゃない。
本当に、天職ですよ。
まあ、途中まで気付かなかったのは一生の恥ですが。
ん?なんですか?
ってちょっと、その呼び方はやめてください。
厨二病すぎて恥ずかしいんですよ。
ほんと、そういう二つ名って誰が言い出すんでしょうね。
なんか、噂に尾鰭背鰭つきすぎて、原型を留めてないですし。
ふふ、実物がこんな小娘だなんて、驚きましたか?
っと、もうこんな時間ですか。
ちょっと、おしゃべりしすぎましたね。
職業柄、何も考えずにおしゃべりすることってあんまりなくて、ついつい、長話をしてしまいました。
前世の話なんてすれば、頭がおかしい人だと思われますし、密偵の話がバレれば上の人に怒られますからね。
さて、ここで問題です。
ではなぜ、敵国の同業者さんであるあなたに、こんな話を長々としたでしょう?
あ、今更人違いとかそういうのは大丈夫ですよ。
すでに調べは十分に上がっていますので。
前世の言葉にこんなものがありました。
Dead men tell no tales.
ふふ、気分がいいので少しカッコつけてしまいました。
こちらの方がわかりやすいですかね。
死人に口無し。
そこまで帝国に忠誠心があるわけでもないのですが、これも任務なので。
今夜はたくさんお話を聞いてくださり、ありがとうございました。
ごゆっくりお眠りになってください。
それでは、さようなら。
この度は作品を呼んで頂きありがとうございます。
何かしら反応を貰えると、作者が喜び、やる気が出ます(*^^*)




