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黄昏の剣姫  作者: だい
3/6

辺境の村に生まれた少女③

 夜半、村の外れで異様な気配が走った。

 犬が吠え、家畜が暴れ、空が震える。

 リディアは眠りから飛び起き、剣を掴んだ。


 「……何、この魔力の揺らぎ……!」


 外に出ると、北の森が赤く光っている。

 嫌な臭い――焼けた鉄と血の匂い。


 ミラが駆け寄ってきた。

 「リディア! 魔物よ! 北から群れが来てる!」

 「みんなを避難させて!」

 「あなたは?」

 「私が時間を稼ぐ!」


 リディアは走り出した。

 風を切り、丘を越え、森の入口へ。


 闇の中、唸り声が響く。

 赤い目をした狼の群れが、村へ向かって突進してくる。


 「くっ……来るなら来い!」


 リディアは剣を構えた。

 最初の一体を斬り払う。血が飛ぶ。

 次の一体。さらにもう一体。

 だが、数が多すぎた。


 腕が痺れ、足がもつれる。

 ――ダメだ、まだ……倒れちゃ……。


 その瞬間、風が止まった。


 森の奥から、銀の光が差し込む。

 まるで夜空から落ちてきた星のように。

 光の中から、誰かが歩いてきた。


 「……誰?」


 リディアの声が震える。

 その人物はぼろぼろの外套を纏い、顔は影に隠れている。

 だが、その腕に刻まれた紋章が淡く輝いていた。


 「退け。――ここからは、俺がやる」


 低く響く声。

 次の瞬間、空気が震え、地面が爆ぜた。

 銀色の光が放たれ、狼たちが一斉に吹き飛ぶ。


 あまりの力に、リディアは息を呑んだ。

 「なに……この魔力……!」


 光が収まると、彼は膝をついていた。

 紋章が淡く脈動し、まるで心臓の鼓動のように光る。

 リディアは駆け寄り、支える。


 「大丈夫!?」

 「……君、無事で……よかった……」


 そう言って、彼は意識を失った。

 その顔を見た瞬間、リディアの心に不思議な感覚が走った。

 懐かしい。

 初めて会ったはずなのに、どこかで見たような――。


 「……誰なの、あなた……?」


 答えはない。

 風が吹き、灰色の髪が夜に揺れた。


 そのとき、リディアはまだ知らなかった。

 この出会いが、自分の運命を大きく変えることを――。

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