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送らない手紙  作者: 宵待 奏
13/19

第15章:小さな報告

翌日。

何も起きない。

起きないことが、逆に刺さる。


ユウは朝、スマホを見た。

見てしまった、じゃない。

“見る時間”を決めて、見た。


通知はない。

ないことに意味を乗せそうになる。

乗せたら、崩れる。


ユウは机の紙を一枚めくった。

《何も起きない日:やること》

・生活を回す

・送らない手紙

・予定を一個こなす

・誰にも確認しない


“確認しない”が、まだ太字で残っている。

太字は、まだ必要だ。


昼。

カイから「飯いこ」の連絡が来る。

雑談だけの誘い。

深掘りがない誘い。


ユウは短く返す。


「行く。集合だけ教えて」


四行以内。

安全。


外に出る。

歩く。

歩くと、頭の中の物語が遅くなる。

遅くなったところに、空白が見える。


空白は、怖い。

怖いから埋めたくなる。

埋める手段が、連絡になる。


ユウは噛みしめる。

埋めない。

空白のまま、生きる練習。


夕方。

スズから短い連絡が来た。

短い、という時点で助かる。


「ナギ、周囲の噂っぽい空気を警戒してる。

“名前を出されるのが一番しんどい”って。

だから引き続き匂わせゼロでお願い。」


ユウの胸が、また熱くなる。

熱くなるのは、怒りじゃない。

焦りだ。


――守りたい。

――ちゃんと守りたい。

――もっと徹底したい。

――何か仕組みを増やしたい。


“もっと”が出る。

でも、ここで動くと危ない。

動けば、対価を求めたくなる。


ユウはまず、返事を四行で固定する。

要求ゼロ。

確認ゼロ。


「ありがとう。

匂わせゼロ、継続する。

周囲にも話さない。

必要があればまた教えて。」


送って終わり。

終わりにする。


それから、送らない手紙。


送らない手紙 #36


“守りたい”が暴走すると、迫りになる。

徹底は、相手のためじゃなく俺の不安のためになりやすい。

だから増やすのは一個だけ。

「名前を出さない」をゼロで守る。


一個だけ。

増やしすぎると、管理が目的になる。

目的がズレる。


夜。

配信をする。

テーマはゲーム。

いつも通り。

淡々と。


コメントが流れる。


「最近、誰々来てないね」

「空気変わった?」

「例の人どうした?」


来る。

来るのは当然だ。

界隈は、空白を物語にする。


ユウは笑う。

でも線は越えない。


「その話はしない運用。ゲームの話しよ」


それだけ。

それ以上の“気の利いた”ことを言わない。

気の利いた言葉ほど、匂いが出る。


配信が終わる。

終わっても、追い足さない。

裏返す。

置く。


ユウは部屋の電気を少し落とした。

薄暗いくらいが、落ち着く。


そして、思う。


――これ、いつまで続くんだ。


期限が欲しくなる。

期限が欲しいと、結果が欲しくなる。

結果が欲しいと、また“中心”が外に寄る。


ユウは息を吐いた。

期限はない。

だから運用する。


その夜、ユウはノートのページ端に小さく書いた。


「噂は止められない。自分の口だけ止める。」

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